今夜のマリーンズ

« 史上最大の下剋上へ王手! | メイン | 2010年日本選手権シリーズ マリーンズ史上初3位から優勝 »

2010年11月07日

日本シリーズ最長試合!5時間43分の死闘は送りバント失敗合戦

10時40分をやや過ぎた頃だっただろうか、ナゴヤドームの電光掲示板に名古屋地区の終電案内が映し出された。

18時10分開始の試合はすでに4時間半を経過していた。

2-2 延長12回。

これまでのシリーズ最長記録は4時間49分。この試合が記録を塗り替えるのはほぼ間違いない。

歴史の証人として、この激闘の行く末を最後まで見届けたかった名古屋のファンも、後ろ髪をひかれながらスタンドの階段を登り駅を目指す。
携帯のワンセグに目をやりながらの人もいる。

この長い戦いは果たして、いつ終焉を迎えるのだろうか?いや、本当に決着がつくのだろうか?

マリーンズ3勝2敗で迎えた第6戦は、成瀬対チェンの先発で始まった。

予想に反し両者ともに初回に1点ずつ許す立ち上がりだったが、お互い2回からはピタリと立ち直る流石の投球。
成瀬は悔しさを滲ませながらも、6回を2失点で試合を作り、チェンも7回4安打1失点で自慢のブルペンに後を託した。

マリーンズ1点ビハインドの8回表、マウンドには外柔内剛のセットアッパー浅尾。
1死から好調清田が火の出るような右中間2塁打で出塁すると、ここで第5戦3安打でマリンの観客を盛り上げた4番サブローが、センター前に値千金の同点タイムリーを打ち返す。

浅尾で逆王手のシナリオを描いていたドラファンは落胆し、8,9回の攻撃も冴えを見せぬまま、試合は第4戦に続き、今シリーズ2度目の延長戦に突入していった。

最大の緊張は延長11回。
2イニング目に入った薮田が、突然の2四球を与え降板すると、なんと代わった古谷も四球。

2死ながら3四球で満塁。サヨナラの大ピンチを迎えてしまった。

こうなればベテランに頼る他ないと、西村監督は小野晋吾をコール。

しかし、なんとここで小野は、投球練習の初球をバックネットに直撃させた。

「ウオーー!!」ドラファンが驚き、異様な歓声を上げる大暴投。

二球目。

「ウオーー!!」
まるでリプレイを見るかのようにボールはまたもバックネットに。

3球目。
「ええーー!!??」
信じられない光景、まさかの2度目のリプレイ。またまたバックネットの同じ場所にボールを突き刺してしまった。
狙っているのなら逆に素晴らしいコントロールだ。

傍らで見守る西本コーチも、流石にたまらず小野に近寄り声をかける。

「うんうん」と落ち着いた様子で軽くうなづく小野晋吾。
しかし、気分を切り替え投じたはずの4球目は、里崎が右方向いっぱいに伸ばしたミットの先をかすめてやはり不吉な音を立てさせる。

・・・全くストライクが入らない。

こちらも「分かってますか?今2死満塁なんですよ」と言いたくなる。

ドラファンの期待は笑顔とともにどんどんと膨らんでいく。

果たして、再びプレイボールがかかれば、どんな光景が繰り広げられるのであろうか?

今の投球練習が本番だったら、押し出しどころか初球暴投でサヨナラ負け。ドラゴンズのホームで逆王手をかけられてしまう。

最後の5球目は里崎がキャッチできたものの、ストライクではなかった。


・・・・プレイボール。


打者はトップに戻り荒木。

赤いグラブにボールをセットした小野が投じた初球は、インコースにシュート。

ボール。

2球目、フォークで真ん中にストライク。甘い球だったが荒木の狙い球ではなかったようだ。

1-1

小野が3球目に投じた球は外角に吸い込まれていく。荒木は素直にバットを出すと、快音とともに痛烈な打球が右方向に飛び出した。

一瞬で、
ドラファンは「おーー!!」
マリンズファンは「あっ!!」

しかし、またその刹那の直後、

ドラファン「ああ~~」
マリンズファンは「おーー!!」

その打球はキムテギュンの守備固めで入った1塁手キムテギュンのミットに綺麗に収まりチェンジとなった。

身の毛はよだったが、なんとか修羅場を切り抜けた。

8回にマリンズが同点に追いついて以来、両軍スコアボードに「0」をならべ、試合は2対2のまま、規定により延長15回引き分け。ついに決着はつかなかった。

使用するスコアブックには12回までしか記録スペースはなく、中学生の時、記録しながらテレビ観戦した甲子園の「箕島」対「星稜」の延長18回以来、人生で2度目の「スコアブック2ページ目突入試合」となった。

その激闘のスコアブックを改めて見返すと浮かび上がってくるのは、両軍の送りバント失敗の数。

マリンズは初回の清田に始まり、10回の西岡、11回のサブローと3度の好機を無にし、対するドラゴンズは9回小池がバント2度打ち。10回の荒木、11回のバント代打岩崎とこちらも3度のサヨナラのチャンスにことごとくバントのミスが絡んだ。

これを単純に凡ミスと評する人もいると思うが、現場で見ていると、両軍ベンチの指示する、極端ともいえるバントシフトには凄まじいものがあった。

小フライを狙う執拗な内角攻めには気迫がこもり、今江、森野は転がせば完全に2塁でアウトにできる場所まで猛然と突っ込んでくる。

ならば基本通り1塁側にと思えば、キムテギュン、ブランコが巨体を浴びせにかかる。

下手にサインを切り替えて、打ちに行きダブルプレーになってしまうと、それこそ相手の思うツボ。
この試合どころかシリーズ全体の流れを相手に与えるプレーに直結するかもしれない。

それが分かっているから、またなおさらシフトが極端になる。

本当に大変だ。
つい、高校時代バントミスしてベンチで監督に小突かれたのを思い出してしまう。

ただ長いだけでなく、何か、いろんなことを思い出し、感じさせてくれる奥行きのある試合だった。

そういえば小学生のころはまだ日本シリーズはデーゲームだったので、学校が終わると、出場チームに関係なく3㎞強の道のりを猛ダッシュで帰り、7回くらいから必死に食い入って見ていた。
だから、延長戦になってくれると野球は一杯見れるし、興奮度も増すので嬉しくてたまらなかった。

「ついに照明に灯が入りました」 なんて言葉に瞳を輝かせたものだ。

試合終了時刻はもう少しで日付が変わる午後11時55分。

この日この試合を最後まで見た野球少年たちは、この熱き戦いを決して忘れることはないだろう。

2010年の日本シリーズは、本当に盛り上がってきた。
名古屋のファンは熱いが、負けずにすんだこの引き分けで、マリーンズの有利は変わらない。

史上最高の下剋上まで、あと一つ。

                          かわのをとや
                          

投稿者 文化放送スポーツ部 : 2010年11月07日 09:28

当WEBサイトの全てのコンテンツの著作権につきましては、文化放送に帰属します。
Copyrightc2007,Nippon Cultural Broadcasting Inc. All right reserved.
なお、当サイトに掲載しているコンテンツ(画像・テキスト)の再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。