2009年06月13日

猫パンチよ、さようなら

今日公開の映画【レスラー】を一足先に見せてもらいました。
主演は往年の人気俳優、ミッキー・ロークです。

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ここで“往年の”という余計な一言をつけることに異論を挟む方は
おそらく誰もいないですよね。

彼は、ご存知【ナインハーフ】で
セクシーな男を演じて一世を風靡しました。
しかしその後は残念ながら大ヒット作に恵まれません。
豊かな演技力を持て余しながら、彼が打って出たのは
『プロボクサー』への転身でしたが
17年前、世界の注目を集めた両国国技館のリングで
1RKO勝ちを収めた時に繰り出した拳は・・・

猫パンチ (σ・∀・)σ

・・・と笑われて、今なお私達の記憶に残っています。
それ以降のミッキー・ロークが
どこで何をしていたのか僕は全く知りませんでした。
何でも、結婚→DVで逮捕→釈放後、俳優に復帰という道を辿りましたが
スキャンダルを起こしたマイナスイメージと
ボクサー時代に受けたパンチと整形の影響で顔が崩れてしまっていて
端役に甘んじていたそうです。

そのようなドン底の状態から彼を引っ張り出したのが
映画【レスラー】を撮った、ダーレン・アロノフスキー監督でした。

本格的なボクシング映画は
この世にいくらでもあるのに
真剣なプロレス映画は
1本も作られていないじゃないか!

・・・と気づいて以来、長年温め続けていた企画を脚本化する段階で
主役はミッキー・ロークしかイメージしていなかった、とのこと。
確かに、作品を見れば監督の意図は一発で理解できます。
なぜなら、映画【レスラー】は
家族も金も名誉も手放してしまった
「元・人気プロレスラー」の物語だからです。

誰もがニコラス・ケイジの主演を薦めたのに
製作予算の大幅なカットを受け入れてまで
あくまでもミッキー・ロークの起用にこだわった
アロノフスキー監督の執念は、スクリーンの至る所に表れています。

この映画は、始まってからしばらくの間
ミッキー・ロークの「顔」が出てきません。
ず~っと、彼の背中を撮り続けているのです。
立ち上がって歩き出しても、手持ちのカメラが前に廻ることはなにので
ドキュメント映像を見ている気分になっていきます。
で、ようやく「顔」が見えたと思ったら
かつて漂っていた“甘ったるさ”の面影が消え去った
「程よく枯れた男臭さ」が前面に出ていました。
しかも、脱いだら凄いのなんの。さながらギリシャ彫刻のようでした。
長髪のブロンドヘアと日焼けした肌も含めて
WWEのベテランレスラーにしか見えません。

肝心のファイトシーンも素晴らしかったです。
“へなちょこ猫パンチ”のミッキー・ロークはもはやどこにもいません。
残念ながら、彼の動きに非の打ち所がないのです。
プロレスが持つ闇の部分も包み隠さず描いてます。
【レスラー】と名づけたのも納得です。

あと・・・相手役の女優、マリサ・トメイが絶品でして
恥ずかしながら、惚れてしまいました(*´д`*)
特に男性の方なら共感していただけるでしょう。

僕の言葉に嘘偽りがあるかどうかは、ぜひ劇場でご確認下さい!

投稿者 斉藤一美 : 2009年06月13日 00:32

 

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