キッズのみんな、明けましておめでとうございます。サイエンステラーの大村正樹です。今年も毎週土曜日この時間に、東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りする「大村正樹のサイエンスキッズ」。どうぞよろしくお願いします。いやぁ、7年目のお正月を迎えましたねぇ。もう1月5日になるとある程度お年玉も集まって、買いたいものも買って、お正月気分も一段落して、あとは宿題をやってる頃?風邪なんか引かないでね。月曜日から学校ですね。がんばって行ってください。さぁ、2013年です。ヘビ年。1回目のサイエンスキッズは、今年期待される科学についてお伝えします。お知らせの後、サイコーが登場します。
今年はじめてのサイコーは、おなじみ科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。おめでとうございます。
おめでとうございます。
番組が始まって7回目のお正月ですよ。
ずいぶん経ちますねぇ。
おかげさまで! またよろしくお願いします。
はい。
寺門さんには毎年、年始に今年期待される科学についてうかがっています。さぁ、2013年の今年期待の科学、まず何でしょう?
そうですね。いろいろあると思うのですが、まずやはり子どもさんたちに勇気を与えてくれることでいうと、宇宙飛行士の若田光一さんがまた宇宙に行くんですね。
ほぉ〜。4年前ですね長期滞在、2009年。
また今度は第2回目の長期滞在をするということで、宇宙で約6ヵ月過ごすことになりますね。
半年ですか。
そうですね。たぶん今年の後半、年末近くになると思います。今度の若田さんの長期滞在で一番のポイントは、コマンダーといって国際宇宙ステーションの船長さんの役割を若田さんがするんです。
へぇ〜。ISS?
そうです。
けっこう広いのがあって、そこに「きぼう」という日本の実験棟がありますけれど。
アメリカのモジュールもあるし、ロシアもあるしヨーロッパもありますね。
そこの船長!
そうです。そこに6人、必ず宇宙飛行士が滞在するようになっています。6人のチームで動かしているわけですが、そのリーダーとして船長さんの役割をするということです。
日本人がこの大役をおおせつかるのは?
初めてです。
はぁ〜!
今まではほとんどアメリカとロシアの宇宙飛行士が交替でコマンダーをつとめていました。1回だけヨーロッパの宇宙飛行士がコマンダーをつとめたことがありますが、日本人ではもちろんこれが最初ですね。
へぇ〜。じゃあ、今までみたいに水を飛ばしたりボールを投げたり、服を着て宇宙遊泳をしているような映像とか、ああいうサービスはちょっと減っちゃうかもしれませんね。
教育的なことは国際宇宙ステーションの役割の中で非常に大きいので。この前もおもしろ宇宙実験とかいろいろやってくれましたよね。
はい。
たぶんまた今度もやってくれると思います。
そうですか。しかし若田さんはこれで宇宙へは今年で何回目になるんですか?
今度で5回目ですね。
日本人では相当ですよねぇ。
はい。
すごく変な話ですが去年の秋というか冬、2ヵ月ぐらい前に星出さんがやっぱり長期滞在をしてソユーズで戻ってきたじゃないですか。あの映像を見たんですが、何となくスペースシャトルが終わってから宇宙へ行く日本人のニュースの分量が減った気がするんですよ。
そうですね、はい。
ちょっと残念だなぁ。
残念なのですが実はそれについていいますと、行く前に星出さんがいっていたのですが、「私はこれから宇宙へ行って仕事するけれども、目指すのは何かといったらニュースにならないような仕事をすることなんです」というんです。
はぁ。
つまりそれはどういうことかと言うと、日本人宇宙飛行士が宇宙で仕事するのは、もうある意味では日常的な仕事の一環になっているわけです、日本の宇宙活動としては。だから、毎日毎日の仕事はいっぱいあるのだけれど、特別な日本初などがあるわけではないと彼は考えているんです。
ええ。
要するに「自分が理想とするのは自分の仕事をたんたんとこなして、あまり話題にならないけれど大事な仕事をやっていくことですよ。もうここまで来ると、日本の有人宇宙活動もそんなに新しいことがたくさんあるわけではないんです」と強調しているわけです。
そうか。もう地球人の宇宙出張というのは、世界的な日常の中に組み込まれるぐらいになったということですね。
そうですね。そうはいいながら、星出さんも船外活動をしてがんばってくれました。ずいぶんニュースになりましたね。
はい。
ですから、たぶん若田さんもそうは言いながら宇宙ではいろいろありますから、またわれわれはいろいろなことを知ることができると思います。
そうですか、なるほど。2009年というと、有人宇宙システムの“花伝説”で桜の種を持ち帰ったという若田さんの話がありました。宇宙に行った桜の種があちこちで開花したという話を聞いて、すごくいい取り組みだと応援してるんですけれど、何か今年もやってくれるんですかねぇ。
いろいろ考えてると思いますよ。
そうですか。何か僕も託そうかなぁ、若田さんにお願いして。
今の内だったら間に合うかもしれません。
フフフフフ、ほんとに。今年期待される科学、ほかにはどうでしょうか?
そうですね。いろいろありますけれど去年、物理学の世界ですごい話題になったヒッグス粒子というのがありますね。
ヒッグス粒子。
1回お話しましたかね?
してないです。
そうですか。
というか、この話は僕もサイエンスキッズを長い間やらせていただいてるのですが、ヒッグス粒子といいづらいのとよくわからないので、あえて逃げてました。教えてください!
はい。ヒッグス粒子という難しい話は別として、今まで見つかっていなかった粒子なんですね。
はい。
20世紀の物理学がものすごい進歩して、「宇宙の仕組みはこうなっています」、「こういうものでできていて、こういう力が働いています」ということを調べてきたわけです。
ええ。
今ほぼ正しいと思っている理論でいうと、実はヒッグス粒子だけが見つかっていないんですね。
はい。
それを去年セルンというヨーロッパの研究所ですが、ここで最終的に発見したという報告があったわけです。
はい。
これがもしも正しいとなると、今まで物理学がつくってきた理論が正しいことになりますね。
そのヒッグス粒子というのはどこに存在していて、どれぐらいちっちゃいものですか?
いわゆる素粒子というものなので、目には全然見えない。
はい。
それからあっという間に消滅してしまうので、なかなか検出が難しい。
はい。
基本的には、宇宙に普遍的に存在しているものと考えられています。
ヒッグス粒子が?
そうです。というのは、ヒッグス粒子はどういう役割をしているかというと、物に重さを与える粒子です。物に重さが与えられるのはどういうことかというと、ある粒子が元々重さはないのだけれど、ヒッグス粒子と反応すると重さを持つという考え方です。例えば、プールの中を歩くと水の抵抗でちょっと歩きづらいですよね。
はい。
抵抗を受けますね。
はい。
あれと同じようにこの宇宙はある面から見ると、ヒッグス粒子の海だと考えられる。つまり至るところにヒッグス粒子があって、そこで物が動くとその時に重さが生じるというふうに考えられているわけです。
うん。
そういうふうにして、実はヒッグス粒子が物に重さを与えているんですね。ですからわれわれの日常生活、色んな物を持ったりして重さを感じますが、こういったものの一番下のところでつくり出しているのがこのヒッグス粒子という。極めて大事な粒子というふうに今の物理学では考えられています。
今、ラボの中でお話をしています。この中にもヒッグス粒子はあらわれて、消えてはいるんですか?
そうです、そうです。
ちょっとお母さんが体重計にのって「あれ、増えてる。ヒッグス粒子のせいだ」という言い訳も成り立つ?
もちろん、そういうことですよ。
そうなんですか!それをいわれてもナンセンスだけれど、やがてはヒッグス粒子がある程度認知されてくると質量、重さみたいなものに関わってくる。
そうです。
へぇ〜。
実は今年は、去年発見されたものが果たして正しかったかどうかという最終的な報告がおそらく出ることになります。
はい。
これでヒッグス粒子が見つかって、今までの物理学の理論は正しかったことになりますと、ここから次の物理学が始まるわけです。
ふ〜ん。
次にまだわかっていないこと、調べるものがいっぱいあります。
このヒッグスという語源は何ですか?
ヒッグスという人が考え出した粒子です。
いやぁ、あっという間でした。今年もあっという間に1年が過ぎるんでしょうね。
そうですね。
寺門さん、また今年もよろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
今日のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。
寺門さんがヒッグス粒子のことを一生懸命解説してくださったけれど、よくわからないんですよ。世の中には当たり前のことだけれど、それを理論づけてとか、説明できないことがいっぱいあるんだよね。そういうところに科学のヒントとかいろいろあると思うんだなぁ。だから、みんなにもそのチャンスはあるんじゃないかと思った2013年の最初の放送でした。ぜひ!じゃあ、また来週。バイバイ!