2010年11月11日

後の先

予想外に白熱した日本シリーズも幕を閉じ
早いもので11月も半ばにさしかかってきました。
西武ドームも秋の装いです。

autumn@seibudome.JPG

新聞に目を通していると、大相撲九州場所も近づいてきたせいか
なかなか負けない横綱・白鵬にちなんで
不世出の力士・双葉山の生き様を紹介する記事が多く見られます。

その中にあったのが『後の先(ごのせん)』という言葉。

相撲では、行司の軍配が返った瞬間から
少しでも先に有利な態勢を作り上げたいものですが
立ち合いで、むしろ相手の動きを見てからぶつかりに行き
いつの間にか主導権を握ってしまうという戦い方です。
どんな奇襲にあっても決して慌てることはありません。
「さぁ、どこからでもいらっしゃい」と言わんばかりの双葉山の取り口に
当時のライバル達はさぞ戸惑ったことでしょう。

『後の先』とは“受け”のしなやかな強さを表現しているのです。

これって、野球実況の理想形ではないかと感じました。
目の前の対象が動かないとこちらも喋りだせないので
どうしても「投げた」「打った」が少しずつ遅れてしまいます。
それでも「アウト」「セーフ」「ファール」「ホームラン」の瞬間を
ほぼ同時に喋り切ってしまえば
スタンドから聴こえてくる歓声と
シンクロした実況が生み出されるのです。

大切なのは、最後には
選手とボールの動きにさりげなく追いついていること。
これこそが実況アナにとっての“勝利”といえます。
“黒星”のリスクが高い自分の仕事にあてはめてみると
白鵬の62連勝と双葉山の69連勝の凄味が伝わってきました。

このオフシーズンは、自分の時間がたっぷりと用意されています。
野球とは何か?実況を面白くするための手段は?
そして、来年でいよいよ30周年を迎える【ライオンズナイター】を
もっとたくさんの方々に聴いていただくためには
どういった企画を押し出して行くべきなのか?
そんなことを、ポケモンでもやりながらじっくり考えていくつもりです(^O^)/

投稿者 斉藤一美 : 2010年11月11日 21:25

 

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