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「再生医療とは」(2)
コーチャー/北條元治(ほうじょうもとはる)さん(東海大学医学部兼任講師、株式会社セルバンク代表取締役)
株式会社セルバンクのHPはコチラ>>http://www.cellbank.co.jp/
大村正樹&北條元治

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今年も残すところあとわずかになりました。今日で最後の放送です。大掃除はみんな、終わったかな?今年科学の世界でとっても大きなニュース−そうです、京都大学の山中教授のノーベル賞受賞です。iPS細胞と再生医療というテーマで今年最後の放送を締めくくりたいと思います。お知らせの後、サイコーが登場するよ。


大村正樹

今週のサイコーは、今年最後でございます東海大学兼任講師でセルバンク代表の北條元治さんです。こんばんは。

こんばんは、よろしくお願いします。


大村正樹

先週、再生医療の夢のようなお話をいくつもうかがいました。チラッとおっしゃってたんですが臓器そのものは再生できても、集合体いわゆるコンプレックス−目の玉や指などになると難しいと話されました。

はい、そうですね。


大村正樹

で、あれっと思ったのがトカゲ。僕ら追っかけまわしました、子どもの頃。トカゲはしっぽを切るじゃないですか。その断面を見ると血が出てるわけですよ。

はい。


大村正樹

そんな痛い思いをしてしっぽを切られて、トカゲをしばらくほっとくとしっぽが生えてくるじゃないですか。

生えてきますね。


大村正樹

あれはどういう原理ですか?

これも非常に平たくいうと、下等な生物ほど自己組織修復能力が高い。


大村正樹

トカゲは下等ということですか?(笑)

はい。プラナリアという非常に下等な動物がいるんですが、頭があって胴体があって足がある。その胴体をちょん切ると、胴体から頭が出てきて、頭の胴体から足が出てくるんですね。


大村正樹

ほぉ〜!

それを四等分しても、ちゃんと4匹になるんです。


大村正樹

漫画とか映画で出てきますよね、そういうのが。

ハハハ。


大村正樹

切っても切っても…。じゃあ、アンパンマンもそうですね。

アンパンマンも、そうですね(笑)。


大村正樹

そうか、人間の指とトカゲのしっぽは全く構造が違うという?

生物というのは、進化と非常に高度に分化した指や眼球や神経とか…。こういうのを進化にともなった分化というんですが、高度な進化と分化を獲得した種族ほど自己再生能力を犠牲にしてますね。


大村正樹

ほぉ〜。

だから高度な進化をともなってないものは、自己修復能力を非常に獲得している。例えば一番下等と呼ばれている単細胞生物は、完全に分裂して同じものをつくっていくので一番再生能力が高いです。


大村正樹

ミドリムシとかですか?

ミドリムシとかですね。


大村正樹

最近、あれ食べて体にいいというのが話題になっていますよね。

栄養価が高い。


大村正樹

ほぉ〜。

トカゲも非常に下等な生物なので、ああいう能力を持つ。


大村正樹

人間はそこまでいかないということですね。

人間の場合には、どんなに小さな傷でも完全に修復することはできない。ちっちゃな頃にころんですりむいた傷あとや、けんかして傷をつくっちゃったりしたとこがありますね。


大村正樹

あります。

あれは一生残るんですね。皮膚が完全に修復されずに、修復もどきということで傷口がふさがっているだけなんです。だから人というのは、もうほとんどそういう能力は失っちゃってます。


大村正樹

そうなのか。じゃあ、図工の時間にカッターで指を切っちゃった。それが治ったというけれど、実は治ってないということですね。

そうですね。完全に皮膚は治ってないです。


大村正樹

よーく見るとあるんですね。

あります。


大村正樹

そう思うと確かにそんな気もしてきました。

はい。


大村正樹

先週の終わりに、「お顔の皮膚も再生すればできるよ」という話でしたね、ルールが整えば、技術的にはできるという?

はい。


大村正樹

そう考えると人間は死なないように再生することも可能じゃないか、そこまで僕は1週間考えました。

そうですね。確かに答えからいうと「イエス」という答えになるんですけれども。これも宗教的というか倫理的な概念ですが、「人の死は何?」という話になるんですね。


大村正樹

はい。

例えば、クローン技術で私のクローンをつくることができます。


大村正樹

はい。

iPSを使って、iPSから生殖細胞をつくってクローン技術で私のクローンをつくる。そうすると、私とまるきり同じ遺伝子を持った私の赤ちゃんができますよね。


大村正樹

はい。

じゃあ「私といっていいのか?」とか、「私の個体が死んでも、私とまるっきり同じ遺伝子と同じ顔や形のものが生きているから、私の死はないんじゃないか」みたいにいえなくもない。


大村正樹

北條先生としてあらたに赤ちゃん、クローンができた場合に、北條先生を名のっていいかどうかという?

そうなんですね。


大村正樹

そりゃ、ダメですよ。

ダメですよね。


大村正樹

アメリカだったら「何とかジュニア」とつけますけれど、日本はそういうのありませんから(笑)。

そこでいうと、例えばまるきり私の遺伝子を持った子どもですから、心臓移植をやったとしても私に拒絶反応もなくついちゃうわけです。そういう映画、『アイランド』というちょっとSFチックな映画もあったんですけれど。そうして限りなく臓器を取り替えていくことができると、寿命はどんどんどんどん死なないようになっていく。


大村正樹

はい。

じゃあ、「われわれのアイデンティティの根幹みたいな脳神経、脳細胞を取り替えたら同じ肉体で北條といえるのか?」というと、それもはなはだ微妙になってきますので。「個人のアイデンティティは何?」というところも、やっぱり非常に難しい問題になってくるでしょうね。


大村正樹

あぁ。

「脳みそをiPSで取り替えたら、じゃあ北條元治といえるのか?」というのも、なかなか難しくなってきますのでね。


大村正樹

細胞そのものをiPS細胞という形で若返らせて、僕は今45歳ですが“45歳の大村正樹”という形で止めて、それ以上年をとらないことはできるんですか?

なかなか、それはどういうふうにいじればいいのかは、今考えているんですけれど…。原則は、iPS細胞はリプログラミングといって完全にリセットするだけですので、45歳の段階まで進めることはやっぱり45年の年をとってもらわないと困りますね。


大村正樹

そうなんですか!?

そうですね。


大村正樹

じゃあ、細胞はコピーしたらゼロから始まるんですか?

ゼロからですね。


大村正樹

なるほど。

コピーしてもゼロの細胞は、実はみんな大村さんも私も持っているんです。


大村正樹

はぁ。

それは生殖細胞という細胞が絶対老化しない細胞で持っているんですけれど、それだけが老化しない細胞で、あとは最初に受精した瞬間からプログラムされて老化して死というプログラムに沿っていくんですね。


大村正樹

ほぉ〜。

それをiPSでリセットしてゼロにすることはできますが、また45年経たないと45歳の大村さんはできてこない。


大村正樹

じゃあ、それはあきらめました。

アハハハ。


大村正樹

じゃあ、誰も死ぬのは怖いし、やっぱり人生を楽しみたいんですよ。iPS細胞によっていろいろな病気を治療してもらって、人間の肉体は何歳まで生きることが可能ですか?

だいたい120歳ぐらいまでだろうといわれてますね。


大村正樹

ほぉ〜。

これはiPSとか別として今、人が死ぬのはガン、脳卒中、心筋梗塞の三つで全員が死ぬんですね。


大村正樹

ガン、脳卒中、心筋梗塞。

どれかにあたります。


大村正樹

いやぁ、どうしよう。

それが全部克服できるとすると、だいたい120歳ぐらいだろうと。だからガン、脳卒中、心筋梗塞に全然かからなかった人は、120歳ぐらいまで生きるんじゃないかといわれてますね。


大村正樹

120歳か。だけど、例えば骨を折りやすいとか風邪を引きやすいとか、いわゆる免疫力の低下はともなってくるんですか?

iPS細胞から免疫細胞もつくれちゃうんで、免疫力が低下したらその細胞を補充すればいいということで解決できそうな気もしますけれどねぇ。


大村正樹

骨の強度はどうですか?

骨の強度もiPS細胞でカルシウムを沈着する造骨細胞もつくれますから。


大村正樹

目はどうですか?

目も水晶体それから毛様筋とか網膜全部つくれますから、視力も保てると思いますよ。


大村正樹

いやぁ、すごい夢のある話だったけれど、その夢は現実になる時代も近づいているということですよね。

そうですね。何年後かわからないけれど、昔の江戸時代の人が「月に行きたいな」と思っていて行けた。今われわれも思い描いているということは、人間の力としてやっぱり引き寄せることができるかなと信じていますけれど。


大村正樹

ラジオの前のキッズに託しましょう!

そうですね。


大村正樹

だって30年50年かかるんですものね、認可されるまで。

そうですね。


大村正樹

頼むよ、キッズたち! はい、時間でございます。今年最後のサイコーでした。東海大学兼任講師でセルバンク代表の北條元治さんでした。どうもありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

北條元治さんがサイエンス・アイ新書から『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』を出版されています。「人類は不老不死へ」という魅力的なタイトルですね。みんなもすてきな年末を。今年も1年ありがとうございました。よいお年を!

『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』