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過去の放送分 過去の放送分 2008 4月5日 放送分
「宇宙の話」(2)
コーチャー/渡部(わたなべ)潤一さん
(国立天文台天文情報センター・センター長)
大村正樹&渡部潤一
大村正樹
そう言えば1ヶ月ぐらい前、宇宙人の話でやたら盛り上がったけれど、宇宙人というと火星でしょう。渡部さん、今日はちょっと火星の話を聞きたいと思います。分かりやすいところで言うと、地球のお隣の火星、やっぱり昔から火星人はいると言われてるじゃないですか。実はいるんですよねぇ、渡部さん!
ハハハ、そういうことないと思いますけれど。
大村正樹
えっ、いないんですか!? そういうふうに専門家の方は夢のないことをおっしゃる。
  今のところ火星人という割と高等な生物はいないんではないかと。
大村正樹
でも、今年の1月ぐらいに火星の写真で火星人が砂漠でマントを着ている――みんな覚えてる? 分かんなかったらインターネットか何かで調べてみて!――あれで火星人がいることが分かったじゃないですか!
火星人に見えますね、しかし(笑)。これは、ちょっと変わった色の岩がそういうふうに見えてると思われてるんです。NASAの写真はたくさんあるんですけれど、こういう目で見ていくと実はいっぱい出てきそうな感じがします。怪しげな生き物の影が。
大村正樹
何で、とりわけ今年1月の写真はクローズアップされたんでしょう? 面白いという、世の中の人が喜べばいいやということでNASAは写真を出してきたんですか?
これは際立って面白かったですねぇ(笑)。NASAは元々出してたんだけど、それを面白いのを見つける人が一生懸命探して見つけたようなんです。
大村正樹
そうなんですか。あれはNASAが公式に「どうやら火星人がいたみたいですよ」と出してきたわけではなくて、いわゆるマニアの方が見つけた1枚ですか。でも火星って、日本でも昔から「火星人はいる、いる」と言われたじゃないですか。あれは地球レベルではどうですか? 世界中でやっぱり火星人はいると言われてるんですか?
20世紀の前半は火星人はいると信じられていたんです。火星の表面を見ますと、スジ状の模様が見えることがあって、これを大規模な運河だと言い始めた人が実はいて。
大村正樹
それは天体望遠鏡で見た火星の表面のスジ状のものが運河というふうに?
  ええ、これを元々見つけた人が“カナーリー”というふうに名付けて、イタリア語で溝という意味です。運河と両方の意味があるんですが、訳される途中で“キャナル”と。運河になってしまったんです。不思議なもので、運河があると思って見ると見えてくるものなんですね。それで多くの天文学者が「いやぁ、こっちの運河が新しくできた」とか観察して。
大村正樹
勝手に地球上から天体望遠鏡で見ながら、「新しく運河ができたぞ」と喜んでいるんですか?
  そうなんです。ニューヨークタイムズに取り上げられたこともあるんです。「火星の運河、新しく建造」とかね。
大村正樹
行ってもいないのに天体望遠鏡で見て。じゃあ、もし火星人がいたら、地球を見ながら「新しく文化放送が浜松町にビルをつくった」とか切りがないですねぇ。
そうですねぇ(笑)。
火星
 
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大村正樹
火星は、やっぱり100年前に火星人がいると言われた根拠があるんですよねぇ。
  もともと大気があると分かっていて、地球とわりと似た環境じゃないか。季節の変化もあるので、いてもおかしくないんじゃないかと。例えば季節の変化は春夏秋冬、春、夏、秋、冬が火星もあるんです。火星の北半球、例えば、北極などは冬になると氷がワーッと増えて、夏になると氷が融けてしまうんですね。そういう変化が火星はあります。
大村正樹
それも天体望遠鏡で?
  見えます、見えます。火星は地球に大接近することがあるんですが、その時にある程度の望遠鏡があると、誰でも北側の北極のところにポチッと氷があるのが分かるんですよ。
大村正樹
じゃあ、話が戻りますけれど運河は本当にできてるってことじゃないですか?
  う〜ん、ハハハ。残念ながら、それは地球の見誤りと思い込みだったようです。
大村正樹
火星の表面ってずいぶん前に探査機が活動を始めて、赤茶けて砂漠みたいなところの映像を送ってきたじゃないですか。結構、起伏がありましたよねぇ。あれが火星のすべてですか?
いま探査機が探査している地域は本当に限られた場所で、もっと北極のほうへ行けばダイナミックな峡谷もあれば、グランドキャニオンのような地形もある。現在行っているところは赤道部分で、どっちかと言うと割と平坦なところですね。赤道に行く理由は、太陽電池で動いてますので極に行くとなかなか電力が取れないんですね。そのために、いま赤道部分に行っていることが多いんです。
大村正樹
渡部さん、さっきから北極、南極、赤道という言葉で話されているけれど、ひょっとしたらこれは太陽系共通の言葉ですか?
  太陽系の惑星のほとんどは自転してますでしょう? 自転すると必ず極ができて、赤道部分ができますので。
大村正樹
完璧な日本語かと思ったけれど、そうではなくて地球外でも使われるんですね。北極、南極、赤道という。
  使われますね。
大村正樹
いまは赤道周辺を探査しているけれど、やがては北極南極方面も無人探査機は行きそうですか?
  それを狙っている探査もあるんですね。というのは、赤道は太陽に照らされて乾いちゃってるから、北極南極は温度が低い分ちょっと湿っているだろう。水もあるかも知れない。水があると「生命は・・・?」ということになるので、そういう場所に行ってみたい。水がどのぐらいあるか探ってみたいという気持ちは、研究者のみならず強いと思うんですよ。
大村正樹
やっぱり研究する方は火星に生命、生き物がいることを確認するのが、いまの火星の研究の最大のテーマですかねぇ?
  そうだと思います。われわれ、宇宙で生命が発生している場所は地球しか知らないですよね。ほんの少し違うと生命は発生しないのか。ほんの少し違ってもある程度近ければ発生しうるのかということで、宇宙にどれだけ生命がいるか決まるんです。その一番いい研究のフィールド、調査対象は火星なんです。火星は昔、大量に水があったと言われていて、今は干上がってなくなったんですが、その時代に発生しているかいないかで、生命を発生しやすいかどうか決まるんじゃないかと思うんですね。宇宙が生命に満ちあふれているのか、それともたまたま地球は奇跡的な星なのかを決めるひとつの試金石になるんじゃないかと思います。
大村正樹
あと、火星の四季の変化で、四季というのは夏が暑くて冬が寒いなどということですか? 温度は何度ぐらいですか?
  大体平均してマイナス50度ぐらいで非常に寒いんですが。
大村正樹
じゃあ、人間は生きられませんね。
  ただ火星を人間が住めるように変えようという研究をしている人もいて、これは“テラフォーミング”と言うんです。火星はいま二酸化炭素の大気でマイナス50度といえ赤道部分は0度ぐらいになりますから、植物をどんどん持っていけば、それがやがて二酸化炭素から酸素をつくって、だんだん温暖になって人間が住めるようになれるんじゃないかと考えている人もいます。ただまぁ、これは気の長い話ですけどね。そういうふうに火星全体を変えなきゃいけませんので、やっぱり1000万年から数千万年かかってしまうと言われています。
火星
 
火星
 
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