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2007年02月18日

面白い国立演芸場の「七段目」

国立演芸場 二月中席公演の鹿芝居「仮名手本忠臣蔵・七段目」が面白い。
今日も含めてあと三日(20日まで)の公演だが、間に合う人はぜひ。

国立演芸場
http://www.ntj.jac.go.jp/cgi-bin/pre/performance_img.cgi?img=1068_1.jpg

「鹿芝居」は、落語家が演じる芝居のことで、歌舞伎の一場面を演じるのが
基本的なかたち。
今回は大物の「忠臣蔵七段目」で、国立演芸場の舞台に一力茶屋の大道具を
立派に組んで(床下はさすがにないので 九太夫は客席に降りて手紙を盗み
読む)見せている。

場面は力弥の出から。客席を通って一力茶屋にやってきた力弥(彦丸がキレイ
に拵えてまっている)が由良助に伝言をするくだり。歌舞伎では「近々仇・・・」
から謡になるところが、なぜかカッポレになったりするのは落語家らしい洒落
で楽しい。
役者では由良之助(馬生)、お軽(正雀)、伴内(世之介) が好演。お軽と力弥
の師弟コンビだけは大マジなのが面白い。 世之介の伴内は軽く、センス良く、
由良助の赤鰯を確かめるくだりも、さりげないが巧い。歌舞伎の坂東吉弥を思い
出した(ご本人もそう意識したと言っていた)が、伴内という役に必要なある種
の苦味がある。
女流義太夫の床(竹本越孝・鶴沢駒清)も、力強く、色っぽく大結構だった。

これだけの大仕掛な鹿芝居を十日間も興行するのは国立演芸場ならではの好企画。
落語と歌舞伎は兄弟のような関係にある。落語家が歌舞伎を演じるのは、たんな
る御趣向であるにとどまらず、歌舞伎という芸の水脈が、落語家のなかにどれく
らい貯蔵されているかを確認する意味がある。その点で、まさに国立劇場がなすべき
企画であると言えよう。

その一方で、国立演芸場の興業はいつもそうなのだが、なぜ昼興業しかない(一日
だけ昼夜公演)のだろう。平日の昼間に遊んでいられるのはよほど余裕のある人々
か閑な放送作家くらいのものである。勿体ないことだと思う。

由良之助役者・金原亭馬生さんHP
http://www.h4.dion.ne.jp/~bashyo11/

                                          松本尚久

投稿者 落語 : 2007年02月18日 12:20