過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「台風の話」(2)
コーチャー/山口宗彦さん(気象庁気象研究所)
気象庁気象研究所 台風研究部のHPはコチラ>>http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ty/ty-sjis.html
大村正樹&山口宗彦

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も台風に詳しいサイコーの登場です。台風って、とっても怖い自然現象です。これがどういう場所で、どういうメカニズムで発生して日本にやって来るのか? このあたりをサイコーにじっくり聞いてみま〜す。


大村正樹

今日のサイエンスコーチャー略してサイコーも、気象庁気象研究所の山口宗彦さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

山口さんはとても台風に詳しくて、講談社から『台風の科学』という本も出版されてます。台風の猛烈な強さや大きさの話を先週はうかがったんですが、そもそも台風は南の海で生まれるんですよね。

そうですね。


大村正樹

どの辺で誕生して、どうやって日本にやって来るんですか?

だいたい海面水温の温かい北緯5度から15度ぐらいあたりでひんぱんに発生して…。


大村正樹

じゃあ地球儀でいうと、赤道のちょっと上あたりで?

これがまた面白いことに、赤道の上では発生しないんですよね。


大村正樹

はぁ。

これは地球が自転していることに関係してるんですが、赤道の上では発生しないけれど赤道よりもちょっと離れた北緯5度ぐらいから。


大村正樹

5度ぐらい、そこの海で発生するわけですね。

はい。


大村正樹

台風と呼ばれる海は、太平洋って決まってるんですって?

そうです。大気現象としては台風もハリケーンも同じですが、北西側の太平洋で生まれたものを台風と呼んで、北大西洋−北アメリカ大陸の東側の海で生まれたものはハリケーンというふうに呼んでいます。


大村正樹

あと、あの辺だとインド洋あたりもありますよね。

インド洋では、サイクロンと呼んでいます。


大村正樹

そうなんですか!

はい。


大村正樹

サイクロンはインド洋の言い方ですか!?

そうですね。まぁ太平洋と北大西洋以外で生まれたものはサイクロンと呼ばれていますね。


大村正樹

そうですか。北緯5度から20度ぐらいの海の上で発生する台風は、徐々に北上して日本に近づいて来るわけですよね。台風に“目がある”というじゃないですか。

はい。


大村正樹

よく気象衛星ひまわりの画像で、目が見えますよね。

見えます。


大村正樹

あの目の中に入るとどうなるんですか?

あの目の中は、雲がなくて風も非常に穏やかな状況ですね。


大村正樹

へぇ〜。目の中に入ったことはありますか?

ないですねぇ(笑)。


大村正樹

よくいいますよね、小説の中でも「急にぱたりと風がやんで…」なんて書いてありますけど、本当にそうなるのかなと思って。

アメリカでは気象観測用の飛行機を使って、実際“目”の中に突っ込んで観測する飛行機観測が行われています。実際そこで得られる観測データを見ても、台風の中心に行くとぱたりと風速が弱くなるのがデータとして、きちんと得られています。


大村正樹

今の話って、すごくデンジャラスな冒険ですね。

はい。


大村正樹

台風の目をめざして、パイロットの方が飛行機を操縦するんですね。

そうです。


大村正樹

その目の中に入ったら、そこには何もないというか。

そう、雲がなくて…。


大村正樹

不思議だ!

目のちょっと外側には非常に背の高い雲があって、壁雲と呼ぶんです。壁は、いわゆる部屋の壁。


大村正樹

はい。

それは台風の目から見ると、壁のようにそびえ立つ雲として見えることから壁雲、英語ではeyewall(アイ・ウォール)。アイが目で、ウォールが壁です。目の壁雲というふうに、そびえ立つ雲が見える。


大村正樹

へぇ〜。台風は海の上を北上しながら育って、よく上陸すると勢力がおとろえるというじゃないですか。あれはどういう意味ですか?

それは台風のエネルギー源が水蒸気に関係しているためで、海から供給される水蒸気がエネルギー源となって、ああいった強い風が持続するんですね。


大村正樹

海の上の水蒸気が巻き上げられているんですか?

そうすることによって水蒸気が水に変化するんです。


大村正樹

はい。

その水蒸気が水に変化する時に、大量の熱を放出する。その熱が台風を維持するメカニズムになっているんです。


大村正樹

ほぉ〜。上空で?

そうです。


大村正樹

渦を巻きながら北上して来るわけですね。

陸地に上がると海からの水蒸気の供給がピタリと止まってしまうので、その勢力を維持できなくなって衰弱していく。


大村正樹

今、どのキッズたちも意識していると思うんですが、地球の温暖化が問題になっているじゃないですか。

はい。


大村正樹

東京も今年暑かったですよ。それは地球の温暖化じゃないかという話があって、そうなると「東京のすぐ南の海で台風が発生してもおかしくないんじゃないの?」と。そういう時代は来ないですかねぇ。

来る可能性があるとは思いますね。


大村正樹

あっ、そうなんですか。南の海上じゃなくて、小笠原あたりで誕生する台風もあるかもしれないということですか?

現在でもそういった台風は存在しますし、今後、地球温暖化でその場所の海面水温が上がれば台風が増えることも可能性としてはあると思います。


大村正樹

えっ、地球の温暖化で海の温度が上がるイコール台風がやはり発生しやすい環境になるということでしょうか?

そうですね。海面水温が高いということは、台風の発生には好条件となっています。ただそれだけではなくて他にも色々な要素があって、実際地球温暖化が世界でも問題になっていて様々な研究者がこの問題に取り組んでいるんです。研究を始める前は誰しも温暖化すると台風の数も増えて勢力の強い台風も多くなると予想していたんですが、いざフタを開けてみると、台風の数自体は温暖化すると減って、だけれども勢力の強い台風は増えるというような研究結果が出てきたんですね。


大村正樹

ほぉ〜。海上の水蒸気を吸収しながら勢力を保ち北上する台風が、温暖化によって生まれやすいということでしょうか?

そうですね。


大村正樹

それは怖い話ですね。だってちっちゃい台風をいくつかやり過ごすほうが、僕らの生活には楽だと思うんですよね。

そうですね。


大村正樹

一年に数回のすごく大きな台風に対応する暮らしのほうが怖いですよね。

もちろんですねぇ。


大村正樹

家が飛ばされたら大変だし。でも台風は昔からあったわけじゃないですか。9月で、伊勢湾台風から何年というのがこの間ニュースになってましたけれど、5千人以上亡くなった台風の時代もあったわけですね。

そうです。1959年に発生した伊勢湾台風だと、死者行方不明者合わせて5千人を超える犠牲者が出てます。


大村正樹

今は台風に関して気象衛星の映像などで発達してますよね。自然現象の中では、地震よりも台風のほうが僕らだって警戒できますよね。

予測がある程度可能な現象ではありますね。


大村正樹

今後、僕ら人間は台風とどうやってつき合っていけばいいですかねぇ。

われわれ気象庁も台風の発生や移動とか、どのくらいまで発達するのか、また地球温暖化するとどうして台風が増えるのかというような研究をしていますので、できるだけ社会に貢献できるような形でアピールして、新しい情報に基づいて対策を講じられるようにしていきたいと思ってます。


大村正樹

天気予報で台風が生まれると予報円とか進路が出ますよね。あれ、だいたいその通りになるじゃないですか。

ありがとうございます。


大村正樹

あれは、山口さんたちの研究の成果とみていいわけですよね。

そうですね。ありがとうございます。


大村正樹

あれを見てると地震に比べ、はるかに僕らどうすればいいかわかりますもの。これからも本当に私たちの暮らしを守ってくださいね。

はい、頑張ります(笑)。


大村正樹

よろしくお願いします。今週のサイコーは、気象庁気象研究所の山口宗彦さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

もう10月も下旬で台風が終わったと言ったら実は大間違いで、結構南の海上では寒い時季も台風は発生しているそうです。ただ日本に来る前に、勢力そのものが台風じゃなくなるということなんですねぇ。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!