2011年02月11日

我が質問に一片の悔いなし!

喋りの仕事の中でも“インタビュー”は
特別なジャンルといえるかもしれません。

マンツーマンでも難しいのに、質問者が多数揃った記者会見で
適切な質問を場の流れに沿って投げかけることが
決して簡単ではないからです。
失敗と成功を繰り返しながら、数年前に僕が導き出した答えは一つ。

訊きたいことは
何があろうと絶対に訊く。

もちろん“それは本当に訊きたいことなのか?”と
自問自答してからでないと行動には移しません。
目の前の相手に、信念の有無は必ず見透かされます。
“これだけは絶対に訊きたい!”と強く願った時の質問は、
言葉に重みが増すはずなのです。

だからこそ僕は、一昨日、宮城野部屋で開かれた記者会見で
天下の大横綱・白鵬関に
「八百長をした力士を許せないですか?」と伺いました。
野球賭博騒動で解雇者を出すピンチに陥った時には
『自分たちの手で国技を潰す気なのか!』と憤っていた人物が
大阪場所の中止も決まり、大相撲史上最大の危機を迎えて
その原因を作った張本人たちへ抱く感情を探りたかったのです。

願わくば、横綱の
『許せません!』という言葉を引き出したい一心でした。

ところが、しばし沈黙してから口を開いた白鵬関は
『どこのテレビ局だ、それ?』と意外な反応を見せました。
字面からもご理解いただけるかと思いますが
やや苛立たった表情で、こちらを軽く睨みつける感じです。

“角界の聖人”との初対面は
予想だにしない厳しい状況の中で訪れました。
それでも僕が全く怯まなかったのは
誰が何と言おうと本当に訊きたいことを訊いている、という
自信があったからです。
目を逸らすことなく、即座に
「すみません。文化放送です」と応じました。
八百長が許されるはずはありません。横綱、いかがでしょうか?
・・・という想いを込めて。

すると、白鵬関は前を向き直り、畳敷きの会見場を後にしたのです。
僕の問いかけにはとうとう答えませんでした。
直後に相撲番記者の皆さんが生み出すざわめきが
「見ない顔だけど、誰?」「あんなことを訊くなんて」と
囁いているようにも聞こえましたが
横綱と顔見知りであろう方々の質問が途切れたタイミングで
まだ誰も尋ねていなかったことを僕は伺っただけです。
一片の悔いもありません。

「許せないですか?」ではなく
「どう思いますか?」という言葉を選んでいれば
おそらく白鵬関の態度を硬化させることはなかったでしょう。。
ただし、あの場面で、答える“間口”を広げることは
必ずしもベストの選択とは言えない気がしました。
自分の考えが正しいとは思いませんが
決して誤っているとも思えないのです。

久々に、インタビューの難しさを噛みしめましたが
一瞬とはいえ横綱とガップリ四つで組んだ経験は
これからの放送に生かせそうな気がします。
修羅場をくぐった者ほど
味わい深いトークを披露するはずですからね(〃▽〃)

投稿者 斉藤一美 : 2011年02月11日 23:59

 

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