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過去の放送分 過去の放送分 2007 4月28日 放送分
「われわれはどこに行くのか?」
コーチャー/松井孝典先生(東京大学大学院教授)
大村正樹&松井孝典
大村正樹
先生、先週も宇宙の話すごくためになりましたけど、今日は最近環境問題、地球温暖化とか、南極の氷がなくなっちゃうんじゃないかっていうニュースあるじゃないですか。それを分かりやすくうかがっていきたいと思うんですけど、実際今、地球はピンチなんですか?
松井孝典 地球がピンチっていう言い方はおかしい。要するに、地球の環境って絶えず変化していくわけ。だから地球の歴史を見たら、もっと暑い時もあったしもっと寒い時もあったし。今が非常に特殊な時代なんですよ。1年間の平均気温をとった時に、すごく一定なんです。変化がない。だから地球を全部、1年間を平均して何度、っていうのを出すでしょ?それは15℃くらい。これはすごく安定してるんです。例えば過去ね、100万年ぐらいのデータがあるんですけど、地球の地表温度がどう変わってきたかっていうことがデータとしてとれてるんですよ。今から1万年ぐらい前からこういう非常に安定した、気温が一定の状態がずっと続いてるんですよ。それ以前はっていうと、10年間、100年間って温度をとった時に、気温の変化が、年平均気温が6℃も変わるっていうことがしょっちゅうあったんですよ。
大村正樹
そうなんですか。
  松井孝典 大変動していた。それが、今から1万年以前の地球。
大村正樹
その時、人間はもういたんですよね?
  松井孝典 人間はいました。人間は700万年ぐらい前からこの地球にいるわけ。
大村正樹
人間がいて、あと恐竜はいないですよね。
  松井孝典 恐竜はいないけど、もうほとんど今と変わらない生物がいました。
大村正樹
でもお洋服とか着てないんですよね。
  松井孝典 洋服は着てないけれども毛皮をまとってるとか。原始人みたいな感じ。
地球
 
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大村正樹
その時は気温の変化があったんですか?
  松井孝典 気温の変化がものすごく激しかった。だから農耕もできなかった。農業っていうのは毎年こうちゃんと季節がめぐってこないとできないでしょ。ある時は春がなくて冬ばっかりだったり、ある時は夏ばっかりで春もなかったり秋もなかったり。そうすると、種をまいたりとかできないじゃないですか。昔、非常に気候の変化が激しかった時っていうのは農業できなかったわけですよ。1万年ぐらい前に地球の気温がすごく安定化した。だから我々は農業を始めたんですよ。その農業を始めた結果、今のような文明ができた。
大村正樹
気温が安定していることは、何を意味しているんでしょうか?
  松井孝典 気温が安定してるっていうことは、毎年、季節がめぐってくるっていうことですよ。
大村正樹
いいことですよね。
  松井孝典 我々にとっては。他の生物にとってどうかっていう言い方をしたら、都合がいいのもあるし、都合が悪いのもありますよね。
大村正樹
気温が温暖化してるっていうのは…。
  松井孝典 我々は非常に安定化した気候のもとで文明を築いてきたから、この気温が大きく変わると、こういう生き方ができなくなっちゃうわけですよ。それで問題なの。地球という星からすれば、そんな気温が大きく変わったりなんとかっていうのは当たり前の状態なんですね。たまたまそれが、非常に安定してる時に我々が文明を築いたと。だから、この文明というのが原因で、気温がちょっとでも変わりだすと、我々にとって大変なわけ。別に地球にとって大変じゃない。
大村正樹
そっか。別に地球温暖化で南極や北極の氷がなくなったからと言って、地球そのものは別にいいんですね。僕たちの問題なんですね。
  松井孝典 そうです。環境問題っていうのは、我々の問題なんです。地球の問題じゃない。地球は絶えず変動を繰り返してきましたから。
大村正樹
はい。じゃあ地球が滅びるとかそういう話じゃなくて、逆に人間が暮らせなくなるかもしれない。
  松井孝典 そうそう。今のような生活ができなくなる。
大村正樹
いやじゃないですか。
  松井孝典 それは我々がいやなんでしょ?地球上の生物にとっては、別に本当は我々なんていないほうがいいのかもしれない。
大村正樹
先生、人間なのになんでそんな余裕な事をおっしゃるんですか。
  松井孝典 そうじゃない?だって。
大村正樹
いやですもん。人間がこれまでどおり暮らすためには僕たちはどうすればいいんですか?
  松井孝典 これまでどおり暮らせばいいのかっていう問題があるよ。さっきちょっと言ったけど、地球上に人間が生まれたのは今から700万年ぐらい前ですよ。いろんな人類が生まれては消え、生まれては消え、してるんだけど、こういう生き方をしてるのは我々だけ。現在生きている人類。これを現生人類といいます。
地球
 
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大村正樹
現生人類は、何年前からいたんですか?
  松井孝典 だいたい16万年前ぐらい前に、アフリカに生まれたんですね。
大村正樹
16万年前から現生人類。長いな〜。
  松井孝典 長くないよ。だって、ネアンデールタール人だってもっと長くいたんだから。ネアンデールタール人も別の人類ね。こういうのはだいたい何十万年も生き続けるんですよ。我々が農業を始めたのが1万年前。だから文明が生まれて1万年ですよ。16万年の内の1万年生きただけで、こうやって我々が今生きられるかどうか、って直面してるわけでしょ?これなんかおかしいと思わない?だって、16万年間ほとんどこんな問題にしてなかったのに。これは我々が今、文明という生き方をしてるから問題なんですよ。
大村正樹
いわゆる便利になりすぎたから、都合のいい暮らしを続けるためにっていうことなんですよね?
  松井孝典 そう。我々が豊かで便利で快適で心地いいような生活をするとなると、いろいろ地球に負荷をかけなきゃいけないわけ。地球に負荷をかけるから地球の気温が変わったりする。地球が熱を出すという言い方をしてもいいけど。そういうことが起こってるんですね。
大村正樹
「地球が今、熱を出してる」っていう表現で聞いていきたいんですけど、今の地球の熱の具合というのはどんな具合なんですか?
  松井孝典 今はまだ微熱だよね。だって普通、熱が出たら最初は低いけど、だんだん上がっていくかもしれない。
大村正樹
じゃあ、微熱のうちになんかの手を打たなきゃいけない。
  松井孝典 それをやろうというのが、例えば二酸化炭素を削減しようとか、そういう話なわけですよ。簡単にできることは、我々が今のようなエネルギーをたくさん使い、物を消費し、外国から食料をたくさん入れて食べ残して捨てるっていう生活をやめることですね。
大村正樹
どうすればいいですか?これからの子供たちは。何を考えればいいですか?
  松井孝典 それは子供たちが、自分たちがどういう未来を築きたいのかっていうことですね。多少我慢してでも、より長くこういう文明が続くような生き方をしたいのか。それとも快適でなんでも欲しい物が手に入る、それで人間が今のような生活ができなくなってもいいやと思うかどうかと。
大村正樹
でも、それはきっとみんな、多少我慢してもこの暮らしが長く続くようにって願ってると思いますよ。
  松井孝典 うん、だからそうだったらそういう未来を作るためにどうすればいいのかってみんなで考えなきゃ。そのためには地球ってどういう星なのかとか、生命ってなんなのか、宇宙ってどうなってるのか、人間ってなんなのか、文明ってなんなのか、こういう根源的な問題があるわけ。難しいけどね。これを考えなきゃいけない。
地球
 
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