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過去の放送分 過去の放送分 2008 4月26日 放送分
「バイオエタノールの話」
コーチャー/寺門和夫(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
先週の万能細胞も面白かったなぁ。今日はたぶん多くのキッズが知っていると思うけれどバイオエタノール。最近よくバイオガソリンという言葉が新聞などにも出てますが、バイオというのは何ていう意味ですか?
寺門和夫 バイオというのは生物という意味ですね。
大村正樹
エタノールというのは?
  寺門和夫 燃料、アルコールと考えていいです。
大村正樹
生物燃料。これは、分かりやすく言うと何が画期的なんですか?
  寺門和夫 いまの自動車はガソリンで動いてますが、ガソリンはもともと石油からつくっています。石油はどうなっているかと言うと、地面の下にあるものを掘って、そこから石油を集めてガソリンを使って自動車が動いている。ところが、いま地球温暖化が問題になっています。どんどん地球が熱くなってきているということですが、その一番大きな原因が実は二酸化炭素がどんどん増えてきてしまっていることです。
どうして二酸化炭素が増えているかというと、これは自動車だけではないですけれど、発電などいろいろな分野で石油を燃料として使い燃やしているために、二酸化炭素がどんどんどんどん出てくるわけです。そうすると、地球温暖化を止めるためには二酸化炭素を出さないようにしなければいけない。
大村正樹
普通に暮らしている分には、二酸化炭素はどうしても出ちゃうわけですよね? 僕らが呼吸をしていると二酸化炭素は出てきている。それを食い止めようという?
寺門和夫 そうです。なるべく二酸化炭素を出さないようにしようといろいろな試みがあります。そのひとつが自動車の燃料の分野でこのバイオエタノールやバイオガソリン、あるいはバイオ燃料と呼ばれているものです。
大村正樹
それは二酸化炭素が出ないということですか?
  寺門和夫 実は燃やすと二酸化炭素は出るんです。
大村正樹
えっ、じゃあ何でそれがいいんですか?
  寺門和夫 どうしてかと言いますと、つまりバイオ燃料というのはもともと植物からつくっているんです。トウモロコシやサトウキビを分解して、そこから燃料を取り出している。ところが、植物がどうやって成長するかというと光合成がありますね。教科書でそのうち、習うと思います。これはどういうことかと言うと、太陽の光を使って植物は水と大気中の二酸化炭素を吸収して成長していくわけです。植物の体をつくっているものは、大気中にあった二酸化炭素が植物の中に入っていると考えていい。成長している段階では、二酸化炭素を吸収しているわけです。減らしているわけです。これを燃やしても、一度吸収したものをもう一回出しているだけなので大気中の二酸化炭素の量は増えないわけです。先に貯めていたものを出しているだけです。
大村正樹
二酸化炭素を食べて成長した植物を燃やして二酸化炭素は出るけれど、“プラマイゼロ”ということなんですね。でも、むしろ、そうなってくると“プラ”ですね。
寺門和夫 ですから、カーボンニュートラルという言葉があって、それはプラスマイナスゼロのことなんです。石油を燃やすと出てくるだけですが、一度吸収したものを燃やしているわけですから“プラマイゼロ”なので二酸化炭素は増えません。そうすると、ガソリンの代わりにバイオ燃料を使えば二酸化炭素は出るけれども、もともとあった二酸化炭素を使っているだけの話だから、ガソリンを使った時に比べると二酸化炭素の量は減っていくでしょうということになるわけです。
大村正樹
そういうことか。いまバイオ燃料が出てますけれど、100パーセントガソリンだったものに比べて、バイオ燃料ガソリンはわずか数パーセントしかバイオ燃料そのものが入ってないんですよね?
寺門和夫 そうですね。まだいろいろな問題があります。ひとつはどんな植物からどうやってつくるかとか、ガソリンと混ぜたほうがいいのか100パーセントにしたほうがいいのか。あるいはそれに適したエンジンを開発する必要があるのかどうかとか、いろいろな問題があります。ですから、バイオエタノールといっても1種類ではなくいろいろな方法からつくって、いろいろな種類のものがあります。いまは試行錯誤の段階と考えていいんじゃないかと思います。
自動車
 
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大村正樹
いま調べたら東京都内で大体15ヶ所のガソリンスタンドでバイオ燃料を売っているんですよ。あと千葉、神奈川それから埼玉を入れると首都圏で50ヶ所。まだまだ少ないんです。でも、そこに偶然差しかかったらシールを貼っているから分かると思うんです。その中で1リットルのガソリンの内どれぐらいバイオ燃料が混合されているんですか?
寺門和夫 詳しくは分からないですが、いろいろなパーセントがあると思います。20パーセントぐらいしか入ってないのもあるし、外国では100パーセントバイオ燃料もあります。
大村正樹
それもできるんですか? 100パーセントバイオ燃料と100パーセントガソリンだったら、燃費とか車に与える影響はどうなんですか?
  寺門和夫 基本的にはアルコールなので、そんなに影響は変わらないと思います。どうしてバイオ燃料がいま普及しているかというと、いまのガソリンで走っている自動車に使っても、そんなに悪影響も出ないし性能もそんなに変わらないので使われているわけです。ただ供給する量が非常に少ないから、なかなか実用化が進まないだけですねぇ。
大村正樹
でも、いまの話を聞くと、カーボンニュートラルの観点からするとどんどんそれを入れて車を走らせればいいけれど、やっぱり問題もいろいろあるんですか?
寺門和夫 問題もありますね。まず、どういう植物からつくるのかになりますね。実はいま手っ取り早くつくるには、畑でたくさんつくられている作物を使うのが一番いいわけです。
大村正樹
トウモロコシとか。
  寺門和夫 ということで、トウモロコシなどそういったものを使っているわけです。ところが、そうすると、もともと食料としてつくられたものですね。世界中で食料としてつくられていた植物を燃料に回してしまうと、当然その量が少なくなりますから。いま日本でも問題になってますねぇ。穀物の価格がみんな値上がりしたりしているわけです。
大村正樹
あの値上がりは、バイオ燃料をつくるために穀物が燃料に代わっちゃってるから、食べ物が値上がりしているんですか?
  寺門和夫 そういう要素がかなりあります。
大村正樹
そうなんですか!?
  寺門和夫 それから、もうひとつ問題なのは、よくアマゾンなどの熱帯雨林が伐採されて畑になっているという話があります。もともとこれはいろいろな目的で、例えば牧場にするために森林を伐採したんですが、いまはバイオ燃料をつくるために森林を伐採したりしているわけです。そうすると、これは何にもならない。森林はもともとCO2、炭酸ガスを吸収するものですから、それを切ってしまってバイオ燃料用の作物をつくっても、これは全く地球温暖化の解決にはならないですよね。そういった問題も実はいまあるんですよ。
大村正樹
じゃあ、食料をとるか燃料をとるかということで非常に揺れているわけですね?
  寺門和夫 そうですね。特にいま、食料の問題が、日本ではそれほど深刻ではないですが世界的に見ると、例えばアフリカの飢餓で苦しんでいる子どもたちがいっぱいいますよね。一方ではそういう人たちがいるのに、食物に使っている植物を燃料にして燃やして、私たちが車を走らせるというのは、これはちょっとおかしなところがないわけではない。
大村正樹
確かに。でも、トウモロコシはたぶん8割が捨てる芯の部分ですよ。トウモロコシの芯からバイオ燃料はできないんですか?
  寺門和夫 そういう研究があります。ただ、いまは全部使おうとしちゃっているんですね。食べるために回っていかない部分がどんどんどんどん増えているので、その分、量が少なくなっている。とにかく地球に優しい燃料をつくるためには、いま余分に捨てているものをもっと有効に使うとか、そういった考え方でこれからバイオ燃料を開発していったらいいと思います。
大村正樹
そうですよね。分かった? 日常で普通に便利と思っていることって、いろいろな事情があるということを今一度みんなも考えたらどうかなぁと思いました。 どうみんな? だから、食べ物をとるか燃料をとるかという話で、砂漠の中で超腹ペコの状態で、向こう何にも見えなくて、そこに燃料に代わるかもしれないトウモロコシが何本かある。そのトウモロコシを食べて向こうまで歩くエネルギーにするか、あるいはトウモロコシを燃料に代えて持っている車を動かすか。どっちを選ぶんだろうねぇ? なかなか奥行きの深い話だったねぇ。みんな分かった?
給油
 
トウモロコシ
 
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