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過去の放送分 過去の放送分 2008 1月5日 放送分
「今年、最も期待される科学の話」
コーチャー/寺門和夫(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
いよいよ2008年、オリンピックイヤーがやって来ましたが、番組は科学で攻めていきます。前回、日本各地で恐竜の研究が進むといいなぁというお話をされましたけれど、あとは今年の科学、どんなことが期待されそうですか?
寺門和夫 ひとつは、やっぱりお月さまですね。去年の9月に「かぐや」という日本の探査衛星が打ち上げられました。これが月を回る軌道に入って、今年は本格的な観測活動を始めるんです。そうするとおそらくいろいろなことが分かってくると思うんですね。
大村正樹
去年の11月ぐらいに映像が送られてきて、くっきりデカデカと月が写っていましたよね。まだ「かぐや」は活動しているんですね。
  寺門和夫 これからです。むしろ、あれは試験的な映像に近いです。
大村正樹
あっ、まだ本格稼動しているわけではないんですね。じゃあ、まだまだ「かぐや」の活躍が見られるわけですね。
  寺門和夫 これからどんどんどんどん出てきます。例えば、「かぐや」はいろいろな装置を積んでいて、月のすべてを調べちゃうみたいな、すごい人工衛星なんです。特にわれわれが興味あるのは月の表面の写真ですが、これもこの前みたいなすごく詳細で細かいデコボコまで分かるようなものが立体で見られるようになります。それから、月の内部がどうなっているかとか、裏側、つまり地球上から見ることができない月の反対側がどうなっているのかがよく分かるようになります。
大村正樹
「かぐや」って日本の人工衛星ですよね。11月にあの素晴らしい映像が送られて、世界中が「かぐや」に拍手を送ったんですか?
  寺門和夫 話題になりました。ところが世界的に見ますと、いま月に行っている衛星は「かぐや」だけではないんです。中国も打ち上げたんです。これは「嫦娥(じょうが)1号」と言うんですけれど、これも2ヶ月遅れで、いま月の周りを回っています。それから、今年はおそらくインドが同じように月を探査する衛星を打ち上げるんです。
大村正樹
アジアが次々にやって来るんですね。
  寺門和夫 そうです。月はそういった意味で探査衛星ラッシュというようなことになります。おそらくアメリカもその内、探査の衛星を打ち上げます。ですから、いま世界中が月に目を向けていると言っても過言ではないですね。だけど、日本がその先駆けというか一番乗りで、しかもおそらくデータ的にも一番高密度で詳細なものを得られると思います。
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大村正樹
そうなると、中国やインドがいろいろなデータを送っても、世界的には「そんなの、日本の『かぐや』がその情報を押さえているよ」となると、日本のほうが宇宙開発に対して評価は高くなるわけですか?
寺門和夫 科学の世界では、そういったことがあると思います。ただこういったものは国際協力でいろいろな情報のやり取りをしますので、科学者の世界では「かぐや」のデータを使ったり中国の衛星のデータを使ったりということがあると思います。どうして今こんなに月に探査衛星が向かっていると思いますか?
大村正樹
これは土星とか遠くのほうに行き過ぎちゃったので、改めて近い所から原点に戻ろうという宇宙開発者の原点回帰ではないですか?
  寺門和夫 それはあります。非常に大きいですね。それともうひとつは、もう1回人類を月に送ろうという計画があるわけです。
大村正樹
あっそうか! そうですよね。アームストロング船長以降、何人かのアメリカの方は月を踏んでいるけれど、ここしばらく踏んでいない。
寺門和夫 ここしばらくと言うか、アポロ計画が終わったのが1972年ですから、もう30何年ですか。30何年も人類は月へ行ってない。行けるロケットも宇宙船も持ってないんですよ。それをアメリカはこれから開発しようとしているんですけれど、そうすると月のどこに降りて――今度は月面基地、そこで長いこと暮らすような場所をつくりたいわけです。そしたらその場所をどこにしたらいいかということで、月の表面をもっと詳しく知らなければいけない。ですから、「かぐや」のデータとかアメリカの打上げ衛星のデータとかは、そういったものをすべて調べて一番いい場所を探して、そこに今度は降りていこうということになると思います。
大村正樹
ゆくゆくは月旅行とかも含まれているんですか?
  寺門和夫 少なくとも今考えているのは、例えば南極大陸の基地みたいにまず科学目的でずーっと長期間滞在できる施設をつくろうと、これが月面基地ですね。そのさらに先には、そういった月面で少し楽しめる場所、いわゆる観光みたいなもので滞在できる施設もその内にできるかも知れません。ただそれもどういう場所につくったらいいかが非常に大きな問題です。そういった意味でもう1回月を全部調べてみようということなんです。ですから、今度の「かぐや」もそうですけれど、月の全表面をすべて調べようというすごい壮大な計画です。
大村正樹
なるほどねぇ。宇宙がらみで今年期待できるものは、ほかに何かありますか?
  寺門和夫 そうですね。あとはやはり日本人として一番期待したいのは、日本人宇宙飛行士がこれからすごい活躍をする。
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大村正樹
そうだ、そうだ、そうですよね! 若田さんが再び。
  寺門和夫 そうです。その前にまず、もうすぐ、今の予定では2月ですけれど土井隆雄さん。一番最初に毛利さんと向井さんと選ばれた3人の宇宙飛行士の1人ですね。もちろん現役でやられていまして。この前は日本人で初めての船外活動をしたわけですけれど、今度は日本が国際宇宙ステーションにつくる「きぼう」という実験室があるんです。今度3回に分けて打ち上げるんですが、その第一陣で土井さんが最初のパーツを宇宙ステーションに持って行きます。
大村正樹
いよいよ国際宇宙ステーションに日本の「きぼう」がドッキングするわけですね。
  寺門和夫 だから、宇宙に日本の場所ができるわけです。3回運んでつくるんですけれど、1回目のフライトにまず土井さんが乗ります。その次2ヶ月後、今の予定ですと4月ぐらいですが、星出彰彦(ほしであきひこ)さんという、今度は一番若い世代の宇宙飛行士ですね。
大村正樹
星出さんて“星に出る”と書くじゃないですか。もう宇宙の申し子みたいな苗字ですよね。良かったな。いよいよ4月ですか。
  寺門和夫 そうです。彼が今度は「きぼう」の本体の一番大きなところを持って、スペースシャトルで宇宙ステーションへ行きます。それでくっつけるんですね。ということで、だんだん「きぼう」ができて、総仕上げがおそらく来年になると思いますが、若田光一さんが最後の仕上げをすることになります。
大村正樹
じゃあ、土井さん、星出さん、若田さんという3人で?
  寺門和夫 そうです。今年と来年にかけて。特に若田さんは今度で3回目のフライドですけれど、以前の2回はスペースシャトルで行って帰ってくるという大体10日から2週間ぐらいのフライトだったんですが、今回は日本人で初めて国際宇宙ステーションの長期滞在と言いますが3ヶ月間宇宙に住むんです。これは日本人として初めてのことなんですね。
大村正樹
若田さんがいわゆるドッキングした後に、初めて国際宇宙ステーションで滞在する日本人になるわけですか?
  寺門和夫 そういうことです。
大村正樹
へぇ〜。ちなみに土井さんと若田さん、どちらが先輩ですか?
  寺門和夫 土井さんが第一世代の先輩です。その次が若田さんですね。星出さんが一番若い世代の宇宙飛行士になります。
大村正樹
じゃあ、土井さんは後輩に花を持たせたということですかねぇ。
  寺門和夫 いえ、これはいろいろな訓練の順番とかありますので、宇宙飛行士同士で決めるわけではないんですね。いろいろなことがあって最後に決まる形なので。
 
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