2006年01月04日

猪木こそ、現人神

アントニオ猪木を見ると、100%泣けてきます。

今日の東京ドームでもそうでした。
大会場なので、出てくることは予想していましたが
“イノキ・ボンバイエ”のイントロが聞こえた瞬間
イスから立ち上がり「ウォーッ!!」と叫んでいたのです。

武士の礼服である裃なんか着ていたから、と考えたいのですが
リングの出入りにもたついていたのを目にすると
どうしても「猪木、年取ったな」と感じてしまいます。

それでも、猪木は猪木。
猪木さえ出ていれば、僕は何でもいい。

僕は、5才の頃からの“猪木信者”です。
父が見ていた10チャンネルの中継で
タイガー・ジェット・シンの腕を折ったのを目撃して以来
完全に魅せられてしまいました。
とにかく、猪木は負けないんです。
彼が、神様に見えました。
だから、猪木自身が挑発して組まれた試合とはいえ
国際プロレス軍団と
1対3のハンディキャップマッチで負けてしまった時は
この世の終わりかのようにテレビの前で泣きはらし
母をビックリさせてしまったものです。

でも、僕は少しずつ衰えていく猪木から
知らず知らずのうちに“負けの美学”を学んでいました。

ただ負けるだけではなく、説得力のある負け方をする。
むしろこちらの方が、プロレスラーの真価が問われる部分です。

師匠・力道山は、選手としてピークの時期に他界しました。
勝ち続けるエースの姿は肌感覚で判っていても
一時代を築いたレスラーが
後輩に踏み台にされていくシナリオは前例がないだけに
猪木は間違いなく頭を悩ませたはずです。
しかし、彼は鮮やかにホーガンにKOされ
長州にぶちのめされ、藤波の軍門に降ります。
その度に、泣けてきました。
だって、あまりに天才的な負けっぷりだったからです。

僕が涙もろいのは、きっと猪木のせいでしょう。

今夜の猪木は、刀を持参していました。
ところが鞘から抜いたら、傘が出て来たので怒る怒る。
ハハハ。自分で仕組んだクセに。
今や、面白いオジサンと化してしまいましたが
これこそ“素の猪木”なんでしょうね。

それでも、猪木は猪木。
猪木さえ出ていれば、僕は何でもいい。

30年以上たっても、猪木は僕の現人神です。


投稿者 斉藤一美 : 2006年01月04日 23:50

 

(C) 2005, Nippon Cultural Broadcasting Inc. All right reserved.