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「日常生活の科学」(1)
コーチャー/花形康正(はながたやすまさ)さん(サイエンスジャーナリスト)
大村正樹&花形康正

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、ラジオを聴いてるキッズは、ラジオからの僕の声を聴いてくれてるわけでしょ。「何でラジオから声が聴こえるの?」とちょっと疑問に思ったことない?だって、僕は全然違うところにいるのよ。シークレットラボにいるのだけれど、なぜかリアルタイムで声が聴こえている。不思議じゃないかなぁ。今週のサイコーは、日常生活の科学に関しては何でも知っている−そんな方が来ているのでお知らせの後、素朴な疑問を聞いてみたいと思います。


大村正樹

今週のサイコーは、大学出版会を運営するかたわらサイエンスジャーナリストとして活動されてらっしゃいます花形康正(はながたやすまさ)さんです。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

花形さんは現在、サイエンス・アイ新書から『暮らしの中の面白科学』という本を出されてます。確かに僕らの暮らしの中には、たくさん科学があるわけですよね。

そうですね、はい。


大村正樹

じゃあ例えば日常的に今、僕らはラジオでおしゃべりさせてもらっていますが、ラジオの科学−これは関東地方を中心に聴こえているんですよ。

はい。


大村正樹

だけれど、電波は県境があるわけじゃないですよね。

そうですね。


大村正樹

この原理も含めて、何でラジオがみなさんの元に届くんですか?

ラジオの原理を申しあげる前に、やっぱり「電波とは何か?」をご理解いただかないとちょっと厳しいので。まず、電波とは何か?


大村正樹

はい。

電波の正体は電磁界震動。といっても何のことかは…。


大村正樹

電磁界震動?

はい。


大村正樹

震動ですね。

震動です。これは互いに直行した磁界と電界が一定の速度で伝わっていくという現象ですが、わかりやすいイメージとしては電界と磁界がチェーン、鎖状になって飛んでいくというふうに理解いただきたいです。


大村正樹

難しいですねぇ。

ハハハハ。まぁ、そうですねぇ。ここでは、要するに電界と磁界がつながって磁界が発生して電界が発生する。電界が発生して磁界が発生する。まぁ、電気と磁石がつらなって飛んでいってるというようなイメージだけを持っていただければと思います。


大村正樹

携帯電話も電波ですよね。

そうです。


大村正樹

ラジオもそうですけれど、電波は電気を通すことで、そこに声ものっかってくるのがとても不思議だと思ってるんですよね。

そうですね。電波はいわゆる波ですから、波には周波数あるいは振幅という山の高さ、あとは波長という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、波の一往復する長さですね。


大村正樹

はい。

電波というのは1秒間にどのぐらい震動するか、いわゆる波が一往復するか、これをヘルスという単位であらわします。いろんな周波数がありまして、その中のいくつかがラジオ局に割り当てられています。


大村正樹

ええ。

この電波−私がこうやってお話してマイクでひろわれていますが、これを電気信号にかえて、その電気信号を電波の上にのせて飛ばしてるんです。どうやってのせるかは変調という作業ですが、今ここはAM放送ですよね。


大村正樹

はい。

AM放送は振幅変調といいまして、波の高さでかえてるんです。ちなみにFM放送の場合はこの周波数、波の震動の数ですね、これを音の信号としてのせている。


大村正樹

高さと数で違うんですか、FMとAMの送信方式が?

違います。


大村正樹

ほぉ〜。

AMの場合ですと、ちょっと残念ながら1チャンネルに与えられている周波数帯域が、FMのほうがAMの2倍あるんですね。


大村正樹

はい。

そうしますとやっぱり幅がありますから有効に使えますので、FMのほうが音質がいいということになってしまうのです。


大村正樹

へぇ〜。距離はどっちが飛ぶのですか?

電波はいわゆる電磁界エネルギーというものを持っていますので、光と同じ速度で飛んでいきます。


大村正樹

はい。

ですから、音のように途中で消えていっちゃうことは考えにくい。光と同じ1秒間30万キロ地球7周半といわれていますが、それぐらいの速度で飛んでいきますので宇宙空間も自由に飛んで来れる。


大村正樹

へぇ〜。わかったような、わからないような…。

ハッハハハ。そうですねぇ。


大村正樹

僕は北海道から東京に来てこの仕事をしているのですが今、寒いんですよ。ですから、すごく恥ずかしい話ですが背中にカイロを貼って飛行機に乗るわけです(笑)。

はい。


大村正樹

そしたら金属探知機が鳴るんですよ。

そうでしょうね。


大村正樹

それで輪っかみたいなのを当てられて、「カイロ貼っていますね」といわれ、恥ずかしいわけですよ。だってカイロですよ。あれ金属ではないじゃないですか!

いえいえ、あれは金属です。


大村正樹

そうなんですか!?

金属そのものです。


大村正樹

砂ですよ、あれは。

カイロに入ってるのは鉄粉で、細かい鉄の粉が入っています。


大村正樹

だから鳴るんですか!?

もうそのまま反応すると思います。


大村正樹

最悪です。鉄粉が入っているんですか!

そうです。鉄粉だけではなくて、あとバーミキュライトという細かい穴がいっぱいあいた鉱物、それと木の粉が入っています。


大村正樹

鉄とバーミキュライトと木の粉?

はい、そうです。


大村正樹

何であれが発熱するのか、まったくわからないんですけれど。

カイロの発熱は、先ほどの鉄粉が空気と水と反応して水酸化鉄ができる。この化学反応の時に発熱が起こるんですね。それを急速に反応させているというのが、カイロの基本的原理です。


大村正樹

それは鉄粉を何に触れさせると発熱するんですか?

酸素です。


大村正樹

酸素。だから、封を切った瞬間、発熱するということですか?

はい。


大村正樹

あれ、体にくっつけたら発熱するんじゃないんですね(笑)。

違います(笑)。


大村正樹

封を切った瞬間、酸素と調和して熱を発する。

そうですね。


大村正樹

ほぉ〜。何で木のくずが必要なんですか?

これは工夫のひとつで、鉄粉が錆びる時に熱を出すんですが、その時に酸素の供給量が問題になるのと、水ですね。食塩水ですが、バーミキュライトと木粉に食塩水が含まれています。


大村正樹

はい。

この食塩水はサビを促進する効果です。中身の前に、カイロの封をご覧になったことがあるかと思いますが、商品ごとによって、例えば35度で8時間とか30度で12時間とか、持続時間がある程度決まっているんですね。


大村正樹

はい。

長さと温度が決まっていて、これを制御しているのがひとつは包装材の穴の数と大きさと位置です。ビニールから取り出すと発熱しますが、ふかふかの当てるカイロ自体の包装材は、不織布(ふしょくふ)という布とポリエチレンフィルムで重ね合わせてつくられているんですね。


大村正樹

ええ。

ここに穴をどれだけあけるかによって酸素がどれだけ通るか。つまりサビがどれぐらい制御できるか、穴の数と位置、大きさの工夫がなされています。


大村正樹

カイロの鉄粉を急速に錆びさせることによって熱が生まれるんですか?

はい。急速にといいますか、それを制御しているんですね、穴の数で。酸素がどれぐらい通るかによって、どれぐらいのサビを起こさせるか。


大村正樹

じゃあ、開封したてのカイロの鉄粉は錆びてなくて?

錆びてないです。


大村正樹

いやぁ、そうなんですか!

使い終わった後でしたら安全ですので、ちょっと環境の問題もありますけれど一度開いてご覧になると、錆びていることがわかると思います。


大村正樹

色もやっぱり赤茶けてくるんですね。

そうですね。


大村正樹

いや、一刻も早くやりたい。

ただ気をつけていただきたいのは使ってないカイロを破りますと、ものすごく急速にサビが起こりますので、ものすごく高温になります。


大村正樹

高温になる。

ですから、それは絶対に止めていただきたいです。


大村正樹

「未使用のものは開けちゃダメよ!」ということですね。

そうですね。


大村正樹

もう1回目、時間が過ぎちゃった。僕も生きてる中でいろんな疑問があるので、また来週もうかがってよろしいですか?

はい。こちらこそよろしくお願いします。


大村正樹

今週のサイコーは、花形康正さんでした。いい名前ですねぇ。


大村正樹

先週、絶対零度マイナス273℃という身も凍るような話を聞いたら、今度は鉄が錆びる時に熱を発するって。これ、すごいですよねぇ。衝撃でしたね。身が朽ち果てるまで発熱するという、鉄のけな気さを感じましたね。でも、「くれぐれも使用する前のカイロは開けないでね」ということでした。ものすごく熱くなるそうです。すでに発熱し終えた、錆びきったカイロなら開けてもいいそうですけど、「目に入らないように気をつけてください」ということでした。それでは、暦の上ではもうすぐ春。でも、まだまだだねっ。来週も5時半に会いましょう。バイバ〜イ!