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2010年10月03日

平成22年9月 落語だけ見聞記(色物さんゴメンナサイ) 


■9月1日 雲助一門会~三代目蜃気楼龍玉襲名真打昇進記念「三代目龍玉への
旅立ち」
市也『高砂や』/馬石『七段目』/雲助『お菊の皿』/~仲入り~/白酒『寿限
無』/龍玉『子は鎹』

■9月3日 池袋演芸場昼席
桂南なん『汲み立て』/三笑亭夢太朗『たが屋』/古今亭寿輔『地獄巡り
(上)』/桂歌春『鍋草履』/三遊亭栄馬『紺屋高尾』(主任)

■9月3日 第七回北沢落語名人会
しん歩『初天神』/しん平『映画宣伝と小三治』/一朝『小言幸兵衛』/~仲入
り~/雲助『死神』
★一朝師匠『小言幸兵衛』・・・まことに良い出来
★雲助師匠『死神』・・・上方へ行かず、二日間の出来事にしてあるのが簡素と
いうより、「何で客がこなくなるのか?」という疑問を打ち消して、噺全体が落
語らしくなる佳き演出。

■9月4日 第11回生志のにぎわい日和
志の春『六尺棒』/生志『狸賽』/生志『夏の医者』/~仲入り~/生志『居残
り佐平次』
★生志師匠『狸賽』・・・八五郎と狸の遣り取りは先代小さんに近い佳作
★生志師匠『夏の医者』・・・初演。やや簡略型だがホノボノして佳い。
★生志師匠『居残り佐平次』・・・序盤で「居残りが職業」だとバラしてしまう
演出。佐平次に嫌らしさのない代わり、『ちりとてちん』の六さんみたいでもあ
る。

■9月5日 第16回気軽に志ん輔
半輔『のめる』/朝太『厩火事』/志ん輔『阿武松』/~仲入り~/志ん輔『幾
代餅』
 ★志ん輔師匠『阿武松』・・・初演。妙に大仰で馬鹿馬鹿しく楽しい。長吉の
人物像にもう一つアクセントが欲しい。

■9月6日 新宿末廣亭昼席
圓満『から抜け』/鯉八『ロリコン病室』(題名不詳)/平治『木曾義仲』/寿
輔『親子酒』/~仲入り~/歌春『短命』/左圓馬『青菜』/夢太朗『置き泥』
/栄馬『井戸の茶碗』
★栄馬師匠『井戸の茶碗』・・・千代田卜斉の嘆きこそ無いがスタンダードな出
来栄えの佳作

■9月6日 談春弟子の会
春太『のめる』/春樹『雪てん』/春太『雛鍔』/~仲入り~/こはる『目黒の
秋刀魚』
★こはるさん『目黒の秋刀魚』・・・前座とは思えない面白さ。

■9月6日 新宿末廣亭夜席
茶楽『お花半七』/笑三『てれすこ』/伸之介『肥瓶』/雷蔵『片棒』一寸違う
/小圓右『酢豆腐』(主任)

■9月7日 第106回立川談笑月例独演会
談笑『野晒し(上)』妙に怪談じみる/談笑『崇徳院』/~仲入り~/談笑『通
天閣の蛸』
★談笑師匠『野晒し(上)』・・・序盤の怪談らしさに魅力あり、

■9月8日 上野鈴本演芸場昼席
さん生『天狗裁き』/白鳥『ナースコール』/市馬『目黒の秋刀魚』/~仲入り
~/馬桜『鰻の天上』/菊之丞『元帳』/小燕枝『死神』(主任)

■9月8日 長講三人会
市也『高砂や』/市馬『唄うお菊の皿』/桃太郎『カラオケ病院』/~仲入り~
/権太楼『唐茄子屋政談(通し)』やや硬く、人情噺的。
権太楼『唐茄子屋政談(通し)』
★権太楼『唐茄子屋政談(通し)』・・・やや全体に語りが硬いが、人情噺とし
ての魅力あり。

■9月10日 第一回らくご・古金亭
ぽっぽ『つる』/馬吉『締込み』/弥助『臆病源兵衛』/馬生『王子の狐』/~
仲入り~/小里ん『黄金餅』/雲助『白ざつま』
★弥助さん『臆病源兵衛』・・・怖可笑しい噺が似合って楽しい
★馬生師匠『王子の狐』・・・その夕方に詫びに行く演出は初耳。
★小里ん師匠『黄金餅』・・・長屋の衆が先代小さんの世界なので陰惨さが な
く、金兵衛も嫌な奴じゃない。それでいて焼き場で骨ごと金を袖口にいれる件の
おかしいこと。古今亭系でも家元系でもない『黄金餅』の誕生。
★雲助師匠『白ざつま』・・・「そこが嫌なんだよ」の切ない味わいは、一寸他
に真似手はあるまい。

■9月11日 第九回柳噺研究会
ぽっぽ『垂乳根』/小里ん『饅頭怖い』/雲助『松曳き』/~仲入り~/小燕枝
『らくだ』
★小里ん師匠『饅頭怖い』・・・30年ぶりの口演とか。現在、演じられない箇
所あり。盛さんが怖いものを思い出す件の演出が独特で馬鹿に可笑しい。
★雲助師匠『松曳き』・・・無言のリアクション部分に滅茶苦茶可笑しい箇所あ
り。

■9月12日 遊雀長月会
三木男『猿後家』/遊雀『五貫裁き』/~仲入り~/遊雀『線香の立切れ』
★遊雀『五貫裁き』・・・テキパキと巧くまとめてあり、三三師匠より分かり易
く受けも大きい。
★遊雀『線香の立切れ』・・・女将がやや泣き過ぎるが嫌味でなく情味あり。番
頭が実に佳く、若旦那も二枚目声で似合う。女将の「こんな逆様見ようとは」が
もうひと息なのは惜しい。

■9月12日 第19回白酒ひとり
白酒『金明竹』/白酒『錦の袈裟』/~仲入り~/白酒『寝床』繁蔵の発音不明
瞭は相変わらずおかしいが、旦那の能天気ぶりが可愛い
★白酒師匠『錦の袈裟』・・・与太郎がバカボンみたいで可愛く、振られた連中
の翌朝が抜群!
★白酒師匠『寝床』・・・繁蔵の発音不明瞭な言い訳は相変わらず可笑しいが、
それ以上に旦那の能天気ぶりが可愛い
■9月14日 第四回射手座落語会
はな平『道灌』/喬太郎『初音の鼓』/正蔵『ハンカチ』/生志『紺屋高尾』
 ★生志師匠『紺屋高尾』・・・私の知る限り『紺屋高尾』のベスト。「久さ
ん、元気?!」の素晴らしさは絶妙。

■9月15日 池袋演芸場昼席
馬治『子褒め』/志ん吉『手紙無筆』/世之介『お花半七』/正蔵『鼓ケ瀧』/
左橋『七段目』/今松『竈幽霊』/~仲入り~/馬石『元犬』/雲助『鰻屋』鰻
を掴んだ動き抜群/馬生『井戸の茶碗』(主任)
★馬生師匠『井戸の茶碗』・・・二人の武士がいかにも武士らしい硬骨漢ぶりと
品を感じさせるのは流石に佐竹様

■9月15日池袋演芸場夜席
朝呂久『道灌』/さん若『猫の茶碗』/喬之進『寿司屋水滸伝』/小んぶ『牛褒
め』/藤兵衛『九郎蔵狐』/権太楼『代書屋』わざと序盤の受けを弱くして、饅
頭大食い大会まで。/~仲入り~/喬之助『寄合酒』/一朝『看板のピン』/親
分の形がステキ/さん喬『百年目』(主任)前に詰めて貰ってタップリ。前半で
携帯鳴らした馬鹿がいたが、ハメモノ入りで(下座の活け殺しが下手)、明らか
に人物像の描き方に変化あり、「(お灸で)熱いってないたんだ」の繰り返しが
ポイント。
★権太楼師匠『代書屋』・・・わざと序盤の受けを弱くして、饅頭大食い大会ま
で運ぶ辺りの巧さに唸る。
★さん喬『百年目』・・・前の出演者に詰めて貰ってタップリ。ハメモノ入りで
(下座の活け殺しは下手)、明らかに人物像の描き方に変化あり、「(お灸が)
熱いって泣いたんだ」の繰り返しがポイント。

■9月16日 池袋演芸場昼席
雲助『辰巳の辻占』/馬生『茶金』(主任)
★馬生師匠『茶金』・・・考証が丁寧で京都の慣行案内風。もう少し茶金さんに
品があれば文句無し。

■9月16日 池袋演芸場夜席
朝呂久『牛褒め/』さん若『粗忽の釘』/さん彌『猿後家』
★さん彌さん『猿後家』・・・巧く中抜きして15分。この噺でこういう風に明
るく可笑しく聞かせる人は珍しい。

■9月16日 月例三三独演
わさび『締込み』/三三『弥次郎』/三三『茄子娘』/~仲入り~/三三『三軒
長屋』
★三三師匠『三軒長屋』・・・最近の高座に共通して、可笑しく演じようとして
いるのは分かるし、可笑しさは遥かにアップしているが、半面、ポイントになる
キャラクターがいない。

■9月17日 池袋演芸場昼席
きょう介『子褒め』/馬治『六銭小僧』/志ん吉『手紙無筆』/左橋『短命』/
正蔵『ハンカチ』/世之介『星野屋』/今松『穴泥』/~仲入り~/馬石『駒
長』/雲助『町内の若い衆』/馬生『品川心中(通し)』(主任)親分立派。金
蔵見事に馬鹿。お染にせつなさ欲しい。
★馬生師匠『品川心中(通し)』・・・親分が非常に立派。金蔵は見事に馬鹿。
お染に切なさが欲しい。

■9月17日 WAZAOGI落語会「通好み~扇辰・白酒二人会」
辰じん『道灌』/扇辰『茄子娘』/白酒『抜け雀』/白酒『寿限無』/扇辰『阿
武松』
★扇辰師匠『茄子娘』・・・娘と会った時の感激が他の演者とは段違い。
★白酒師匠『抜け雀』・・・先代馬生師匠の演出を取り入れるなど、少し動かし
ている。亭主と女房のの可笑しさ抜群。絵師親子がやや弱いのね。
★白酒師匠『寿限無』・・・冒頭、八っつぁんが子供の生まれた嬉しさに溢れて
いるのが凄い!最高の『寿限無』。

■9月18日 第43回なかまち落語会
一力『垂乳根』/朝也『寝床』/~仲入り~/一朝『井戸の茶碗』

■9月18日 春風亭昇太28周年落語会
昇太『不動坊火焔』/昇太『替り目』/昇太『抜け雀』
★昇太師匠『不動坊火焔』・・・序盤の熊公(吉公に非ず)の風呂屋の大騒ぎが
抜群に可笑しい。半面、幽霊は可笑しいが肝心の三馬鹿トリオがイマイチ。
★昇太師匠『替り目』・・・年下亭主と断る必要はないが、これはよい持ち寝た
になる。但し、この演り方では後半は蛇足。
★昇太師匠『抜け雀』・・・「チュンチュン」と雀の真似をみんながする仕草か
楽しい。ストーリー部分だけ陰気になるね。

■9月19日 第100回関内・柳家小満んの会
ありがとう『転失気』/小満ん『指仙人』/小満ん『三人無筆』/~仲入り~/
小満ん『お直し』マクラから中盤は素晴らしい。最期の夫婦の愁嘆からオチはこ
の噺自体の弱みでもある。
★小満ん師匠『三人無筆』・・・今まで東京で聞いたこの噺の中で一番面白かっ
た。ただ、「私が代筆をしても・・」「それも仏の遺言にしておきます」で切れ
るとも思った。
★小満ん師匠『お直し』・・・マクラから中盤までは素晴らしい。最期の夫婦の
愁嘆からオチへ掛けて、出来が下がるのは、この噺自体の持つ弱みでもある。

■9月19日 第57回三三左龍の会
いっぽん『子供だけ褒め』/左龍『悋気の独楽』/三三『山形屋藤蔵』~『忠治
旅日記』/~仲入り~/三三『鮑熨斗』/左龍『粗忽の使者』
 ★三三師匠『山形屋藤蔵』・・・何で、この噺をこんなに演じたがるのか、い
まだに分からん。
★三三師匠『鮑熨斗』・・・初演。「(甚兵衛さんにみんなが言う)シクシク泣
くな」は可笑しいが、甚兵衛だか与太郎だか普通の人なんだか、人格がコロコロ
変わるのは困る。
★左龍師匠『粗忽の使者』・・・初演。かなりの風邪気味で、この噺をこれだけ
楽しく出来れば十分。

■9月20日 民音落語会午前の部
 はら生『不精床』/白鳥『マキシム・ド・呑兵衛』/さん喬『幾代餅』
 ※仲入り後を聞かず、池袋演芸場へ移動。

■9月20日 池袋演芸場昼席
志ん吉『子褒め』/左橋『稽古屋』/喜多八『小言念仏』/世之介『天狗裁き』
/今松『質屋蔵』/~仲入り~/白酒『六銭小僧』まくらからうけまくる/雲助
『持参金』/馬生『笠碁』(主任)
★白酒『六銭小僧』(『真田小僧』の上)・・・マクラから受けまくった。

■9月20日 池袋演芸場夜席
朝呂久『狸の札』/小太郎『権助堤燈』/喬之進『平林』/小んぶ『牛褒め』/
藤兵衛『相撲風景~半分垢』/権太楼『火焔太鼓』/喬之助『締込み』/馬の助
『本膳』/さん喬『文七元結』
★小太郎『権助堤燈』・・・奇妙な可笑しさが権助にある。何となく、談志
家元に似た可愛さ・奔放さを感じる。
★権太楼師匠『火焔太鼓』・・・テンションでなく、飽くまでもキャラクターの
可笑しさでで爆笑させたのは偉い。
★さん喬師匠『文七元結』・・・「噺家の刻しらず」と断って45分。佐野槌の
女将のキャラクターがこの一年程の間にグングン変わり、全体が「落語らしさ」
の方向へ向かっている。

■9月21日 鯉昇喬太郎ふたり会『古典こもり その五 銀座編』昼の部
鯉ちゃ『魚問答』/鯉昇『蒟蒻問答』/喬太郎『そば清ウルトラQ』/~仲入り
~/喬太郎『小政の生い立ち』/鯉昇『佃祭』悪くないけど飽きてきた。
★喬太郎師匠『そば清ウルトラQ』・・・蕎麦20枚・30枚・50枚と、賭け
のたびに蕎麦を手繰る件で囃子を入れた。最後もウルトラQのテーマ曲を囃子を
入れて「赤い草に御用心」とサゲた。
★喬太郎師匠『小政の生い立ち』・・・全体的な面白さはそこそこだが、小政と
駿河屋の件が一番落語。
★鯉昇師匠『佃祭』・・・悪い出来ではないけれど、流石にこう何度も聞かされ
ると飽きてきた。近年の独演会・二人会・寄席主任での演目が少なすぎる。

■9月21日 人形町市馬落語集
市助『垂乳根』/市馬『本膳』/市馬『目黒の秋刀魚』/~仲入り~/市馬『品
川心中(上)』
★市馬師匠『品川心中(上)』・・・女が出来るのは強みであり、また、金蔵や
親分たちが見事に間抜けで落語国。

■9月22日 上野鈴本演芸場昼席
木りん『やかん』/馬治『鮑熨斗(上)』/花いち『桃太郎』/文左衛門『手紙
無筆(上)』/しん平『漫談』/一朝『幇間腹』/圓蔵『反対俥』/~仲入り~
/喜多八『目黒の秋刀魚』/玉の輔『財前五郎』/白酒『抜け雀』(主任)
 ★喜多八師匠『目黒の秋刀魚』・・・これまで、現役では市馬師匠の『目黒 
の秋刀魚』が一番と思ってきたが、喜多八師独特の演出で、殿様の空虚さが伝
わってきて面白い
★白酒師匠『抜け雀』・・・「責め上手?」「官能派?」など言葉のギャグも可
笑しいけれど、墨を絵師自身が摺って「墨を立てる間、声を掛けるな」など、か
なり絵師親子中心に変化させた演出。それが夫婦噺のアクセントになっている。
白酒師を聞いていると「古今亭の基本が夫婦噺にある」という事が分かる。

■9月22日 落語協会特選会第44回小里んの会
いっぽん『桃太郎』/麟太郎『グツグツ』/小里ん『普段の袴』/~仲入り~/
小里ん『三軒長屋』
 ★麟太郎さん『グツグツ』・・・妙に似合う。この噺自体も、もっと汎用化さ
れていい。
★小里ん師匠『三軒長屋』・・・言葉間違いが多かったのと伊勢勘が良い人過ぎ
て、やや仲ダルミしたが、棟梁は実に本物で、噺全体がちゃんと江戸っ子。楠軍
平は「クワッ」となるあたり、可笑しいがもっと派手でもいいな。

■9月23日 志の輔らくごinACT初日
志の輔『バールのようなもの』/志の輔『高瀬舟』/~仲入り~/志の輔『徂徠
豆腐』
★志の輔師匠『高瀬舟』・・・間が長すぎて、噺がドサっぽくなる。殆ど徳川夢
声の下手な真似したラジオドラマ。先代正蔵師匠の文芸落語とは桁が違う。
★志の輔師匠『徂徠豆腐』・・・前半は他の演者より遥かに楽しいが、忠臣蔵の
解説が延々と入って後半ダレる。

■9月24日 J亭談笑落語会 花鳥風月「風」Part1
談笑『シシカバブ問答』/談笑『巌流島』/~仲入り~/談笑『お直し』
 ★談笑師匠『巌流島』・・・家元型を更にクドくした雰囲気。笑いにくい。
★談笑師匠『お直し』・・・女房から蹴転を持ちかけるのも含めて、夫婦の会話
など、「情話」としては現在最も優れた演出だと思う。ただ、全く笑えない。

■9月25日 IMA落語会~柳亭市馬・古今亭菊之丞二人会~
市也『金明竹』/市江『狸の札・銅貨・鯉』/菊之丞『景清』/~仲入り~/市
馬『掛取り美智也』
★市馬師匠『掛取り美智也』・・・狂歌・相撲・芝居・喧嘩・美智也・万歳の本
格にして外連で堪能。

■9月25日 第五回鯉朝のらくごきち
鯉ちゃ『やかん』/鯉朝『お七火の用心』/あやめ『ルンルン大奥絵巻』昔の少
女マンガのハチャメチャコメディだな。/~仲入り~/鯉朝『猿後家』
★あやめ師匠『ルンルン大奥絵巻』・・・この世界は、昔の少女マンガのハチャ
メチャコメディ。「女流落語」の一つの典型だと思う。
★鯉朝師匠『猿後家』・・・全体的に可笑しいんだから、後家さんはもっと可愛
くした方がよくないかな?

■9月26日 第六回雲助蔵出し
志ん吉『元犬』/雲助『業平文治~国蔵の改心』/~仲入り~/雲助『五百羅
漢』

■9月28日 第三回成城寄席 昼の部
春樹『浮世根問』/志の吉『寿限無』/談修『お花半七』/談春『元帳』/~仲
入り~/文左衛門『のめる』/喬太郎『死神』
★談春師匠『元帳』(『替り目』の上)・・・この夫婦は何ともいえず馬鹿な夫
婦で可愛らしくて、落語らしく、可笑しく楽しい。

■9月28日 第28回人形町らくだ亭
宮治『元犬』/平治『佐野山』/一朝『妾馬』/~仲入り~/雲助『らくだ
(上)』
★平治師匠『佐野山』・・・終盤、谷風が佐野山に「あのうっちゃりはお前の実
力。増徴していたわしの鼻をへし折ってくれた。礼を言う」と頭を下げる件は相
変わらず素晴らしい演出だが、ラスト、引退して料理屋を開いた佐野山が後輩の
手を握って、「谷風関のような立派な関取になって下さい」じゃないのでガッカ

★一朝師匠『妾馬』・・・『妾馬』はこう演じると面白い、というお手本のよう
な高座。まさに東京落語のスタンダード。

■9月29日 上野鈴本演芸場昼席
まめ平『子褒め』/馬治『強情灸』/花いち『元犬』/文左衛門『手紙無筆
(上)』/正蔵『悋気の独楽』/一朝『蛙茶番』/圓蔵『道具屋』/~仲入り~
/喜多八『長短』/歌武蔵『漫談』/白酒『錦の袈裟』(主任)
★歌武蔵師匠『漫談』・・・相撲界の野球賭博がらみの漫談だから抜群に可笑
しいけれど、最近こればっかりの印象。『植木屋
娘』など、幾つも優れて楽しい話があるのだから、
漫談屋さんになっちゃ困る。
★白酒師匠『錦の袈裟』・・・「真の落語ファンではないか!どっか行く所は
ねぇのか」のマクラから『錦の袈裟』へ続けたのは見事な志ん五師匠追悼。与太
郎に大笑いしながら、鼻の奥がムズムズした。東京の噺家さんの了見、ここにあ
り。

■9月29日 第32回圓馬招演会
小曲『垂乳根』/圓馬『金魚の芸者』/~仲入り~/圓馬『粗忽の使者』
★圓馬師匠『粗忽の使者』・・・上半身が動き過ぎる欠点と、運びはまだまごつ
きが残るが、ラスト、「痛み耐え難し」前後が実にどうも感心するほどの大声
で、それが活きて、「本当に痛み耐え難いんだ」と感じられて馬鹿に可笑しい。

■9月30日 上野鈴本演芸場昼席
馬治『六銭小僧』/花いち『幇間腹』/文左衛門『寄合酒』/正蔵『読書の時
間』/一朝『目黒の秋刀魚』/圓蔵『火焔太鼓』/~仲入り~/喜多八『旅行日
記』/玉の輔『生徒の作文』/白酒『宿屋の仇討』(主任)
★一朝師匠『目黒の秋刀魚』・・・殿様がややガラッパチだが実に楽しい。
★白酒師匠『宿屋の仇討』・・・江戸っ子三人は楽しいが、武士の形がまだ様に
なっていない。特に手の打ち方が変で、綺麗な音で鳴らないから効果半減。。

■9月30日 いわと寄席市馬の日最終回
市助『道具屋』/市馬『宿屋の仇討』武士の妻殺しが少し改良/~仲入り~/市
馬『笠碁』
★市馬師匠『宿屋の仇討』・・・市馬師匠の手の打ち方が一番効果的。これま
で、何となく嫌々演っている雰囲気だった姦通と義姉弟殺しの雰囲気がかなり一
般的になった。「本当に人を殺す件が嫌いなんだなぁ」と逆に感心する。
★市馬師匠『笠碁』・・・先代小さん型に先代馬生師匠の「オッパイがデカイと
思って」をプラス。友情の雰囲気はあるが、最初の喧嘩で二人とも、顎をしゃく
りすぎる。小さん師匠はあんなに顎を憎憎しく出さないのが佳かった。

石井徹也 (放送作家)

投稿者 落語 : 2010年10月03日 04:03