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「宇宙エレベーター」(1)
コーチャー/大野修一さん(日本宇宙エレベーター協会 会長)
大村正樹&大野修一
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。今日は番組史上、最も突拍子もないお話。宇宙へはロケットとかスペースシャトルに乗って行くけど、それを、エレベーターに乗って行っちゃおうと真剣に考えてるおじさんがいるってお話。本当にそんなことできるの?でも、できたら乗りたいでしょ。現実問題も含めて、じっくり聞いちゃいます。今週のサイエンスコーチャー(サイコー)は、日本宇宙エレベーター協会 会長の大野修一さんです。こんばんは。
こんばんは。
大村正樹
日本宇宙エレベーター協会っていう協会があって、大野さんはそこの会長さんなんですね?
  はい。去年の4月にできた協会で、メンバーは今200名以上。
大村正樹
どんな人がメンバーですか?
  大体3分の1が私のような宇宙の話が好きな人、もう3分の1ぐらいが航空宇宙産業で実際に宇宙関係の開発をしている技術者。あとの3分の1は大学の先生や学生さん。
大村正樹
3分の1が夢を見ているようなロマンチスト、宇宙マニアみたいな方ばかりで、3分の2は専門家というか、真剣にこのことを考えている方たちということですか?
はい。
大村正樹
会長ということは、これを本業としているんですか?
  本業にしようとしているところですけれど。
大村正樹
宇宙エレベーターはどこまで行くんですか?
  まさに宇宙、地球の外へ出ます。本当に太陽系のどこへでも行けるように、地球から出るのはエレベーターで。
大村正樹
エレベーターに乗って屋上に着いたら、そこは無重力の世界ということですか?
  はい、完全にそうなります。
大村正樹
空気はどうなるんですか?
  空気はもちろん持っていかないといけないですね。ですから上へ行くと、今の宇宙船とか国際宇宙ステーションと同じような設備を用意しなくてはいけません。
大村正樹
乗る人は宇宙服を着るんですか?
  ちゃんと気密がある宇宙船のようなエレベーターを用意すれば、宇宙服を着る必要はありません。
大村正樹
さすがに軽い気持ちで乗るわけにはいかないですね。
  そうですね。ただ基本的には、特別な訓練を受けてない人でも乗れるようになる。
大村正樹
じゃあ僕でも大丈夫ですか?
  もちろん大丈夫です。普通のエレベーターに乗れる人であれば、宇宙エレベーターに乗ることができるようになります。
大村正樹
ちょっと待ってください。何から聞けばいいんだろう?宇宙エレベーターは、無重力の世界にエレベーターを行かせるわけですよね。ということはスペースシャトルから見る地球は青っぽいけれど、そこからピョーンとヒゲみたいなチューブが1本伸びて出てるってことですか(笑)?
そうです。乗ってボタンを押したらどんどん宇宙へ上がっていって、たぶん窓からはだんだん地球が小さくなっていくのが見えると思います。
大村正樹
じゃあ、1階と宇宙しかボタンはないんですか?
  途中で止まったりとか地球を眺めたりしたいと思いますが、基本的にはその通りです。
宇宙服
 
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大村正樹
えっ、待ってよ(笑)。何分ぐらい時間がかかるんですか?
  低い所、例えば国際宇宙ステーションがあるような所までだったら大体1〜2時間ぐらい。
大村正樹
えっ!1〜2時間で宇宙まで行けちゃう。何キロぐらいで?
  時速200〜300キロぐらいのスピードで上がっていって2〜3時間ですから、大体500〜600キロぐらいです。
大村正樹
上空500〜600キロ、そこは無重力なんですか?
  はい。基本的には、大体地球から100キロぐらい上がった所から先が宇宙といわれてます。
大村正樹
そうなんですか。月が一番近い宇宙かと思ってましたけど、月よりも手前のほうから宇宙っていうんですね。じゃあ、宇宙エレベーターの終点は、月とどっちが遠いんですか?
月まで4分の1ぐらいの距離が大体10万キロといわれてますが、そこがゴール。
大村正樹
じゃあ、ちょっと現実としてありかなという気になってきたなぁ。
  そうですねぇ。
大村正樹
でも、それは何で通すんですか?エレベーターみたいな枠がスルスルスルッと上下して、僕らは箱に乗るわけですよね。2〜3時間だから箱の中は大丈夫かもしれませんけれど、その外側は何でできてるんですか?
今それをみんなで色々考えているんですが、例えばカーボンであるとか、軽くて丈夫な素材であれば何でもいいんです。
大村正樹
軽くて丈夫な素材を10万キロの高さまで伸ばすんですね。
  はい。
大村正樹
でも軽くて丈夫ということは、例えばゴムチューブを上へ立てても重みでピヨーンと曲がっちゃいますよね。カーボンだって、10万キロだったらピヨーンと曲がりませんか?
実際には地球が長〜いヒモをグルグル振り回しているような感じになるんですね。5円玉にヒモを付けてグルグル振り回すと、ヒモがピーンと伸びるように。
大村正樹
遠心力ですね。
  はい。ああいう感じで地球が長〜いヒモを振り回しているような状態をつくって、そこを昇って行く感じです。
大村正樹
でも、それをつくる時には重力に逆らって上に上にとやっていくわけですよね。どうして振り回しているイメージになるんですか?
  実際には下から伸ばすんじゃなくて、リールに巻いたワイヤーを1回上へ持っていって、そこからスルスル降ろしてくるような感じ。
大村正樹
じゃあ、宇宙船から地球へ向けてカーボンのチューブをスルスルと降ろすんですか?
  実際にはチューブというよりもワイヤーそのものですね。
大村正樹
ワイヤー。あッ、ヒモですか。ヒモをつたってエレベーターの箱が…。じゃあリフトとかロープウェイみたいな感じですか?
  どちらかというと、それらに近いかもしれないですねぇ。
大村正樹
なるほど、イメージが湧いてきました。ロープウェイの山頂の駅から地球までゴンドラが上下するわけですね。
  そうです。
月
 
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大村正樹
でも時速200〜300キロですから新幹線よりも早い、大変なスピードで宇宙と往来できるということですね。実際の開発ってどの辺まで行っているんですか?
材料の開発は、今のところまだ数分の1までの強度しかできてない。
大村正樹
全然ダメなんですね。
  ここ5年間で大体100倍ぐらい強くなってきましたが、あと50倍ぐらい強い材料がつくられるようになれば、基本的に必要な材料は揃います。
大村正樹
5年で100倍の強さになったということですか。じゃあ、あと数十倍ということは、この先何年かで材料は揃うってことですか?
  はい。材料だけじゃなくて、他にも色々なことを開発しなければ実際にはつくれませんから、それにトライしようというのが宇宙エレベーター協会の人たちの目標です。
大村正樹
それを工事する人は誰ですか?
  みんな色々考えているんですけれど、世界を股に掛ける大きな企業とか、国連のような機関とか、今までにない全く新しい組織が宇宙エレベーターをつくることになるんじゃないかと思ってます。
大村正樹
大野さんは日本宇宙エレベーター協会ですが、国連も入ってくるということは世界レベルでこの宇宙エレベーター構想が盛り上がっているんですか?
今一番盛り上がっているのはアメリカと日本。それからヨーロッパももちろんそうです。アジアも、中東の国々の人たちも非常に興味を持っています。
大村正樹
各国に宇宙エレベーター協会があるんですか?
  いくつかの国で、もうできてます。
大村正樹
じゃあ、大野さんはそういった各国の協会のシンポジウムに出席して、議論に参加するんですか?
  はい、年に2回ほど。最近はアメリカで行われることが多いです。
大村正樹
年に2回集まるんですか、宇宙エレベーター協会の人たちが。すげぇ!!
  国際宇宙エレベーター協会の立ち上げが始まっているところです。
大村正樹
夢みたいな話ですが、真剣に話を聞いてたら僕も乗りたくなってきちゃった。上空数百キロまでだったら2〜3時間で行けるということですが、10万キロだと2日3日かかりませんか?
途中、3万6千キロあたりに大きな基地をつくる構想になってます。
大村正樹
いわゆる衛星の軌道ですね。
  そうですね。そこまで数日かかる。
大村正樹
3万6千キロまで数日かかっちゃうんですか?
  時速300キロですから、大体5日ぐらいかかる計算になります。
大村正樹
10万キロということはその3倍ですから、15日ぐらいかかるってことですか?
  そうですね。ただ、それは最初の段階の話で、開発を進めてもっと速いエレベーターをつくれば、例えば24時間とか、短時間で行けるようになる。まず一番最初につくる実験的なエレベーターが、200〜300キロぐらいのスピードだろうと。
大村正樹
サンシャインの展望台に行こうとか、そういうノリではちょっと難しい。ある程度着替えとかも用意しなくてはいけないし…。
  そうですね。食べるものも水も用意しなくてはいけない。
大村正樹
寝る所はあるんですか?
  無重力でフワーッと浮いて寝ることになるんじゃないかと思います(笑)。
大村正樹
夢みたいですねぇ。僕はこういう話大好きなんですよ。これまでサイコーの方にはほとんど現実的なお話ばかり伺ってきたんですが、こんな夢みたいな話はたまらないので、もしよろしかったら来週もお越しいただけますか?
はい。ぜひよろしくお願いします。
大村正樹
ありがとうございます。今日のサイコーは、日本宇宙エレベーター協会 会長の大野修一さんでした。
  ありがとうございました。
大村正樹
このラボにはこれまで100人近いサイコーの方がお見えになっていますけれど、今までは既にある物とか、これまで研究したこととか、“ある”ことをご説明いただいてきました。今回は“ない”話でしょ。“ない”話だけど、目を輝かせながら「やがてはこうなる」ということを語られて…。こういうのもいいねぇ。すごく夢のある話だけど、それを夢じゃなくて現実だと思いながら突き進んでいく方って、素敵だなと思いました。
基地
 
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