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2007年02月27日

三遊亭圓楽さんが引退?

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 三遊亭圓楽さんが現役引退を表明したと言う。
 http://www.nikkansports.com/entertainment/p-et-tp0-20070226-162185.html
 http://www.asahi.com/culture/update/0225/010.html 
 報道によれば、もう落語はしない、というニュアンスらしいが本当だとすれば残念なことだと思う。

 落語家の<引退>は例のないことではない。
 名人とうたわれた三遊亭圓朝や、三代目・柳家小さんも<引退>を宣言し、みずから高座
 を退いた。(圓朝は<引退>後もまれに高座を勤めることがあったと言うが)
 近年では、いわゆる<引退>とは違うが、八代目・桂文楽が高座で絶句、そのまま高座を
 を降りて二度と噺を演じなかったエピソードがよく知られている。

 その一方で、87才の長寿を全うした五代目・柳家小さんはときに絶句し、噺の前後が
 入れ替わったりしながらも、最後の最後まで高座を勤め続けた。(当代現役の桂米朝や、
 <ダメな高座もそのままさらけ出す>立川談志もこの系譜に連なると思う)
 わたしはこちらのほうが、落語家の本来的な態度だと思う。

 落語は台本も演出も固定化されていない芸能だから、芸をコントロールする能力が衰えた
 ときは演者の人間性がそのまま出てしまう。
 それはおそろしいようなことだが、たとえば最晩年の柳家小さんの高座は、人間そのもの
 が包み隠さずそこにあって、素晴らしかった。
  (CDボックス「柳家小さん落語全集」(小学館)の解説で愛弟子の小三治が「小さんは
  今がいちばん面白いですよ」と言っている。この全集は小さん最晩年の2000年に
  刊行されたものだが、さすがに大変な見識である)

 圓楽さんが本当に引退をするというのなら、その意志は尊重されなくはならないが、私は
 裃を外した圓楽さんの高座も聴いてみたかったと思う。
 生の高座を聴いたうちでは、ほら話のような落語「夏の医者」が良かった。
 圓楽さんの落語には、良くも悪くもハッタリの利いた、人を煙に巻くような面白さがあった。
 真面目な顔をしてウワバミの説明をしていた楽しい高座を思い出す。


                                             松本尚久

投稿者 落語 : 2007年02月27日 00:33