過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 3月29日 放送分
「宇宙の話」(1)
コーチャー/渡部(わたなべ)潤一さん
(国立天文台天文情報センター・センター長)
大村正樹&渡部潤一
大村正樹
今日は宇宙の話。いろいろな宇宙があるけれど、太陽系の中心の星のお話を聞きたいと思います。今日のサイコーは、国立天文台天文情報センターのセンター長、渡部潤一さんです。渡部さんは本も出されているんですが、タイトルは『新しい太陽系』。「冥王星はなぜ太陽系から外されたのか?」とオビに書いてあります。たいへん楽しく拝読しました。
ありがとうございます。
大村正樹
今日はそんな太陽系の中でも最も中心にある――それは太陽です! 何となく火星や金星や土星はみんな興味があると思うんだけど、太陽そのものって、あまりにも日常的過ぎて意外に知らないこと多いんじゃないかなぁ。どう? ということで、渡部さん、いつも見てますから太陽は大きいというイメージがありますが、その大きさは分かりやすく言うとどれぐらいでしょうか?
地球も結構大きいと思いますが、地球が109個横に並ぶ直径。
大村正樹
めちゃめちゃデカイですね。あとはもっと大きさを言ってください。
  キロメーターで言うと140万キロです。
大村正樹
ちょっと想像できないですね。
  質量もすごく重いんです。惑星って、けっこう大きいと言いますけれど、惑星を全部集めても太陽の100分の1以下なんです。
大村正樹
水・金・地・火・木・土・天・海の8つを足しても太陽の100分の1!?
  そうですね。だからカスみたいなもんで(笑)。
大村正樹
へぇ〜、太陽はそんなに大きい! そうですか。実際、太陽はもちろん熱いですから「かぐや」を飛ばしたりするわけにいかないわけで、人類は絶対太陽に行くことはできないですよね?
そうですね、人間が乗って行くと死んでしまいますけれど、無人探査機を飛ばす計画はないことはないです。全部計画倒れで終わってますが。
大村正樹
熱いわけですね。温度はどれぐらいですか?
  表面まで行くと6000度なので何でも融けちゃう。
大村正樹
6000度ってどんなイメージですか? ライターの火やマッチの火は何度ですか?
  数100度だと思います。青い火になっても、せいぜい1000度から2000度ぐらいでしょうねぇ。
大村正樹
炎は1000度から2000度。じゃあ、地球上にある炎の3倍の強さ。
  ええ。表面は少なくともそれぐらいの熱さになっています。
大村正樹
えっ、表面はそれぐらいということは、中はもっと熱いということですか?
  ええ、もちろん中はもっと熱いです。10万度とか100万度とか、一番中心は1000万度と言われています。
太陽
 
このページのトップへ
大村正樹
想像できない熱さですねぇ。外側が燃えているんではなくて、太陽は内側から燃えている?
  外側は単に余熱で光っているだけですから。内側のエネルギーを生み出すところで高温のエネルギーを出して、熱がだんだん伝わってくる。伝わるのに随分時間がかかるんですが、一説によると100万年かかる。
大村正樹
じゃあ、僕らが浴びている太陽の光は、100万年前に生まれた太陽の中心の熱が100万年経って地球に届いているんですか?
  地球に届くのは早いですけれど、表面まで出てくるのが100万年なんです。表面から光と熱になって地球に届くのは8分とか9分ぐらいですから、すぐですけど。
大村正樹
でも、「あったかいなぁ」とか最近感じる時は、太陽の温かみは100万年前に生まれた熱ということですね?
  そうなんですよ。
大村正樹
みんな想像できる? ちょっと待って。暖かくなってきて桜も咲いてくると、100万年前のエネルギーを僕らは感じているわけですね。もし太陽が燃え尽きたとしたら、もうすでに真ん中のほうで燃え尽きている可能性もあるんじゃないですか?
その可能性は一応ないんですけど。
大村正樹
ない?
  ええ、いま安定して燃えていますので、そういう意味では非常に温度変化が少ないんですね。これはありがたいことだと思います。ただ何らかの変化があるとすると、その変化が出てくるのは100万年、一説によると1000万年かかるので、大分昔に変化があったとすれば徐々に出てくる可能性はありますよねぇ。
大村正樹
じゃあ、僕らが生きている限りはたぶん大丈夫ですね?
  それは大丈夫です。
大村正樹
地球温暖化の問題で太陽がサンサンと降りそそぐと地球が熱くなってどうのこうのと言われているけれど、太陽はなくてはならない存在ですからね。
もちろん、太陽がなくなっちゃうと地球が冷えますので。
大村正樹
太陽というと、子どもの頃習った黒点というのは有名ですよね。「黒い下敷きで見ると黒点が見えますよ」とみんなも習ったと思うけれど、黒点の反対は何ですか?
これは難しいですが、時々太陽をじっと見てると白い斑点もあるんですよ。白斑(はくはん)と言うんです。
大村正樹
ハクハン。
  これが一応反対のものかなぁ。
大村正樹
黒点に対して白斑。白斑というのは余り学校では教わらない知識ですね。白斑のメリットは何ですか?
  メリットというか、黒点で抑えられた太陽のエネルギーが白斑を通じて外に出てきているという場所だと言われています。
太陽
 
このページのトップへ
大村正樹
そこは余計熱いんですか?
  ほんのちょっと熱いようですね。
大村正樹
太陽で熱いのって白斑と言うんですか?
  光球面(こうきゅうめん)とわれわれは呼ぶんですが、太陽の表面の場所では白斑がほんの少し高いだけなんです。実はもっと温度が高いものがいっぱいありまして、それは太陽の周りを取り巻くものでコロナと呼ばれている。
大村正樹
コロナ、聞いたことがあります。コロナが一番熱いところ?
  実はこれは不思議なことで、天文学で最も解くのが難しい謎と言われてますが、太陽そのものが6000度なのに、その周りを取り巻く非常に希薄なガス、コロナの温度が100万度もあるんですよ。
大村正樹
太陽の表面の温度は6000度だけどコロナは100万度!? コロナは太陽の表面のガスのことですか?
  そうです。
大村正樹
何ですか、それは?
  それが全く分からない。普通ストーブで何かを温めても、ストーブの温度より上がることはあまりないですね。どうして太陽の場合はそういうことが起こっているのか、まだ全く分かってない。
大村正樹
ということは、太陽の熱は表面が6000度だけど、コロナによって100万度に上げられて地球に届いているということですね?
  地球に届くのはその光球面の6000度の光が主です。100万度に達したものは太陽風という形で、オーロラを発生させるようなエネルギーをたくさん持った粒子として飛んでくるので、直接地球を温めていることはないんです。
大村正樹
基本は太陽の表面の6000度が地球に届いて僕らの温かい暮らしがある。コロナは太陽を取り巻くガスで100万度近い。これは地球には来てない。
ええ。ほんの少し来ているのは、地球の北極や南極に入り込んでオーロラを担っているんです。
大村正樹
えっ! あの有名なオーロラは太陽のコロナの一部なんですか?
  コロナとつながっているんですね。ちょっと複雑なプロセスを経るんですけれど。
大村正樹
難しい。だけど、オーロラにコロナの熱は来ないわけですよね?
  オーロラが光るのは熱ではなくて粒子が飛び込んだ拍子に光るので、100万度持っていても非常に希薄なガスで、熱そのものとしてはそれほど大きくないです。
大村正樹
なるほど。分かりました。みんな太陽って“灯台下暗し”で、太陽は明るいけれど意外に知らないこと多かったんじゃない? 宇宙って、太陽系は近いと思ってすべて知ったつもりでいたけれど奥深いねぇ。みんな、どう思ったかなぁ?
太陽
 
このページのトップへ