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2021年01月20日

直木賞受賞作は『心淋し川』に決定!

第164回直木賞は西條奈加さんの『心(うら)淋し川』に決定しました。

予想(というか願望)は外れましたが、今回は、
手堅く直木賞の王道をいく作品が選ばれた印象ですね。

西條さんは『金春屋ゴメス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビューしました。
このデビュー作が奇天烈な設定の近未来時代小説(?)で実に面白く、続編も書かれましたが、
気がつけば、いつの間にかオーソドックスな時代小説の書き手になっていました。

受賞作『心淋し川』には、6つの短編がおさめられています。
どの作品も、根津千駄木あたりにある心川(うらかわ)という川沿の貧乏長屋があつまった
一角を舞台にしていていて、登場人物が重なる連作短編集のかたちをとっています。

連作短編集とはいえ、それぞれの短編は独立した作品としても読めるようになっています。
(オススメは、前のエントリーでも紹介した『閨仏』や『冬虫夏草』)

その一方、この土地の差配(現代でいえば管理人みたいな存在)に
茂十(もじゅう)という男がいて、どの作品にも顔を出して物語の縦糸に
なっているのですが、この茂十が何らかの秘密を抱えているらしいということが、
物語が進むにつれて明らかになっていくという仕掛けになっています。

誰が読んでも安定の面白さ。これぞ直木賞の王道といえる受賞作です。

さて、芥川賞は、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』に決まりました。
宇佐見さんは天才作家です。史上最年少で三島賞を受賞し、2作目で芥川賞を受賞しました。
ちょっと川上未映子さんが登場した時に近いインパクトを感じます。

「もう一作見たい」という評価で、今回は見送りじゃないかと思っていたんですが、
こちらも予想を外してしまいましたね。

ぜひこの機会に三島賞受賞作の『かか』も読んでみてください。
『推し、燃ゆ』よりこちらのほうが攻めているので、
より才能の凄さを感じられると思います。

西條さんも宇佐見さんもおめでとうございます!

投稿者 yomehon : 2021年01月20日 19:03