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「PM2.5の実態」(2)
コーチャー/井上浩義(ひろよし)さん(慶應義塾大学医学部教授)
大村正樹&井上浩義

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、先週も話を聞きましたねぇ。「PM2.5」という、とってもちっちゃい物質の話です。サイコーも「中国が主な発生源ですよ」という話をしてくれました。ただ日本でも出ている。実は日本以外でも、地球のあちこちから発生しているということですねぇ。「じゃあ、これはどうやったら防げるのか?」「僕たちはどうやって暮らしていけばいいのか?」 気になる先週の話の続きを聞いていきます。


大村正樹

今週のサイコーも慶應義塾大学医学部教授の井上浩義先生です。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

キッズも聞いたことがあると思います、「PM2.5」。この研究を始めていらっしゃる井上先生ですが、先週はいろんな話を聞きました。「出どころは中国だよ。だけれど日本も出ているんだよ」という。少なからず日本もやっぱり出ているわけで、「それに対して、国際的にどうやって対策を講じているのか?」「ちゃんと先が見えているのか?」という問題ですよね。

はい、そうですね。今はインドとかブラジルでも、このPM2.5が問題になっています。


大村正樹

ブラジルは来年ワールドカップがあるし、オリンピックもあるし。

これもブラジルのサンパウロとか都会でPM2.5の問題が起こっているかというと全くそうではなくて、アマゾン流域の奥地で問題になっているわけです。


大村正樹

風向きってことですか?

違うんです。


大村正樹

違う…。

これはですね、野焼きなんです。


大村正樹

えっ! 焼畑農業?

焼畑農業で燃やすじゃないですか。その時に出て来る煙、ススですね。これがまさにPM2.5で、ブラジルの奥地でも問題になっています。


大村正樹

先週の話だとPM2.5は1ミリの400分の1の物質を指すわけで、いいものも悪いものも−いわゆる害があるもの、無害なものがあるとおっしゃっていましたよね。

そうですね。


大村正樹

野焼きをした灰なんて、害はないんじゃないですか?

野焼きは非常に小さい物質がたくさん含まれているんで、先週も少しお話しさせていただきましたが血管とか肺に詰まりやすいんですね。


大村正樹

やっぱりそこなんですね。そのちっちゃいものが体内に入ってしまうことによって、ゆくゆく害を及ぼすという。う〜ん。

ですから、必ずしも都会だけの問題ではないんです。


大村正樹

はい。

やっぱり各地のそれぞれの実情に応じたPM2.5の害が実際にあるんですね。


大村正樹

例えば長年にわたって吸い込んだ物質によって、体の経年の変化は違いますよね。どう働くかによって、また違いますよね。

そうですね。


大村正樹

野焼きの灰を吸い込み続けると、どういう病気になりますか?

COPDといって慢性閉塞性肺疾患という、要するに呼吸が苦しくなる。例えばこれを聴いてくださっている小学生ですと1回の呼吸でだいたい500ミリリットル、ペットボトル1本分ぐらいの空気を吸い込むんですね。


大村正樹

はい。

深呼吸をするともっと吸い込むんですが、普通に呼吸している時はだいたい1分間に12回くらい呼吸をしているんです、知らず知らずに。ということは1分間に6リットルの空気を入れて、また出しているわけです。


大村正樹

ええ。

それが5リットルになったり4リットルになったりする。そうすることによって、人間の体に取り込むところの酸素が減る。


大村正樹

はい。

そして人間の体にできた二酸化炭素をうまく外に出せないことで、呼吸が苦しくなってくるんですね。


大村正樹

酸素を取り入れるのは、とても大事なことなんですね。

大事なことです。


大村正樹

疲労回復も含めて。

そうです。


大村正樹

生きているのはそこにあるという。

そこにありますからね。


大村正樹

じゃあ、肺系はそれがいけないという。あと、排気ガスなどは硝酸などによる?

硝酸とか硫黄などによる粘膜を傷つけてしまう。


大村正樹

粘膜を傷つける。いわゆる都会に住んで排気ガスを吸うと、ゆくゆくはどういう疾患が?

もちろん肺の疾患も一番考えられるんですが、例えば眼の場合ですとドライアイ、あるいは角膜の炎症のようなものが実際に起こってくるわけです。


都会に住んでいらっしゃる子どもさんで、時々光化学スモッグの警報が鳴って「運動場で遊んじゃいけませんよ」という…。


大村正樹

僕の子どもの頃はしょっちゅうでした。最近は聞かなくなりましたけどね。

まだ横浜や千葉では発令されているんですけれど、そういう時に目が痛む、のどが痛くなるという小学生の方がたくさんいらっしゃいます。それがもう治らないような状態で、ずーっと年をとっていくとそういう状態が長く続くというようなことですね。


大村正樹

う〜ん。これを何とか、子どもたちの未来のために止めをかけるには何をしていきますか?

まずわれわれ研究者がきちんと、PM2.5は先ほども大村さんがおっしゃったように小さな物質の固まりなんで、「これは本当に体に悪いPM2.5、これはあまり影響がないPM2.5」ときちんと分けていかなきゃいけない。


分けることによって対策がとれるんですね。ですから、例えば水滴のPM2.5が悪い場合にはマスクをすればいいじゃないですか。


大村正樹

水滴を防ぐために。

はい。ですけれども、砂粒のようなPM2.5はマスクなんて簡単に通ってくる。ですから、そういうものの場合には他の対策をとらなきゃいけない。


大村正樹

はい。

ですから、本当に人間の体に悪いものをわれわれが見つけなきゃいけない。


大村正樹

ええ。

そして国際社会の中においては「わが国だけがいいんだよ」ということじゃなくて、PM2.5は空気の動きと一緒に世界中を回りますから、そのPM2.5を発生させないような国際協力がぜひ必要になってきますね。


大村正樹

う〜ん。僕ら、いわゆる一般の人たちがPM2.5の動きを察知することはできるんですか?

今、日本全国にだいたい200から300台ぐらいのPM2.5の測定器があります。


大村正樹

例えば、東京だったらどこにあるんですか?

東京だったら都庁にもありますし各国道ですね、国道の近くにも置いてあります。


大村正樹

ちょっと見に行きたいなぁ。

主に屋上にあります。西日本のほうですと、学校の屋上などにも置いてあるところがあります。


大村正樹

200から300あるんですね。そこで測定して、その測定値はインターネットで見られる?

環境省というところのインターネットでいつでも見ることができます。


大村正樹

だいたいイメージ的には西日本のほうが濃いですかねぇ。

そうですね。やっぱり中国や韓国からやって来るPM2.5がありますので、西日本のほうが高くなります。


大村正樹

なるほど。何か世の中の関心事は、ついこの間までPM2.5といっていたのが「オリンピックだぁ!」とか「インフルエンザだ」とか。その流れによって、どうしても風化するのが早いじゃないですか、サイクルが。

はい。


大村正樹

先生の話を2週にわたってうかがってみると、もっともっと長いスパンでこの問題に取り組んでいかないと子どもたちの未来が、ほんと福島の話と何か似ているなというふうに…。

そうですね。


大村正樹

う〜ん…。

今、男性のガンの死亡第一原因は肺ガンなんです。


大村正樹

はぁ〜。

女性も今、第三位です。


大村正樹

タバコ吸ってない人もガンになるというのが何年も前から有名ですけれど。

もちろん、そうです。


大村正樹

結局そういう物質を長いこと体内に吸っているからという…。

そういう理由かもしれないですね。


大村正樹

う〜ん。

実際には今、喫煙率が20パーセントを切ってしまいましたので、タバコの害というよりもこのような環境からの肺への影響が今後も見過ごすことができないと思われますね。


大村正樹

いやぁ、ほんとに考えさせられる2週間でしたねぇ。電子顕微鏡で見たくなりました。

ぜひ見てください。


大村正樹

日立ハイテク、行って来よう!今週のサイコーも慶應義塾大学医学部教授の井上浩義先生でした。ありがとうございました。

どうもありがとうございました。


大村正樹

先生ともいろいろ話したんですけれど、海から来るものとか空を飛んで来るものに関しては、「こっから先は日本だよ」と何も考えてないわけだからバリアは張れないんだよね。そう考えるとやっぱり僕らの暮らしの中で何かちょっと工夫するとか、研究者の方にしっかりと研究のインフォメーションを発表してもらうとか。それによって僕らの暮らしもまた変わってくると思うんですよね。今日のサイコーはそういうことをやっていらして、とても頼もしいなと感じました。ますますいろんなことを研究してもらいたいですねぇ。それでは、今年もあとわずかだね。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!