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過去の放送分 過去の放送分 2008 4月12日 放送分
「惑星Xの話」
コーチャー/寺門和夫(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
実は先週、国立天文台の渡部潤一さんが宇宙の話をいろいろしてくださったんですが、僕は重要なことを聞き忘れていました。惑星X――水・金・地・火・木・土・天の外に海王星、冥王星があって、その冥王星が太陽系の惑星から外されちゃった。でも、その冥王星の代わりにXという星があるんじゃないかという話を聞き忘れたんです。寺門さん、この辺りも詳しいですか? 何でこの惑星Xの存在が分かったんですか?
寺門和夫 まず話が少し長くなるかも知れませんが、水・金・地・火・木・土・天・海・冥だったんですね。その冥王星が惑星ではなくなって、海王星までが惑星ということになりました。これは一昨年そういうふうに決まったんですが。
大村正樹
2006年の夏ですね。
  寺門和夫 はい。それはどうしてかと言うと、実は太陽系の一番外側のほうに冥王星と同じような天体がいっぱい見つかり始めたんです。
大村正樹
ちっちゃい星がいっぱいあったということですね。
  寺門和夫 ただ冥王星より大きい星まで見つかったわけです。海王星の外側には冥王星だけではなくて同じような天体がいっぱいあって、その中には冥王星より大きな天体まで見つかったんです。それから同じぐらいの天体も見つかった。ということで言うと、海王星の外側には冥王星みたいな天体がたくさんあって、冥王星はその1個でしかないので、つまりこれだけを惑星として位置づけるのはおかしいという話になったんです。その結果、実は冥王星も含めて海王星の外側にあるものについては1つのグループにしようということになりました。
ところがそうは言っても、遠い所なので太陽系の外側はなかなか分からないことが多い。いろいろ調べてみると不思議なことがいっぱいありまして、例えば惑星は当然、太陽の周りを回ってます。それから冥王星などの星も惑星ではなくなりましたけれど、太陽の周りを回っていて、その回り方が斜めに回っていたり、ものすごい楕円(だえん)だったり複雑な回り方をしているんです。
大村正樹
冥王星は楕円形に斜めに回っているという話でしたね。
  寺門和夫 そうです。そういう天体がたくさんあるわけです。でも、どうしてそうなるかが分かっていない。実は今度発表された惑星Xというのが冥王星よりもさらに遠い所に――大体地球よりもちょっと小さいぐらいの天体が1つ回っていると、その天体の重力によって軌道が乱されて今の惑星といわれているものの外側、つまり海王星の外側にある天体の軌道のいろいろなおかしな動きを説明できるということなんです。
大村正樹
海王星の外側にある小さな星は、地球と違うような形で太陽の周りをグルグル回っていて、それが微妙に変化するのは海王星の外側にあるXのせいじゃないかという話なんですね。
寺門和夫 そうです。ですから、これはそういう天体が発見されたことではなくて、コンピュータで計算してみるとこういう天体があれば説明できるという仮説です。
大村正樹
えっ! じゃあ誰もまだ見てないんですか? 天体望遠鏡でも見られてないんですか?
  寺門和夫 今は計算で出ているだけで、これから探していくわけです。ただ軌道がある程度予想されていますので、もしかするとそこに大きな望遠鏡を向けると見つかるかも知れない。
大村正樹
じゃあ、それを見つけたら第一発見者になるじゃないですか。賞をもらえますね。
  寺門和夫 そうですねぇ。それと実はそうは言っても海王星の外側を回っているわけですから、何でそれが惑星にまたなるのかという問題がありますね。つまり冥王星はじめ他の仲間の天体は惑星ではなくなったわけで、準惑星という名前がついてます。
大村正樹
準惑星。
  寺門和夫 はい。惑星よりもっと小さい天体です。ところが、惑星Xは実は惑星というふうに定義されています。
惑星
 
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大村正樹
実態がないのに、もう惑星と決まっているんですか?
  寺門和夫 それはどうしてかと言うと、ここで話がもう少し戻りますが「惑星って一体どういうものを惑星と呼ぶの?」という問題があります。今はこういうふうになっています。惑星というのは、ひとつは太陽の周りを回っている天体です。
大村正樹
公転する。
  寺門和夫 ええ、これは冥王星も当然そうだったわけです。それからもうひとつは、ある程度の大きさがあって丸い形をしているもの、これを惑星と言います。冥王星も実はその条件に合致しています。さらにもうひとつありまして、その天体が回っている軌道の付近に同じくらいの天体は存在しないもの。これが3つ目の条件です。
大村正樹
独立してポンと大きな星があれば惑星という定義になる。
  寺門和夫 例えば地球の周りには、地球と同じような大きさの天体がすぐ近くで回っていませんね。そういうものを惑星というわけです。そうすると、冥王星はお話したように同じような仲間がいろいろ回っているので、冥王星の軌道の周りに冥王星だけが1つあって、ほかが本当に小さな天体ばかりという条件ではなくなった。ということで、冥王星は惑星ではなくなったわけです。
ところが惑星Xは、周りにはそれと匹敵するような大きな天体はなく、自分だけで太陽系の周りを回っていて他の天体に影響を及ぼしている。もし計算通りの天体が発見されれば、惑星の条件を満たすので惑星であるというふうに考えられているわけです。
大村正樹
人類は今、そのXを確認するすべは持ってないんですか?
  寺門和夫 基本的には、ものすごい大きな望遠鏡で観測すれば見つかる可能性はあります。
大村正樹
それはたぶん何年も前からそういう星を探そうと、いろいろな天文学者がやってきたわけですよね。
  寺門和夫 惑星Xという名前は、ずーっと昔からあるんですよ。いろいろな人が冥王星の外側にもう1つ惑星があるんじゃないかということで探してました。今までそれが全然見つかってなくて、いつの間にか惑星Xというものも名前としても仮説としても廃(すた)れてたんですね。それがまた復活して、そういった意味でも非常に面白いですねぇ。
大村正樹
だけど、惑星Xよりも他の星、アンドロメダなどのほうが遥かに遠いわけですよね。じゃあ、何で太陽系のグループであるはずの惑星Xが望遠鏡で見えないんですか?
寺門和夫 そうは言っても非常に小さいんですよ。宇宙空間を回って遠くの天体がものすごくはっきり見える有名なハッブル宇宙望遠鏡がありますが、冥王星でもボヤッとしか見えないぐらい小さい。
大村正樹
確かにそうです。冥王星は写真ではすごくボンヤリしているんですよね。
  寺門和夫 冥王星でさえね。それよりも遥かに遠い所にある天体ですから、これはなかなか確認するのは難しい。
大村正樹
なるほど。でも、太陽系は地球からしたら一番近い惑星群ですよね。そのほか空を見上げると星は数多(あまた)あって、それは太陽系の外の光が見えているわけで“灯台下暗し”というんですかねぇ、意外にまだまだ分からない。
寺門和夫 宇宙は広いということでしょうね。
大村正樹
太陽系、奥深いねぇ。宇宙にはいろいろな星があるんだけど、一番近い所でもまだまだ解明されていないことがあるんだよねぇ。僕は子どもの頃から地球の太陽があって、太陽の真裏にもう1つ地球があって同じような暮らしをしている人がいるという話を未だに信じてるものね。何で見た話だったかなぁ? みんなもそういうふうに宇宙のこと、いろいろ考えてみてはどうでしょうか。
惑星
 
惑星
 
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