2009年12月08日

仰げば尊し、握手の恩

解説・実況で何度もコンビを組ませていただいた
“現代に生きる侍ジャイアンツ”西本聖さんが
千葉ロッテマリーンズのピッチングコーチとして
来シーズン、7年ぶりにユニフォームを着ることになりました。

で、昨日は送別会。
西本さんは顔をほころばせて・・・

初めて会ったロッテの若いピッチャーと握手したら
あまりにもフニャッとした力しか感じなかったから
“手をしっかり握らないでどうする!″って叱ったんだ。
絶対、西本は怖い、と思われただろうなぁ(^^ゞ

・・・と話していました。
それは間違いないでしょうね、とこちらも否定せずに笑いながら
僕は、今なお脳裏に焼きついて離れない「握手」を思い出したのです。

西本さんが阪神タイガースのコーチだった2003年の梅雨時。
個人的には、スポーツの中継を担当するようになって
そこそこ自信もついてきた上に
開幕当初の緊張感がなくなりかけた頃でした。
前向きな気持ちはいつの間にか薄れてしまい
実況すればするほどミスが目立ち、プロの喋り手でありながら
自分でもどうすればいいのか、僕は全く分からなくなっていたのです。

そんなタイミングで、東京ドームの巨人戦の前に
レフトポール際で投手の練習を見つめていた、当時の西本コーチへ
ご挨拶をさせていただきました。
僕は、お元気そうですね、と右手を差し伸べると・・・

いや、実況している時の
一美ちゃんほど
元気じゃないなぁ(o^-')b

・・・と微笑み、その手を強く握り返して下さったのです。

ギュッと、限りなくギュッと。

その瞬間、大きな勘違いをしていたことに気づきました。
どれだけ野球中継で実績を積み上げてきたのか知りませんが
上手に喋ろう、上手に喋ろう・・・という気持ちが先んじて
ミスを恐れた挙句、結局ミスを重ねる悪循環に陥っていたのです。
疑心暗鬼で怖々と喋る姿の根っこに、ついにたどり着きました。

誰に訊いたって、僕の持ち味は
「元気」と「思い切りの良さ」だというのに、バカですよね。
自分本来の姿を、すっかり見失っていました。

それからというもの、本番前の弱気になりそうな時には
あの時の西本さんとの固い握手を思い出しながら・・・

元気を出して!
思い切り良く!

・・・と頭の中で呪文のように繰り返しています。

もしも西本さんとの握手が柔らかいものだったら
僕は、贈られたメッセージから気づくべきことに気づかないまま
単なる社交辞令として聞き流していたかもしれません。

だからこそ、新しいコーチ・西本聖に叱られながらも
ガッチリと右手を握り返してもらったマリーンズの若手にも
“新たな何か”が芽生えたはずなのです。
来季のロッテ投手陣は、おそらくこういう幸せを何度も味わうのでしょう。

我らが愛する西武から見れば手強い敵になりますが
西本さんだけは応援してしまいそうです。
そんなライオンズナイターになっても、何とぞご容赦下さい。
握手から得た恩は、僕にとっては一生ものなので<(_ _)>

投稿者 斉藤一美 : 2009年12月08日 18:31

 

(C) 2005, Nippon Cultural Broadcasting Inc. All right reserved.