2006年06月16日

ホームランボール、ゲットだぜ!

“一発レポーター”の仕事中に
愛する西武ライオンズのホームランボールをゲット!
しかも、打ったのはアレックス・カブレラ!

ジャ~ン。

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ついに僕たちの夢が叶いました。

土・日の【文化放送ホームランナイター】は
昔から巨人戦中心の放送です。
他局と同じカードなので「少しでも独自性を出そう」
当時のスタッフが生み出したのが“ホームランレポーター”。
運よくホームランボールをキャッチした方を探し出し
インタビューをしながら外野スタンドの熱気を伝える、という仕事です。
初代・寺島尚正アナが長く務めた後は
入社2年目のスポーツアナウンサーが1シーズンずつ任されてきました。

で、1991年に4代目・ホームランレポーターを僕が担当したのですが
ちょうどこの頃から、セ・リーグの本拠地は次々に
『スタンドでのレポートはファンをいたずらに煽ることにつながり
 トラブルの火種になりかねない』
と主張し始めました。
ならば、放送席に戻って喋るしかありません。

僕は外野スタンドに陣取り
打者のデータと自分の勘を頼りにレフトとライトを何度も往復して
ホームランボールを待ち構えたものでした。
なぜなら、ホームランが出る→ボールを探す→話を伺う→
放送席へダッシュ→マイクを握ってレポート・・という流れの中で
少しでも時間を短縮して、ファンの声を伝えたかったからです。

でも「そこまで無理してやることもない。ここらが潮時」
スタッフは判断し、この年でホームランレポーターは
無念のお蔵入りとなりました。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

9年後の2001年。
ライオンズに、規格外のパワーと集中力を兼ね備えた
ベネズエラ人選手が入団します。
ご存知、アレックス・カブレラです。
彼がとんでもないハイペースでホームランを量産するので
「外野スタンドから
カブレラの打席を実況してみたら面白いのでは?」

という話がまとまり、西武ドーム(当時)の全面バックアップの下
実現したのが《カブレラ・ホームラン実況》。
担当したのは、僕でした。

その日、彼が2本のアーチを架けただけでも有り難かったのに
僕が実況していた“センターの横”と“左中間”の
それぞれ目の前にぶち込んだのです!
もちろん偶然とはいえ
これですっかり盛り上がった【文化放送ライオンズナイター】のスタッフが
「西武ドーム限定で、ホームランレポーター復活だ!!
 喋り手も“派手な花火を打ち上げる感じでレポートする”
 っていうイメージで〔一発レポーター〕なんて呼び方はどうだ?」
と息巻いて、少々形は変えながらも
QR名物の封印は解かれた、というわけなのです。

当番制を敷いているため
各スポーツアナに“一発”の出番はやってきます。
僕はその度に15年前を思い出し、虎視眈々と狙っているのが

自分の手でホームランボールを獲る
ってヤツ。

ついに、その時がやってきたのです。

2006年6月14日。西武vs中日・3回裏・2死一塁。
投手・マルティネス。打者・カブレラ。
いつもは右中間スタンドでレポートを入れるところを
この時ばかりは左中間エリアにポジションを変えていました。
直前まで、ドラゴンズ・谷繁がレフトスタンドへ放った
ホームランボールの取材をしていたからです。

カキーン!
快音を残した打球は
ライナーでこちらに向かってグングン伸びてきます。

      あ、来る。

今考えると、不思議なほど冷静でした。
ボールはみるみるうちに大きくなり
信じ難いスピードでレフトスタンドに突き刺さったのです。

このブログでも何度か触れましたが
インボイスSEIBUドームの外野席はスロープ型なので
ホームランボールがその場に留まることは99%ありえません。
むしろ、ワンバウンドごとに上のスペースへ跳ね上がって来るのです。
僕の立ち位置はスタンド最後部。
しかも、打球の軌道の延長線上です。
      
      チャンス。

焦らず、一歩前に出ました。
ワンバウンド、ポーン。
ツーバウンド、ポーン。
それでも僕の左足のすぐ横を抜けていく球足の速さです。
直後にパスッという音が聞こえました。
ビニールシートの上にあったお客さんの荷物に当たったのです。

そこから先は、もう無我夢中っスよ!

駆け上がって来る中日ファンに左から回り込むように背を向け
緩やかな上り坂に這いつくばりました。
目の前には、カブレラのホームランボール!

      よし、獲れる!

そう思った瞬間、ボールに覆いかぶさる人影が見えました!
荷物の後ろに、ちっちゃな男の子があぐらをかいてペタンと座っていて
え、な~に?とばかりに身を乗り出してきたのです!
      
      坊や!
     申し訳ないけど
     君はこのボールがここにある意味が
     まるでわかってない!
     なら、いいだろ!?
      
     これは、俺たちの夢なんだぁーーーーーーーーっ!

言葉で整理するなら、そんな感情が脳裏をよぎったのです。
どちらの手でボールをさらったかも、まるで覚えてません。
確かなのは・・・・・・
20年余りの歴史がある
文化放送のホームランレポーター&一発レポーター全員の
“悲願”が達成された、ということです。

     さぁ、レポートしなくっちゃ!!!

すぐそばに、機材を担いでくれているスタッフがいますから
その場で喋ればよかったのですが
僕は気がつくと、200m以上離れた放送席へダッシュしていました。
ε=ε=(┌ ‐)┘ε=ε=(┌ ‐)┘ε=ε=(┌ ‐)┘
たぶん、一刻も早く、解説の大塚光二さんと実況の上野智広アナに
このホームランボールを触ってもらいたかったのかもしれません。
息を切らせてブースに駆け込み
上野アナのマイクを背後から奪うように喋ったような記憶があります。


『やった!
 ボール、獲った!
 カブレラの!僕が!
 ホームランボール!・・・』

“取り乱す”って、こういうことなんですね。

今日、ホームランを打った本人にサインをしてもらいました。

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このボールは、新社屋の〈社宝〉です。

スタッフに勧められ、僕もサインをさせていただきました。
価値が下がるのでは、とも思ったのですが
「文化放送の歴代レポーターを代表して」と割り切った次第です。
いつの日か、イベントで公開できたらいいなぁ。


投稿者 斉藤一美 : 2006年06月16日 23:58

 

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