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過去の放送分 過去の放送分 2008 11月22日 放送分
「花の不思議の話」(2)
コーチャー/岩科司(いわしなつかさ)さん(国立科学博物館)
大村正樹&岩科司
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。今日のテーマも花の不思議。先週の放送が終わった後、街なかで花を探したんだけどこの時季ってあまり花が咲いてないんだよね。お花屋さんには結構あるんだけど。よーく見ると、明らかに雑草のような草でも小っちゃい花を咲かせていたりして「あっ!こういう所でもけなげに花は咲いてるんだなぁ」なんて思いました。今回も花の素朴な疑問を聞いていきます。サイエンスコーチャー(サイコー)は先週に続きまして、国立科学博物館の岩科司さんです。こんばんは。
こんばんは。
大村正樹
先週、花の不思議な「何でその色になったのか?」という話を伺いました。オジギソウの話もまだ解決してないんですが、例えば春に咲く花や秋に咲く花、朝に咲く花や夜咲く花、あと、何年かに1回しか咲かない花もあります。「何でサクラは春に咲くのか?」花の開花の時季というのは、ほんと不思議なんですけれど。
そうですねぇ。例えばキクやコスモスを頭に連想して、誰も春に咲く植物と考える人はいませんよね。
大村正樹
そうですね。必ず日本では秋。
  日本人に「サクラはいつ咲くの?」と聞けば、おそらく百人が百人「春に咲く」と答えますよね。それから1年という長いスパンではなく、1日で考えても「アサガオいつ咲くの?」と聞いて「夜咲く」と言う人はたぶん1人もいないと思います。ですから、いま自然にある植物は種類によって春に咲く植物、秋に咲く植物、朝や夕方、夜に咲くなど、ちゃーんと植物によって決まりがあることは間違いないですね。
大村正樹
季節によって花の咲く時季が違うのは、花は何か考えて咲いてるわけですかねぇ?
  研究者によっては「植物は色々考えていることもある」というような考え方をする人もいますが、普通、私たちはそう考えてない。地球が始まって植物ができて…。地球というのは24時間で一周回りますから、おそらく1日が24時間という周期に適応して1年あるいは1日の中で、花の咲く時間をそれぞれの植物が獲得したんだと私たちは思ってます。
大村正樹
じゃあ、植物は体内時計みたいなものを持っているということですか?
  ええ、植物は大なり小なり体内時計を持っていて、その時計を基準にして花が咲いたりしぼんだり、葉っぱが出たり落としたりということをやるわけです。
大村正樹
その時計になるのは、例えば何ですか?
  それは植物によって色々あるんですが、一番多いのは光だといわれています。
大村正樹
あっ、光ね。日に当たっている時間ですか?
  そうです。さっき出ましたキクやコスモスは秋に咲きますが、何で秋に咲くのかというと、春と秋では昼間の時間が全然違うからです。秋に咲く植物の多くは、昼間の時間よりも夜の時間が―大概は10時間以上ですが、長くなることで「花を咲かせるよ」というスイッチが入って、咲きはじめます。
サクラ
 
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大村正樹
なるほど。秋口からだんだん日が短くなっていきますよね。そうするとコスモスが「そろそろ咲いちゃおうかな」というふうになるわけですか。
ええ。それから、春に咲く植物の多くはその逆です。昼間の時間が長くなって夜が短くなると、花のつぼみができはじめます。
大村正樹
ヒマワリは絶対夏に咲くわけで、より昼の時間が長い時季を体内時計が選んで、あんなふうに大きい花を咲かせるわけですか?
  ええ。ただし、秋咲く植物が、昼間の時間が短くなると咲くというわけではなくて、大事なのは実は暗闇の時間。夜の時間が長いかどうかが、どうやら引き金になっていることもよく分かってます。
大村正樹
夜が充実しているかどうか、という問題ですか?
  夜の暗さがどのぐらいあるか。
大村正樹
完全に暗くなくちゃいけない。
  そうなんです。何で分かったかと言うと、いくら暗い時間を長くしても、その間に照明を時々つけてやるとなぜかコスモスもキクも花が咲かなくなる。
大村正樹
ふ〜ん。
  これは光中断(ひかりちゅうだん)といってるんですが、昼間の光の短さではなくて、夜の暗闇の長さが花の咲く引き金になっていることが分かっています。
大村正樹
なるほど。人工的にコスモスを咲かせようとしても、日の光をコントロールするよりも暗いところはちゃんと暗く、オンとオフをかっちり分けなければ、いいコスモスは咲かないということですね。
はい。それを農家ではもうすでに利用してるんですよ。
大村正樹
どういうふうに利用しているんですか?
  例えばキク。キクって自然の状態では秋に咲く植物ですが、花屋さんに行くと1年中売られているのをご存知だと思います。あれは光の長さを調節することによって、本来なら秋にしか咲かない花を春に咲かせるようにして、1年中栽培しているからなんです。
大村正樹
へぇ〜。あとアサガオ、ユウガオがあります。きっとみんなアサガオを育てたと思いますけど。
  みなさん、アサガオといったら朝一番に、お日様と一緒に咲くようなイメージがあるかも知れません。自然のアサガオは実際そうですが、夕方とか夜に咲かせようと思うと実はできちゃうんですね。
大村正樹
アサガオもユウガオになるんですか?
  なります。
大村正樹
何でですか?
  アサガオの花がどういうふうにして咲くのかというと、暗くなってから−普通の状態だと夕暮れになってから、ちょうどピッタリ8時間すると花が咲くように体内時計ができている。
ヒマワリ
 
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大村正樹
へぇ〜。夏場の夕暮れは7時頃ですよね。その8時間後、午前3時になるとアサガオが咲くんですか?
  そうなんです。暗くなった時からピッタリ8時間後に咲き始めるので。
大村正樹
日の出と同時に咲くのではないんですか?
  違うんです。暗くなった時から8時間後に咲く。
大村正樹
朝咲きたてのアサガオにいたずらで黒いカーテンを張っちゃったら、また8時間後に咲いてくれるんですか?
  そうです。
大村正樹
じゃあ、もう1回夏が来てほしいなぁ。今は秋だもんなぁ(笑)。
  ですから、アサガオというと朝に咲くイメージですが、全然朝咲くのではなくて。
大村正樹
へぇ〜。じゃあユウガオはまったく別の植物なんですか?
  ユウガオ、ヨルガオというのもあり、アサガオとユウガオとヨルガオ。実はもうひとつヒルガオもありますが、これはもう全部違う植物。
大村正樹
違うんですね。だけど、人工的にちょっと手を加えて暗くしたら、アサガオの場合はユウガオやヨルガオになるのも可能ということですね?
そうです。
大村正樹
オジギソウの謎が最後まで分からなかったんですが。オジギソウは何であんなに敏感に反応するかは、分からないんですね?
  よく分かってません。研究者は何でも知っているように感じられるかも知れませんが、実はひとつのことが分かるようになると、分からないことがその何倍も増えます。ですから研究を何十年もやればやるほど、分からないことのほうが多くなるんですよねぇ。
大村正樹
極めることがないのが研究なんですね。
  はい。植物でもそういう不思議なことはいっぱいありますから、子どもたちが夢を持って、たくさん研究者になってくれたらいいなぁと思います。
大村正樹
ありがとうございます。花博士からのメッセージでした。今週のサイコーは、国立科学博物館の岩科司さんでした。ありがとうございました。
ありがとうございました。
大村正樹
この2週間ずっーとスマップの『世界に一つだけの花』が頭の中を回っているんだけど、花も“オンリーワン”なんだよねぇ。来年の夏、アサガオにちょっといたずらで昼間に黒い幕をかけてみて、本当に夕方とか夜に咲くのか、どうしても実験したくなったなぁ。暗くなってから8時間後に咲くのがアサガオなんだって。みんなはどういうふうに思いましたか?
アサガオ
 
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