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過去の放送分 過去の放送分 2008 5月31日 放送分
「水の不思議」(1)
コーチャー/水谷広さん(日本大学教授)
大村正樹&水谷広
大村正樹
今日で5月もおしまい。五月病になっている人もおしまい。明日から6月、だけどジメジメした梅雨がやって来るねぇ。この梅雨というと雨、雨というと水。ということで今日のテーマは水の不思議。水ってすごく身近なところにあるじだけど、とっても不思議な性質を持っているんだって。5月最後のサイエンスコーチャー略してサイコーは、日本大学教授の水谷広先生です。こんにちは。
こんにちは。
大村正樹
今日は水の話を聞こうと思いますが、水谷先生は「水」が入ってます。「水の谷が広い」と書くんですね。「水の谷が広い」ところは、場所的にはどこですかねぇ?
それは僕ですね、何と言っても(笑)。
大村正樹
水谷広さんということで先生自身が。今日のテーマは水の不思議ということでうかがいたいですが、水を研究されている先生からすると、水の一番の不思議は何ですか?
一番不思議なのは、何と言っても水があっちこっちにあることですね。海や川だけじゃなくて、冷たい宇宙の果てや地球の熱い真ん中のほうにまで水があるんです。
大村正樹
えっ、ちょっと待ってください。だって、火星に水があったという話でも、水はないんですよね。
  いえ、今でもあります。
大村正樹
火星に水があるんですか!? 川の、水の跡があったというぐらい。
  もちろん。だけど、その後どこかに水がいってるわけですけれど。中のほうにたくさんあるだろうと思われてます。
大村正樹
太陽に近づくと水が蒸発しちゃってるから、水星や金星はないですよね。
  う〜ん、実際にはあるんですけれど。金星はそんなに多くはないです。水星はほとんどないでしょうけど。
大村正樹
太陽系の外に行ったら、他にはどこにあるんですか?
  もう宇宙の果てのずーっと・・・。でも、水があるんです。
大村正樹
水にふさわしいのは地球だけじゃないんですか?
  違います。全然違うんですねぇ。ですから、それが不思議ですよ。水は地球だけのものではないんです。宇宙にもあります。
大村正樹
月にもあるんですか?
  月ねぇ、月はちょっと乾ききっちゃって量は少ないかも知れないけれど、あるでしょう。水っていろいろなものにくっついてますから、そのくっついてる状態だったらけっこうどこにでもあると言っていいかもしれない。
雲
 
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大村正樹
人間の体の大半、半分以上は水と言いますよね。血も水に入るんですか?
  はい、もちろん、水の溶液と言ってもいいですよね。
大村正樹
そもそも水のカテゴリーは、水は何のことを水と言うんですか? 氷は水ですか? お湯も水ですか?
  もちろん。氷も水で、水も水で、お湯も水。それから蒸気と言いますが、気体になっている水もありますよね。水蒸気。あれも水です。
大村正樹
水というのは非常に広い範囲のことを言うんですね。
  水という分子と言うか、水素2つと酸素原子1つでできている。ちょうどひらがなの「く」の字の格好をしている。そういう水の分子があって、その状態が変わると氷になったりお湯になったり、蒸気になったりするということです。
大村正樹
そうかぁ。人間は冷たくしても熱くしても、常温でも人間ですよ。それと同じですね。
  う〜ん、まぁそうですね。ただ熱くなると病気になっちゃうから(笑)。
大村正樹
でも呼び方、魚を凍らせたらルイベとか言うでしょ。タコをゆでたらユデダコになり、名前が変わるじゃないですか。でも基本はタコはタコだから、水もだからお湯になるのと同じかぁ。基本は水なんですね。
ハハハ。そうですね。
大村正樹
そうか、水は氷、固体になったり、流れる液体になったり、蒸気になったり形が変わるということですね。改めて不思議ですねぇ。
そうです。普通に僕らが暮らしている中で、固まったり液体になったり気体になったりするものは、そんなに多くないですよね。それも不思議なことなんですね。案外ありふれた基本的なことが、よく考えてみると不思議ということは、他にもたくさんあるんですけれど。
大村正樹
でも、水は細かく細かく見ていくと、いわゆる分子になると1つ同じものになるんですね。氷も蒸気も水も同じ分子を持つわけですよね? 分子はどんな感じなんですか?
分子は本当にちっちゃなものですが、その分子が集まってくると状態によって――例えば、その分子同士が固く動きにくくなっていると固体になる。けっこうグルグル、グズグズッと集団で動き回ってると液体になる。もっと自由に分子が一つひとつバラバラに自由に動いていると気体になる。そういうものです。
大村正樹
つまり水の分子と分子がガッチリかみ合っていると氷になるということですね? それがゆるむと液体になって、バラバラになると蒸気になる。それは実際に顕微鏡でご覧になったことはありますか?
顕微鏡で見るとなると、実際には非常に難しいです。本当にちっちゃいですから。
氷
 
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大村正樹
日立ハイテクのマイクロスコープという、ものすごい小さいものが見える顕微鏡があるんですが見えます?
  おそらく工夫すれば見えるかも知れませんね。
大村正樹
水の分子を見るのはけっこう難しいんですね。だけど、ガッチリかみ合っているのが氷ということは、密度が濃いわけですよねぇ?
と思うんですけど、そうではないですね。ガッチリ固まるというか、動けなくなるとむしろ大きくなるんですね。密度は低くなります。それは、ちょうど「く」の字の格好をしている分子がくっつき合う時に、ちょうど動けなくなるとスキマが出てくるんですね。それで、普通のグズグズッと動ける状態に比べると、詰まり方が低くなって、おかげで氷は水に浮いちゃう。そういうことになります。
大村正樹
氷のほうがスキマが発生しているということですか? いわゆる氷の中に泡があるけれど、そんなレベルではなくてもっともっと小さいスキマがあるということですか?
そうです。氷の中に泡があるって、よくご存じですね。昔の南極の氷にも泡があって、それは昔々の空気が押し込められているというのがあるんです。
大村正樹
かつて来られたサイコーの方が、南極の氷を持って来てくださって泡に感動しましたよ。はじけてました。パチパチパチパチッと。それはもともと入ってた泡だけど、じゃあ氷が水に浮くシステムは、目に見える泡ではないということですね。分子レベルということですか?
そうです、もちろんそういうことです。
大村正樹
これはマイクロスコープで見ることはできるんですか?
  泡そのものは空気ではないんです。全くの真空ですから、それは見えません。分子が見えたとすれば、その間にスキマがあいているということだけですね。何か詰まっているわけではないです。
大村正樹
なるほどねぇ。例えば、お米をザラザラと流したらきれいに流れるけど、1個にガッとまとめるとスキマができるのと同じですか?
全くその通りです。
大村正樹
その水が氷になった時は0度となるんですよね。沸騰する時の沸点は、小学生で習ったのが100度。沸騰するとどうなるんですか?
沸騰すると水は今度は、今まで集団でグズグズッと動いてた分子が一つひとつ自由に動き出して外に飛び出して行く。それが沸騰するということです。
大村正樹
空気中に消えていくんですよね? その大気中に消えた水はどこに行くんですか?
  水は大気の中にいつもフラフラフラフラ動き回っている。この中にもたくさん水はあるんですよ。
大村正樹
このラボ内にも水はあるんですか!?
  この辺を集めれば、何グラムかの水が集まってきます。
大村正樹
じゃあ、今ラジオを聴いているキッズの家でも、カラッとしてても水はそこにあるんですか? 空気を吸えば?
  あります。ええ。本当にあっちこっちに水があるということです。目に見えないけれど。
大村正樹
深いなぁ。水はほんと不思議だよねぇ。当たり前と思っていたけれど、そうなんだねぇ。あと、みんなは家で水道の水飲んでる? 浄水器の水飲んでる? ペットボトルの水飲んでる? いまラボの中にペットボトルの水があるんだけど、これはいわゆる硬水と言われる硬い水。ほかに軟水と呼ばれる柔らかい水というカテゴリーもあったりして、水って本当に漢字一文字だけど、硬水と軟水、どう違うんだろう? いろいろ考えるなぁ。
水
 
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