過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 5月3日 放送分
「ナメクジウオの話」(1)
コーチャー/窪川かおるさん(東京大学海洋研究所)
大村正樹&窪川かおる
大村正樹
今日はナメクジウオという生き物。最近のキッズ、ナメクジは知ってるけど、ナメクジそのものを見たことある人も少ないんじゃないかなぁ。僕が子どもの頃はよく台所とかにナメクジが現れて塩かけたりしてましたけどねぇ。今日のコーチャー、サイコーは、東京大学海洋研究所の窪川かおるさんです。海洋研究所の方ということは東京大学の先生とは違うんですね。
一応、先生です。
大村正樹
先生ですか。東大の教授ですか? すご〜い!(拍手)。東大の女性教授がいま僕の目の前に!
  ありがとうございます。とりあえず、そういうふうになっています。いま東大は49名の女性教授がいるんです。その内の一人で、とりあえず希少価値でございます(笑)。
大村正樹
すごいですねぇ。今日のテーマはナメクジウオ、これは魚ですか? ナメクジですか?
  残念ながら違うんです。どちらでもないんですよ。名前はナメクジウオで、ナメクジのような地面にいるものかなと思う人もいるし、ウオとついているので魚かなと思う人もいるんですけれど、ナメクジウオは海にはいるんですが背骨がないんです。魚は背骨を持っていますが、ナメクジウオは背骨がない動物です。
大村正樹
陸にいるナメクジを海に入れたようなものですか?
  それともまた違うんですね。
大村正樹
違うんですか。そうだ、ナメクジは塩で溶けちゃいますものね。塩水に入ったら大変です。
  そうですねぇ(笑)。
大村正樹
じゃあ、ナメクジとナメクジウオはまた別物?
  はい。ナメクジも背骨がないんです。だけど、ナメクジを海に入れた動物ではなくて、実は私たちの祖先に非常に近い動物なんですね。
大村正樹
みんな、もしインターネットができる環境にあったら、カタカナで「ナメクジウオ」調べてみて! ということで先生、今日持ってきていただいてるんですか?
はい。標本を持ってきました。
大村正樹
いま僕の前にナメクジウオの標本があります。これは見た目、ナメクジですね! 5センチぐらいで、幅が大体8ミリぐらいかな? そのままナメクジをイメージしてもらえばいいんですね。これが海の中にいるということですね?
そうですね、ちょっとナメクジを細〜くしたような、細長いのが・・・。シラウオやシラスにもちょっと感じが似てると思います。
海
(イメージ)
 
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大村正樹
でもシラスと違うのは、目がないです。完全にのっぺらぼうです。何か牙かと思いました。5センチぐらいの牙。象の牙を小さくしたみたいなイメージ。これがナメクジウオ? これが人間の祖先かも知れないということですか?
そうです。実は5億3千万年前、まだ恐竜も何もいない時代で、その頃の化石でピカイアという名前のものが。
大村正樹
ピカチュウという化石ですか?
  ピカイアです(笑)。
大村正樹
ピカイアという化石。5億3千万年前? 人間は何万年前ですか?
  人間は700万年ぐらい前です。
大村正樹
じゃあ、人間よりも遥か、遥か、遥か前の5億3千年前の化石にピカイアというものがあって?
  はい。その化石がこのナメクジウオにとてもよく似ている。それは、ナメクジウオの特徴である背骨ではないんですけれど脊索(せきさく)という組織が体の背中側に1本の棒のようにあるんです。それから、筋肉に筋節(きんせつ)といって節のように筋肉がなっているんです。その2つの特徴を持った化石が5億3千年前の地層から見つかっているんです。そのピカイアは実は私たちの祖先なんです。
大村正樹
えっ、僕らの祖先はピカイアですか!? ちょっと待って! ピカイア分からないんですけど(笑)。ピカイアはどんなものですか?
  ピカイアは、いま脊索を持っていると話しましたが、私たちは背骨を持っています。お母さんのお腹の中にいる胎児のまだまだもっと小さい時、赤ちゃんの形もしてない時に脊索を持っているんです。脊索を持っていて、それがなくなって背骨ができて赤ちゃんになって、私たちが生まれてくるんですね。ですから、ピカイアは私たちの赤ちゃんのもっと前の状態の脊索を持っている動物で、私たちの進化のもっともっと、ずーっともっともっと前の一番最初に近い動物ということになります。
大村正樹
ということは、ラジオを聴いているキッズたちがお母さんのお腹に中にいる時のものすごく最初の段階とピカイアが似てるということですね? そのピカイアとナメクジウオもよく似ている? イコール、僕ら人間はナメクジウオだったかも知れないということですね? いま僕の目の前にナメクジウオがあるけど、これ、僕の先輩なんだぁ。先輩! こんなのが僕らだったんですかぁ!? えっ〜!?
そうなんですよ。弱々しく見えますよね。
大村正樹
ちょっと待ってください。基本的なことですが、ナメクジウオはどこへ行けば見られるんですか?
  いまナメクジウオは、日本ではいくつか捕れる場所があるんですが、南から言うと有明海。それと瀬戸内海。それから、大阪湾、淡路島の周りでも捕れますね。
海中
(イメージ)
 
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大村正樹
有明海は九州、ちょっと遠いなぁ。瀬戸内海は四国と中国地方の間ですね。遠いなぁ。大阪湾は関西空港に行けば近いかも知れない。あとは?
愛知県の渥美半島の沖でも捕れます。大体それぐらいが大きな生息地です。
大村正樹
東京周辺ではダメですか?
  ナメクジウオは砂に住んでいるんですけれど、東京はおそらく海底の砂地が少なくなっていて生息するのはちょっと難しいと思います。泥、いわゆるヘドロの海ですとなかなかナメクジウオが住むのは難しい。きれいな海じゃないと生息できないということです。流れが早くとってもきれいで、しかも砂地でないといけない。
大村正樹
今日はナメクジウオのことでお話に来られたということは、窪川先生はナメクジウオの専門家ですよね? ということは、ナメクジウオが泳いでいるのを見たことがあるんですか?
はい。水槽の中ですが見たことはあります。
大村正樹
それは大阪や瀬戸内海、有明海のほうに捕りに行ったりしないんですか?
  渥美半島沖の赤羽根漁港という漁港があるんですが、そこから漁船に乗ってナメクジウオを捕りに行っています。愛知県まで行って、ナメクジウオを捕るためだけに漁船を借りて。中村さんとおっしゃるんですがいつもお願いをしていて、おそらく世界で唯一のナメクジウオ漁師さん。
大村正樹
ということですよねぇ。ナメクジウオの漁師の中村さんの船に乗って窪川先生はナメクジウオ漁をするんですね? それをすくいあげてきて、泳ぐのを観るのが窪川先生の研究テーマですか?
はい(笑)。泳ぐのも観るんですけれど、どうやって泳ぐかというとS字になって泳ぐんですね。それから、どういうような刺激、例えば光を当てるとか振動や音を与えるとか、何かをするとどういう刺激で泳ぐのかということも調べています。
大村正樹
時間になっちゃった。本当はナメクジウオが何のために生きてて、どういうふうに役立っているのか、この辺りも聞きたいと思って今日はお越しいただいたんですが。また来週もよろしいですか?
もちろんです。
大村正樹
目の前にナメクジウオの標本があるんだけど、この生き物が人間の祖先かも知れないというのは、う〜ん。みんなもネットできる環境にあったら、ナメクジウオで調べてみて。これが僕らの祖先かも知れないという話なのよ。どうだろうねぇ。信じられないなぁ。
海中
(イメージ)

ナメクジウオについての
詳しい説明はこちら- Wikipedia
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