過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 3月15日 放送分
「野菜の話」(2)
コーチャー/藤田智(さとし)さん
(恵泉女学園大学園芸文化研究所准[じゅん]教授)
大村正樹&藤田智
大村正樹
先週のキュウリの話、面白かったです!
  そうですか、ありがとうございます。
大村正樹
先週のキュウリの話、面白かったです! キュウリの水分が94〜96%と考えると、あれからキュウリを食べたら、みずみずしさがありがたいなぁ、水分をとっているなぁという気になりました。
先週から更に血色がよくなりましたね(笑)。何か先週よりもずっとよくなったような気がします。
大村正樹
ほんとですか!? ありがとうございます。ベジタリアンになりますよ〜。子どもの頃、ベジタリアンって怪獣かと思いました。
  アハハハ。
大村正樹
野菜を食べる人のことですよ。ということで、先週はいわゆる青い野菜の話を聞きましたので今日は赤い野菜。赤い野菜と言えばトマトですよね。トマトに関するお話は?
そうですね。赤いと言えば、昔はピーマンが緑色だけでしたけど、最近は黄色やオレンジや赤いピーマンが出てきましたね。それからニンジンのオレンジとか、何で野菜には色がついているんだろうということをお話したいと思います。まず、色というのは緑、赤、オレンジがありますが、すべてビタミンAに体の中で変わると考えて下さい。
大村正樹
ビタミンAは体にどんな影響を及ぼすんですか?
  植物の中にビタミンAに変わる色素としてカロテンが入っているんですが、その色のついた野菜を食べるとビタミンAに変わって、私たちの体の中で老化を予防したり、それから発ガン予防、大人のガンを予防する作用が一番大きな点だと思います。
大村正樹
赤い野菜は若々しくいられてガンになりにくい。すばらしい!
  ですから、どんどんどんどん食べていただきたい。それと同時に赤や緑が、キャベツや白菜にちょっと豚肉を入れたりした(笑)、炒め物の中に赤や緑が入ると目にもきれいですよね。
大村正樹
見た目ですね。
  野菜の色は私たちの食卓を美しく飾ってくれて、食欲を増しますよね。そういう二つの、健康効果と目から楽しむ効果があります。
大村正樹
へぇ〜。
  それからもう一つ、実は植物と動物の関係を言いますと、まずピーマンが緑色のうちは中の種ができてないんですよ。トマトも若いうちは青々しくて緑色をしているんですが、やがて完熟してくるとトマトは真っ赤になって、ピーマンは赤くなったり黄色くなったりしますけれど。
大村正樹
えっ!? ちょっと待って下さい。緑のピーマンが大きくなると黄色くなって赤くなるんですか?
  いえ、黄色くなって赤くなるのではなく、黄色くなるものと赤くなるもの、紫色になるものといろいろなものに分かれてきます。
大村正樹
ピーマンは緑だけど最後は赤か黄色か紫に色が変わるんですか?
  そういうふうに変わってくるのが多いですね。じゃあ、緑のピーマンが1袋4個で100円ですよね。ところが赤いピーマンは1個100円以上します。なぜだか分かりますか? いま私が言った中にあります。
大村正樹
外国産? 違うな。大事にしてるから。腐らないように長く持たせて収穫しているから。
  それもちょっと近いですが。緑のピーマンは花が咲いて15日ぐらいでできるんです。そうすると4個で60日分ですよね。ところが赤やオレンジ、黄色いピーマンは、花が咲いて60日かかるんです。1個に対して緑のピーマンは4個できる。
パプリカとピーマン
 
このページのトップへ
大村正樹
赤いピーマンを収穫するのに4倍の時間がかかるんですか?
  そうです。ですから値段がそれぐらい違います。
大村正樹
へぇ〜。でも大きさも違いませんか?
  カラーピーマンの大きなものは「パプリカ」とハンガリー語で呼んでますが、あれは元々大きな種類なんですよ。私たちがピーマンというのは、中ぐらいの品種です。はじめから大きさが違うわけです。
大村正樹
なるほど。じゃあ、普通のピーマンもずーっとならしておけば赤くなる。
  赤くなってきますけれど、大きさは緑のピーマンとあまり変わりません。
大村正樹
植物、野菜と動物のどういう関係ですか?
  若いうちは緑ですけれど、中の種は未熟なんですよ。だから動物や鳥に緑のうちに食べられると、ピーマンやトマトは絶滅してしまう。種ができる前に食べられちゃうから。ところが、緑色にして葉っぱと保護色みたいになっていて、動物や鳥の目から避けているんです。
大村正樹
実なのか葉っぱなのか分からない。
  分からないようにしているわけです。そして、60日ぐらい経って真っ赤になって、赤くなったり黄色くなったりします。そうすると中に種ができています。植物は手がないから自分の種を蒔けない。足がないから運べないでしょ。そうすると、「赤くなったぞ〜! 食べてくれぇ!」と言って、動物に目立つように色をつけるんです。
大村正樹
へぇ〜。
  要するに動物に「食べてくれぇ!」と言って、動物がそれを食べて「おいしいなぁ」と。動物はその場でウンコをしないで、少なくとも100メートル、200メートル向こうでウンコしますから、その中に種が落ちて新しいトマトやピーマンの芽が出て、100メートル陣地が広がっていく。
大村正樹
すごい! 先生、女子大の教壇でも“ウンコ”という話をするんですか(笑)?
  いや、いや(笑)、まずいですねぇ。その時は“ウンチ”と言ってます。
大村正樹
ウンチ(笑)。えっ、野菜って色が変わるのは「食べ頃ですよ」という合図? 「どうぞ、鳥さん食べて!」と言って、「私を遠くに連れてって!」ということですか?
そういうことです。合図です。素晴らしい表現ですねぇ。「遠くに連れてって!」はいいですねぇ(笑)。
大村正樹
ウンチにして種になって、自動的に肥やしにもなって成長にもいいということですか?
  そういうことになります。植物と動物の関係は、鳥も加えてそんな関係ですよね。
大村正樹
これは野菜だけではなくて、植物はそういうことなんですね。
  うまく利用してますねぇ。
大村正樹
ミツバチが蜜を。
  花の蜜を吸うと同時に花粉を自分の体につけてオシベからメシベに受粉させるということも、虫をうまく利用する植物の一つの手段ですね。
パプリカオレンジ
 
このページのトップへ
大村正樹
あと、例えば野菜がこういう形になっている理由でちょっとびっくりするような話はありますか?
  トマトの中のゼリーは何であるか分かりますか? ゼリーって、種のことですが。
大村正樹
おいしい、おいしい。あれが一番おいしい。
  あのゼリーの中に栄養があって種を育てるというのが一つあります。
大村正樹
トマトのヌルヌルの中がトマトの種?
  種が大きくなる場所ですね。ですから、ヌルヌルが種を守って栄養を与えて、最後ものすごいことがあるんですよ。実は、あのヌルヌルがあることによって実の中から種が出たときに守られているんです。トマトは南米のペルー、エクアドルの赤道直下の暖かい地方の原産ですから、冬の寒さに弱いわけです。もしトマトが地面にぺチャッと落ちて種から芽が出てきたら、寒さに弱いから冬になる前に全部死んでしまいます。
大村正樹
はい。
  ところがあのヌルヌルのゼリーは、「芽が出ちゃいけないよ〜。暖かくなったら芽が出ろよ〜」という母親――トマトが母親とするとトマトのお母さんが種に「お前、春になったら芽が出るように」と、ヌルヌルは芽が出ないような物質なんです。
大村正樹
えっ!? トマトは冬の野菜ですか?
  トマトは夏の野菜ですね。春に芽が出て、そして夏に実がなって秋に枯れていきます。もし秋に芽が出たら、冬の寒さで全部死んじゃいます。芽が出ないようにあのヌルヌルをつけて。
大村正樹
春まで待っているんですか?
  ヌルヌルが雨や風で取れちゃったら、芽が出てきて冬はアウトでそういうものもありますが、大部分のものはヌルヌルがそのまま残っていて、翌年の春に芽が出るように。
大村正樹
え〜っ。秋に実が落ちて、その後ヌルヌルがずっとあれば、寒さから守ってくれて、春になったらヌルヌルがなくなって芽が出る準備をしてくれるということですか? 自動的に?
はい。そういうことです。
大村正樹
へぇ〜、すごい! 先生、キッズたちに「肉と魚と野菜だったら?」と言って人気投票したら、たぶん野菜はビリな気がするんですよ。いまの子どもたちは。
ハハハハハ。やっぱり肉と魚の魅力には勝てませんよ(笑)。
大村正樹
もっと野菜をアピールしましょう!
  野菜を食べると間違いなく健康になりますね。ひとつはお米と野菜、主食になるかおかずになるかの違いですが、野菜はどちらかと言うとおかずですよね。おかずになるものは、エネルギーすなわちカロリーが少ないんですよ。ですから、ヘルシーであり、野菜の中には食物繊維といって私たちのお通じをよくしたり発ガン予防にもつながったり、特に大人の生活習慣病を予防する物質が多く入っています。野菜ジュースもいいですが、自分の歯でかんで野菜をたくさん食べると、あごもよくなるし、お腹もきれいになって体も元気になる。だから野菜を食べてほしい。そして、子どもたちにはできれば自分でつくって食べてもらうと、よりおいしさが分かるんですよ。
大村正樹
分かりました。野菜が苦手なキッズも、先生のお話をもっと聞きたかったら、女の子は恵泉女学園大学園芸文化研究所に入学して下さい。
ありがとうございます(笑)。入試の季節なのでよろしくお願いします。
トマト
 
このページのトップへ