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2016年07月20日

直木賞は『海の見える理髪店』に決定! 


第155回直木賞は、
荻原浩さんの『海の見える理髪店』(集英社)が受賞しました。おめでとうございます!

先日のエントリーでもご紹介したとおり、
この短編集をひとことで表現すると、「普通の人の人生に起きる奇跡」ということになります。

オンエアでは、この短編集のなかから「成人式」のあらすじを紹介しながら作品の説明をしました。
スタジオの福井さんと水谷さんもウルッっとくる場面があったりしたものですから、
リスナーのみなさんにも印象に残った人が多かったみたいですね。

そんなこともあって、「あそこまで説明しておきながら……」というツッコミを
たくさんいただきましたが、そこが直木賞予想の難しさなのです!!


さて、受賞作の『海の見える理髪店』ですが、
これはもう、抜群の安定度を誇るウェルメイドな作品集です。


個人的には「成人式」がイチ押しですが、「遠くから来た手紙」もおススメです。

赤ん坊を連れて実家に帰った若い母親のもとに
毎晩のように届く不審なメールの謎を描いたこの作品は、
(詳しくはネタバレになるので申せませんが)
ぜひこの季節、夏だからこそ読んでいただきたい作品です。


「空はきょうもスカイ」もおススメ。

両親が離婚して田舎に引っ越した少女の小さな冒険を描いたこの作品。
貧困だったり虐待だったり、子どもを取り巻く大変な環境というのもうっすら背景として出てくるし、
結末も大人の視点でみればちょっとビターだったりするのですが、
そんなことをものともしない主人公の伸びやかな感性が眩しい作品です。


さすがストーリーテラーとして名高い荻原浩さんだけあって、
バラエティに富んでいるし、読み心地はいいし、
「泣ける短編集」という直木賞の王道を行く作品でもあります。

万人に受けるという意味では、
きわめて直木賞的な作品が選ばれたのではないでしょうか。


でも個人的には、テロが横行する世の中に向けて
選考委員がメッセージを発するような場面を見てみたかったなぁ……。

投稿者 yomehon : 2016年07月20日 20:00