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「ヒッグス粒子って何だ?」(1)
コーチャー/橋本省二(はしもとしょうじ)さん(高エネルギー加速器研究機構)
大村正樹&橋本省二

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ3月30日、明後日から新年度となります。入学式が始まってなくても、小学校6年生だったキッズは明後日から中学1年生だよ。1学年上がるからねっ。だから、今日はちょっとレベルの高い話に挑戦したいと思います。ヒッグス粒子、これ聞いたことあるよね。去年発見されて、とても話題になりました。よくお見えになる科学ジャーナリストの寺門和夫さんも「今年の注目はヒッグス粒子だよ」って今年の始めにおっしゃっていました。ヒッグス粒子、今日聞けば必ずわかります。お知らせの後。


大村正樹

今週のサイコーはちょっと長いですよ、高エネルギー加速器研究機構の橋本省二さんです。こんにちは。

こんにちは、よろしくお願いします。


大村正樹

よろしくお願いします。高エネルギー加速器研究機構というのは、どういう機構ですか?

いかめしい長い名前ですよねぇ。


大村正樹

長いですねぇ(笑)。

加速器という粒子を加速する機械、ビューンと速く飛ばす機械があって…。


大村正樹

自動車のアクセルとは違うんですね。

まぁ、そんなようなものです。


大村正樹

そうなんですか(笑)。

でも自動車ぐらいじゃない、もっと速く。


大村正樹

ちっちゃいものを加速させて、それで研究する。

ちっちゃいものをビューッと光の速さの近くまで加速して、ほかの何かにドカンとぶつける。


大村正樹

光の速さって、ものすごいスピードですよ。光の速さに加速することは人工的に可能なんですか?

光の速さはできないんですよ。


大村正樹

ええ。

ちょびっと遅いぐらい。


大村正樹

そんな近いところまでいけてる。ほぉ〜!

それを物にバシャンとぶつける。そうすると、こわれてバラバラになるでしょ。


大村正樹

はい。

で、どんなものが出てきたかを見て、「それが何だったのか?」というのを調べる。そういう研究所です。


大村正樹

みんなの目の前に何か物体がありますよ。僕らの目の前には今、ペットボトルのキャップがあります。これを光の速さぐらいのスピードまで上げて、どこかにぶつけることによって分解してそこに何が含まれているか、それを研究されているんですか?

そういう感じです。


大村正樹

橋本さんは講談社ブルーバックスから『質量はどのように生まれるのか』という本も出版されています。質量をともなった素粒子というと、去年話題のヒッグス粒子というものがとても大きなニュースになったんですよ。

なりましたね。


大村正樹

いろんな番組で解説していたんですが、いまいちよくわからない。だけれど、とても大きなニュースになって、今年の始めも科学ジャーナリストの方が「今年はヒッグス粒子が話題になる期間が絶対あるから勉強しといたほうがいいよ」とおっしゃっていたんですよ。

ぜひ勉強してください。面白いですよ。


大村正樹

やっぱり重要ですね。ヒッグス粒子、そもそも何ですか?

素粒子です。素粒子ってわかります?


大村正樹

ええと、素人や素朴の「素」。

素(もと)という字と粒子。素粒子というのは、何でもいいんです。ペットボトルのふたでもいいし、この辺の空気でもいいし何でもいいけれども、とにかく分解していく。小さいところまでずーっと分解していく。


大村正樹

はい。

何か小さい原子というものでできているとわかるんだけれど、「でも、もっと分解できるんじゃないか?」と思って、もっと分解してみる。そうするとできちゃう。


大村正樹

原子よりも、ちっちゃく分解できる?

加速器という機械を使って、ちっちゃく分解できるんです。そうすると、中に原子核というのがあることがわかって、でももっと分解できちゃう。原子核ももっとバラバラになっちゃう。


大村正樹

ええと、原子…。

その中に原子核がいるんです。原子核というのも、たたけばこわれる。


大村正樹

へぇ〜。

たたけばこわれたら、もっとこわしてみたくなるじゃないですか。


大村正樹

はい。

もっとこわしてみる。最後の最後までバラバラにしたもの、私たちが知っている最も小さい粒子、そういうのを素粒子というんです。


大村正樹

すごくわかりやすい。魚の骨まで食べるとか、そんなんじゃないですね。もっと細かいところまで、どれぐらいの世界ですか? 日立ハイテクの電子顕微鏡で見える世界ですか?

う〜んと、途中までは見えるけれど、原子核となってくると電子顕微鏡では追いつかない世界です。


大村正樹

電子顕微鏡で見えないのが原子核。さらにもっとちっちゃいのが素粒子ということは、素粒子は何で見えるんですか?

それが加速器です。


大村正樹

加速器で物体として見えるんですか?

電子顕微鏡は、加速器みたいなものなんですよ。比較的規模の小さい加速器。


大村正樹

はい。

もっと大きいものをつくる。そうするともっとエネルギーが出てきて、もっと小さい物が見えるようになる。


大村正樹

イメージ的には拡大、拡大という形ですね。

だから、基本は電子顕微鏡と同じです。


大村正樹

僕ら一番ちっちゃいのは、物差しで1ミリですよね。1ミリって目で見えるちっちゃい単位ですが、素粒子はどれぐらいの大きさですか?

0.のあとにゼロゼロゼロゼロとつなげて18個かな、メートル。そんな感じ。


大村正樹

1ミリのゼロを。

0.000…とずーっと18個つけてメートル。


大村正樹

考えられない(笑)。すごいですねぇ。

すごいかどうかわからないけれど、そんな感じ(笑)。


大村正樹

うわぁ!人間の研究能力は、世の中の物をつくっている素粒子の大元までたどり着いているわけですよね。

ほぼ、ね。


大村正樹

素粒子は何種類あるんですか?

今のところ知られているものが、数え方によるんですが16〜17個ぐらいになります。世の中には元素とかいっぱいあるでしょ。


大村正樹

はい。

水素とか酸素とか窒素とか百何十個もいっぱいありますが、ずっと大元をたどっていくと十数個にまで絞られてくる。それが適当なやり方でゴチャゴチャとくっついたものがいろんな元素だったりするんです。


大村正樹

それで鉄になったり、水になったり、人間になったり、動物になったりということですか?

水そうです。


大村正樹

元々は、世の中をつかさどる素粒子は16〜17種類しかない。そこから多岐に様々な組み合わせによって人が生まれたり、サルが生まれたり…。

そうそう、そうなんです。


大村正樹

ひゃあ〜!

それだけの素粒子があって、こういう理論を使えば理解できるというところまで人類はある種到達しているわけですが、その中で見つかっていなかった最後の1個、それがヒッグス粒子。


大村正樹

あっ、未知の粒子だったのがヒッグス粒子。

絶対にあるだろうと思っていたんだけれど、実験で今までどうしてもつかまえることができなかった。その最後の1個がやっと見つかったというんで大騒ぎになっていた。


大村正樹

指名手配犯みたいなものですね。

まぁね。


大村正樹

絶対どこかに潜伏してるだろうけれど、まだ警察の手が追いつかず最後、時効ぎりぎりでつかまるとか。

そんな感じですね。そうしたらビックリしますよね。


大村正樹

ビックリしました! それがヒッグス粒子。

そうそう。


大村正樹

ちなみに発見されたのが去年ですか?

去年です。


大村正樹

それを何年も前から追い続けた“刑事さん”がいたわけですよね。

そうです。


大村正樹

何年ぐらい前から「それはあるだろう」といわれてたんですか?

「あるだろう」といわれたのが、もう30年とか40年とか前ですよ。


大村正樹

相当前から追いかけていて、やっと21世紀の去年つき止められた!

ええ。


大村正樹

もうこんな時間ですか。橋本さん、この話めちゃくちゃ面白いです。また来週お話をうかがっていいですか?

はい、ぜひ!


大村正樹

今週のサイコーは、高エネルギー加速器研究機構の橋本省二さんでした。また来週よろしくお願いします。ありがとうございました。

よろしくお願いします。


大村正樹

冒頭で「今日聞けば必ずわかる」といったけれど、やっぱり無理だ。まだまだ聞かなくちゃいけないですね。橋本さんは「ヒッグス粒子は質量をともなっているのが特徴です」と言い残していたので質量、これ何なんだろうね。ほかの素粒子と違うのは質量ということなんですね。来週、絶対聴いてください。それによってヒッグス粒子への疑問がすべてこれわかってきます。それでは、春休み真っ只中かな。明後日から1学年上がるよ。進級おめでとう!バイバ〜イ!