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「鳥の話」(2)
コーチャー/細川博昭さん(サイエンス・ライター)
大村正樹&細川博昭
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。今日も鳥に詳しいサイエンスコーチャーが来てくれます。鳥は意外に頭がいいという話だったけれど、今週は究極に頭のいい鳥が何なのかという話まで聞いていこうと思います。サイエンスコーチャー(サイコー)は前回に引き続きまして、サイエンス・ライターの細川博昭さんです。こんばんは。
こんばんは。よろしくお願いします。
大村正樹
先週の捨て台詞、シャガールとゴッホを見分けられるハトがいるって本当ですか?
  本当ですよ。
大村正樹
絵を見分けられちゃう?
  はい。
大村正樹
具体的に誰がどんな研究をして、どういう結果で分かったんですか?
  慶應義塾大学に渡辺茂先生という心理学の先生がいるんです。
大村正樹
日本人の先生が?
  日本人で認知心理学をやってます。記憶や判断の仕組みについて、人間と動物を比較しながら研究されてる先生で、そこの研究室にハトがいるんです。先生はハトに色々なことをやらせてデータを取ってたんですが、絵を見分けることができるんじゃないかと思って、最初はピカソとモネの絵を鳥に見せて…。
大村正樹
モネは印象派、ピカソは『ゲルニカ』を描いた人ですね。
  はい。鳥に箱の中へ入ってもらい、ちょっとお腹をすかせた状態にして正しい絵を選べたらエサがもらえるということをやって。
大村正樹
「モネ!」とか「ピカソ!」と言うんですか?
  いえ。ボタンを2つつくっておいてどっちが出たらどのボタンを押せ、と教えて正しいボタンを押したらご飯がもらえる訓練をしたら、ちゃんとモネとピカソを見分けることができるようになった。
大村正樹
なるほど。
  面白いのは、最初に見せた絵を今度は変えてみたんです。違う絵に変えても、こっちがモネでこっちがピカソというのがハトに分かった。
大村正樹
ピカソとモネの別の作品を見せても、いわゆる絵のタッチで分かったということですか?
  そうなんです。
大村正樹
へぇ〜。でも似たような絵描きさんはちょっと厳しいですよね。ピカソは独特じゃないですか。
  そういうのもあったし、違う画家の組み合わせでもやってみようということで、今度はシャガールとゴッホで比べてみたら、やっぱりハトはちゃんと見分けることができたんです
大村正樹
それは、ゴッホは例えば静物画で動かないものを描いて、シャガールは人の絵を描いているからという違いでしょうかねぇ?
  それもあるかも知れないですが、画家さんによって色の使い方とかペンの運び方とか構図のつけ方が違っていて、特徴がどうもあるようなんですね。
大村正樹
へぇ〜。
  それを、絵を専門に見る人間と同じようにハトも違いを1個1個とらえて、自分の頭の中にデータベースとして持って比較することで判断ができるようですね。
大村正樹
ハトというと昔は新聞社に伝書鳩がいて、帰巣本能−自分の巣にどこからでも帰れるので頭がいいといわれてましたけれど、有名な画家の絵を見分けられちゃう。頭のいいハトだけで、おバカなハトちゃんはできないんですか? 訓練されたからできるんですか?それともだいたいできるんですか?
使っているハト自体が適当といいますか、伝書鳩の中からピックアップしたので、おそらく伝書鳩だったらある程度できるんじゃないかと思われてます。
インコ
 
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大村正樹
間違ってもラジオを聴いてるキッズが上野公園辺りでハトをつかまえて上野の美術館へ連れていっちゃダメだけど、ハトはそういうこともできるということですね。
はい。
大村正樹
目がいいことは分かりましたが、耳は聞こえるんですか?
  耳は人間と同じような音域が聞こえますし、その上のものすごい細かい音まで聞き分けることができる。
大村正樹
目もいいし耳もいい。例えばどんな音を聞き分けられるんですか?
  人間だったら聞き分けられない細かい音符まで聞き分けられるとか、短い周波数で音が変わっていくことがよく分かるとかありますが、音楽の違いも鳥は聞き分けることができます。
大村正樹
おっ!今、ラボに音楽がかかってきました♪初の試みです。これはバッハですね。ハトは、バッハとかベートーベンは分かるんですか?
ハトもたぶん分かると思います。鳥の中には鳴禽(メイキン)−さえずる鳥という種類があって、メスに向かってオスが一生懸命さえずって恋をアピールする。ブンチョウもその種類に入りますが、渡辺先生の研究室で今度はブンチョウを使って「クラシック音楽と現代音楽の違いが鳥に分かるか?」という実験をやったんです。ブンチョウを使ってバッハと現代音楽のシェーンベルク。
大村正樹
17世紀と20世紀の人ですかねぇ。
  はい。聞き分けの実験をまた同じようにして。
大村正樹
ボタンでやったんですか?
  正しい音楽が聞き分けられればエサをもらえるよう、今度はボタンでなく止まり木でやったんです。
大村正樹
こっちがクラシックでこっちが現代音楽というふうに止まり木をチョイスしたんですか?
  そうです。
大村正樹
夏目漱石さんも嬉しいでしょうねぇ、『文鳥』を書いて。
  ハハハ。
大村正樹
2週間にわたって鳥の頭がいいことがよく分かったんですが、鳥くんの頭の中は人間でいうと何歳児ぐらいですか?
  そうですね。鳥にも種類があるので…。頭のいいオウムの中のヨウムですと、4歳から6歳ぐらいの知能があるんじゃないかと。
大村正樹
小学校入学前、幼稚園児ぐらいの知能がヨウム。ヨウムって何ですか?
  インコとかオウムの種類の一つですが、体全体が灰色で…。
大村正樹
先生の『鳥の脳力を探る』という本の表紙の、この目つきの悪いねずみ色の鳥?
  そうです(笑)。
大村正樹
ヨウムって言うんですか。ヨウムインですか?
  いえいえ、ヨウムです(笑)。
ぶんちょう
 
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大村正樹
オウムとは違うんですね。
  オウムの中の1種類です。
大村正樹
何でヨウムと言うんですか?
  日本へ最初に来た時に、西洋のヨウに鸚鵡(オウム)のムと書いてヨウムという名前がつけられ定着したんですが、実際には西洋の鳥ではなくて住んでいるのはアフリカです。
大村正樹
アフリカにいるオウムの一種がヨウムで、それが頭の一番いい鳥といわれているんですか?
  かなり一番に近いところの鳥ですね。
大村正樹
ヨウムは日本で飼ってる人はいるんですか?
  顔つきは恐いんですが愛嬌があると思ってる人もいるみたいで、日本でも飼ってる人は結構います。
大村正樹
どこか都会の片隅で、ヨウムに鍵とか水とか靴とかシャツとか髪の毛とか目とか口とか鼻とか一生懸命教えている人がいるかも分からない。
そうですねぇ。日常の中で話をしていると言葉も覚えて、結構自分で考えて話してくれたりもしますから。
大村正樹
教えがいがありますよねぇ。
  そうですね。
大村正樹
細川さんは鳥を飼ってるんですか?
  家にインコがいまして、オカメインコという種類で一緒に暮らしています。
大村正樹
鳥を飼う極意って何ですか?
  よく観察してあげることだと思います。ちっちゃい生き物なので具合が悪くなることもありますが、よく見てれば分かりますから。今、鳥の専門病院もありますので、そういうところへ具合が悪くなったらすぐ連れて行くとか、正しいご飯−人間の食べ物をあげないとか…。そういう風にしていくと、きっと長生きして楽しく暮らせると思います。
大村正樹
2週にわたって話を聞いて、無性に鳥を飼いたくなりました。
  そうですか(笑)。
大村正樹
いい話だったなぁ。2週間にわたってありがとうございました。今日のサイコーは、サイエンス・ライターの細川博昭さんでした。ありがとうございました。
ありがとうございました。
大村正樹
鳥の頭のよさは十分わかったんだけど、実はラボの助手が絵描きさんのピカソの名前がものすごい長いことを発見してきたの。ピカソの本名は、パブロ・ディエーゴ・ホセー・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソが名前なんだって。「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ…ちょうきゅうめいのちょうすけさん」ってあるよね。ピカソはそれに近いぐらいのものすごい名前!へぇ。ということで、鳥とは全然関係ないんだけどプチ知識でした。興味のある人は、ちょっとインターネットで調べてみてね。
オウム
 
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