キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、学校が始まったと思ったら三連休だよね、これまた。やっぱりちょっとハッピーな感じがしますねぇ。フッとお正月ボケしているところで、がんばって学校へ行ったら三連休。これ、徐々に体を慣らしていくという意味では、とても大事だと思いますよ。今週も今年2013年、期待される科学についてお送りします。科学は日々進歩を遂げていて、とってもワクワクするお話が聞けそうです。お知らせの後。
今週のサイコーも科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんばんは。
こんばんは、よろしくお願いします。
さぁ、今年期待される科学について、また今週もうかがっていきたいと思います。何ですかねぇ?
そうですねぇ。今日はiPS細胞の話をまずしたいと思います。
おっ!年末、すごく詳しい方がおみえになって、メチャメチャ興味がわいたんですよ。
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そうですよね。
だけど思い起こしてみると寺門さん、iPS細胞って2007年の発見の時にいの一番にその説明に来られたんですよね。
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そうでしたか。
6年前。寺門さん、あの時、万能細胞とおっしゃって。
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はいはい。
あれからノーベル賞をとるに至って、やっぱり今年は注目ですか?
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そうですね。基本的に山中先生がiPS細胞というものをつくることに成功しました。ノーベル賞はもう一人のイギリスの研究者も一緒にもらったんですが、それは要するに細胞を初期化する研究をしたということなんですね。
ええ。
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細胞の初期化というのは、われわれの皮膚や心臓の細胞はもうでき上がっていて他のものにはなれないんですが、一番最初は何にでもなれる細胞だったんです。
はい。
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そうすると、皮膚の細胞でもある方法をとると何にでもなれる細胞に変身してしまうというのがiPS細胞ですね。これを実は立証したということでノーベル賞をもらったわけですけれど。
はい。
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今まではどちらかというと研究のプロセスだったわけですけれど、こういったものがもし医療に使えるようになると非常に大きな可能性がある。ということで、これまでも注目されていたわけです。
はい。
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ただ実際の医療の現場で使うとなると、またいくつも段階が必要なわけです。
ええ。
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まず最初は動物実験をしたりして、その次の段階では臨床試験といってある患者さん、ごく少数の患者さんにテストをするところから始めて、効果や安全性を確認しながらだんだん実用に近づけていくということになるわけです。今年はiPS細胞−もちろんこれからも基礎研究はいっぱい進むと思いますけれど、同時にそろそろ医療の現場で役立てるための試験をしていこうという形になっていくんじゃないかと考えられるんです。
これはすごく大きなニュースになって、僕なんかまだ健康だからいいですよ。だけどこのニュースを聞いていろいろな病の方々は、「一刻も早く自分にやってよ」という方が多いと思いますよ。
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そうですね。
それが何年かかかるというのが、時間がないと思う人からするとたまらないと思うんですよね。
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そうですね。
やっぱり臨床実験を経て、いよいよ実用にいたるまでというのはどうなんですかねぇ。近い将来?
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これはまぁ何ともいえないところで、いろいろな約束事とか法律的なことがあります。それから、それぞれ実際に臨床試験をするためには各大学や病院で倫理委員会を開いて、そこで絶対に問題がないことが確認されてから初めて行われるものなので、いくつものプロセスが必要なんですね。
ええ。
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それはやっぱり人間の命にかかわることなので急がなければというのがあるんですけど、一方で万が一のことがあってはいけない。安全性を確認しながらやっていくということですね。
はい。
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ただ最近はこういった臨床試験までの時間は、以前に比べると短くなってるんじゃないかと思います。
そうですか。
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これはiPS細胞に限らず、例えば新薬の開発などもそうですね。
はい。
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これまで臨床試験から政府で認可されるまでずいぶん、下手すると10年からそれ以上かかっていたことがだんだん短くなってきています。やっぱり世の中変わってきたのでスピードアップを、安全性を確認しながらやっていくという意味では、今年は何らかの動きがあるんじゃないかと考えられますね。
なるほど。寺門さんの着眼点としては、どういう病気が一番iPS細胞と適していると思いますか?
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いろいろな方法があると思いますし、それからいろいろな症状に合わせることができると思います。実際にどんなことをやるかというと、ひとつの方法は今実際に考えられていることですが、目の網膜の細胞を治療に使うことを考えているんです。この場合にはその人から取った細胞からiPS細胞をつくって、そしてそれを実験室の中で成長させて網膜の細胞にして患者さんの悪くなった網膜のところに移植するという方法ですね。
わかりました。いやぁ、やっぱりiPS細胞は注目ですね。
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そうですね。非常に大きな可能性を秘めていると思いますね。
他にはありますか?
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もうひとつ、これは期待することというよりは子どもたちにも考えてほしいことで、やはりエネルギー問題ですね。
う〜ん。
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福島の原発事故以来、いろんな議論がわき上がってます。やっぱりそろそろ長期的に「日本のエネルギーをどうするんだ?」ということからもう一回考え直す時期じゃないかと思われるんです。
はい。
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この間のいきさつをずっと見ていますと、やはり原発事故が起こったことで多くの人が「やっぱり原発はいらない」という意見になっていますね。
はい。
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それから、それに代わるものは太陽光発電とか風力発電、いわゆる再生可能エネルギーといわれているものですね。これに移行しようといってるわけです。
はい。
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これは基本的に考え方としてはいいと思うのですが、そうはいっても実はすぐには移行できないという現実があるわけです。
ええ。
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ということでいうと、やっぱりエネルギーの問題は今すぐ白か黒ではなくて、長期的にどういうふうになっていくかを考えた上で、そしてエネルギーのベストミックスといいますが、つまり発電をする発電源の組み合わせを考えていくことです。
はい。
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今、発電する場合の方法は化石燃料を燃やす火力発電、それから水力発電がありますね。それから原子力発電。日本の場合だと、だいたいこれがほとんどです。
はい。
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再生可能エネルギーは、まだ2パーセントとかそれぐらいしかないわけです。
再生可能エネルギーってよくいわれてましたけれど、具体的に何のことをいうんですか?
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再生可能エネルギーは基本的には、例えば化石燃料ですと燃やしてしまうとおしまいですよね。
はい。
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ただし太陽とか風は、常に自然に存在しているものです。
はい。
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だからいくら使ってもなくなることはない。
太陽光発電や風力発電のことを指すんですね。
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ええ。今は原理的にはそういったものですが、もうちょっと広くいうと、そういった自然のそのままのエネルギー。例えば、太陽光発電のほかに太陽熱発電もありますね。
はぁ。
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大きな鏡で太陽の光を一箇所に集めて、そこでお湯を沸かしてその蒸気で発電するとか、そういったものもあります。
へぇ〜。
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それから海でいうと、潮の流れもありますね。海流の流れを使った海流発電だとか、潮の満ち干を使った潮汐発電とかいくつかありますが、それはすべて自然が動いている中で出てくるエネルギーで特別掘ったりしなくてもいいわけです。
はい。
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そういったものを使うことが、再生可能エネルギーと考えられます。
いろんな形で実はエネルギー源は、いわゆるシェールオイル−岩のすき間から油をとるという…。
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ですからどんどん技術も開発されるし状況も変わってくるので、やっぱり今、白か黒ではなくてこれから10年20年30年日本のエネルギー、さっきベストミックスといいましたが、どんなふうに使っていくか…。それからもちろん大事なのは、どのくらい電力が必要になるかということもあります。
はい。
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これからどれぐらいで成長していくかというのもあるし、そういったこともトータルに考えて、日本のエネルギー問題を考えていかないと結局何の役にも立たないし、その時になって「実はこうだった」ということになりかねないということですね。
いやぁ、そうですか。勉強になりました。あっという間ですね、すみません。2週にわたって今年期待される科学の話、寺門さんが四つのテーマを出してくれました。どれもとても興味深いですね。ちょっと動向を見守りたいと思います。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。どうもありがとうございました。
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どうも失礼しました。
本当に当たり前の生活で普通に電気が通ってるけれど、このエネルギーに関してはもうラジオの前の君たちが将来をになっていくんですよ。それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。みんなも楽しい連休を過ごしてください。バイバ〜イ!