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「陸上競技を100倍たのしく見る」(1)
コーチャー/柄川昭彦(えがわあきひこ)さん(ライター)
大村正樹&柄川昭彦

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ4年に一度の夏、もうすぐロンドンオリンピックが始まりますよ〜。夏休みの前半はオリンピックに釘付けのキッズもいっぱいいるんじゃないかなぁ。大村さんは、やっぱりサッカーね。勝ちあがれば大会期間中ずっと楽しめるので、サッカーは楽しみにしてるんですが、今年の大会は何といっても陸上競技。ということで、この陸上競技を100倍楽しく見るためのサイコーがお知らせの後、登場します。


大村正樹

今週のサイコーは、ライターの柄川昭彦さんです。こんにちは。

こんにちは、よろしくお願いいたします。


大村正樹

お願いします。柄川さんは主にスポーツと医療の分野で文章をいろいろ書かれていらっしゃいます。水城昭彦(みずきあきひこ)さんというペンネームで、技術評論社から『金メダリストは知っていた!』という本も出版されてます。いよいよ来週ですねぇ、ロンドンオリンピック! ワクワクしてますか?

そうですねぇ。いろんな種目がありますけれど、私の大好きな陸上競技、今年もたくさん日本から選手が行きますし、世界のトップアスリートたちの活躍も楽しみですね。


大村正樹

そうですよね。陸上男子は、オリンピック終盤ですね。ジャマイカのウサイン・ボルトですよ!「世界に敵なし」といわれていたんですが、ここへ来てジャマイカの大会で…。

負けちゃいましたね。


大村正樹

ですよね! あれはどういう状況と見てよろしいですか?

スタートがすごく出遅れて、ジャマイカのほかの選手たちもすごく強くて世界トップレベルですから追いつかなかったということですね。


大村正樹

はい。

スタートダッシュが何で遅れちゃったかというところがポイントだと思います。ボルト選手ってすごく背が高いですよね。


大村正樹

大きい。どれぐらいあるんですか?

発表されている数字では身長が195センチ、体重が94キロですね。


大村正樹

体重もけっこうあるんですね。

そうですね。94キロですから、普通の大人で考えたら大変な数字です。一方、日本で今一番速い江里口匡史(えりぐちまさし)選手の100メートルベストタイムは10秒07ですが、身長が170センチしかありません。


大村正樹

ええ。

でも体重は61キロなんですね。筋力の勝負になるとボルト選手のほうが強そうですが、実は体重当たりの筋力は江里口選手が上ですから。


大村正樹

じゃあ、日本人も場合によってスプリント競技でメダルをとるのも十分夢じゃないということですね。

身長はすごく小さいのですが、少なくともスタートダッシュ、パワーが必要な部分に関していえば、小さい選手のほうがひょっとすると得なんですね。


大村正樹

ほぉ〜。あとは持続できるかどうか…。

そうですね。ですから江里口選手とボルト選手が予選とか準決勝で一緒に走ることがあるかもしれません。そうするとたぶん30メートルぐらいまでは、むしろ体重当たりの筋力が強い江里口選手が速い可能性もありますね。


大村正樹

なるほどねぇ。江里口選手、ちなみにベストタイムが10秒07。ウサイン・ボルト9.58−100メートルでおよそ0.5秒の差がありますけれど。

これはやっぱりトップスピードに乗ってからの1歩の大きさとか、もちろん体を動かす速さ、いろんな差が出てくるんでしょうね。


大村正樹

やっぱり身長が高い選手がトップスピードに乗ると有利になってくるんですか?

そうですね。


大村正樹

悩ましいですねぇ。

フフフフ。


大村正樹

いやぁ、頑張ってもらいたいですね。何といってもわが日本は4年前、リレーで銅メダルをとりましたからね。

そうですね。ですから体型的にボルト選手のような体を見ちゃうと勝てそうもない感じがしますが、必ずしもそんな単純なものではないですね。


大村正樹

なるほど。一方、マラソンですよ。

はい。


大村正樹

かつては日本のお家芸と言われ男子も女子も一時代を築きましたけれど、今年出る6選手は全員初めてですよね。

そうですね。


大村正樹

経験者なし。

はい。


大村正樹

オリンピック初出場だけの6人というのは前代未聞じゃないですか?

確かにそうですね。ちょうど世代交代が進んで、新しい選手が出てきたということでしょうかね。ただマラソンは今、アフリカのケニアやエチオピアの選手たちとの実力差が以前に比べると大きくなっちゃってる。


大村正樹

昔から日本人、アジア人は心臓が強いから長距離がいいんだ、強いんだと…。

実際、マラソンは強かったですよね。


大村正樹

何で急にアフリカ人が台頭してきたんですか?

その頃に比べると、アフリカ選手がまだあまりマラソンをやってなかった。


大村正樹

あぁ、そこか。いわゆる発展途上だったんですね。

そうですね。みんなマラソンをやるようになって、マラソンが強くなっちゃった。


大村正樹

そうかぁ。

最近、日本の選手とアフリカの選手たちの走り方がちょっと違うんじゃないかということがわかってきてるんです。


大村正樹

へぇ〜。

私たちが走る時には、とかくカカトから着地することが多いですね。


街で売られているジョギングシューズはカカトに柔らかい衝撃吸収剤が入っていて、カカトから走るためのシューズが売られている。ところがアフリカの選手たちは、走る時にどうやらつま先のほうから着地してるらしいんですね。


大村正樹

えっ、じゃあダッシュ用の走り方ですか?

そんな感じしますね。どうしてアフリカの選手がつま先から着地するかというと、子どもの頃に裸足で走ってた経験が大きいらしいんです。


大村正樹

へぇ〜。

カカトに衝撃吸収剤がついてなくて裸足で走るとなると、カカトからだと衝撃が大きいんですね。


大村正樹

確かに。

アスファルトの上を裸足のカカトで着地して走ることを考えたら、ちょっとズシンズシンときそうですね。ところがつま先からつくと足のアーチが衝撃を吸収したり、足首の動きで衝撃を吸収できる。裸足で普通に走っていると、だいたいつま先着地になるらしいです。


大村正樹

ほぉ〜。

それがアフリカの選手たちは普通に身についていて、つま先から着地する走り方がどうやらエネルギーを無駄に使わずに走れるいい走り方じゃないかということが最近いわれてるんです。


大村正樹

ちょっとみんなもやってみて!

フッフフ。


大村正樹

どう?ダッシュじゃなくマラソンの走り方で、つま先から着地することを繰り返す。

なわとびの上手な人がやると、ほとんど足首とかひざを曲げない。例えば、ボクサーがなわとびをする時はジャンプを繰り返しますね。


大村正樹

ほぉ〜!

あの時はつま先着地です。


大村正樹

なるほど。

つま先からついてカカトがおりてくる間にアキレス腱が伸ばされて、そのアキレス腱がビョンと戻る時に次のジャンプをする。つまり自分の体が引力に引っぱられて、地面に落ちて来る時のエネルギーを使ってアキレス腱を伸ばして、そのアキレス腱が縮む時に次のジャンプをしちゃう。


大村正樹

ほぉ〜。

ですから筋力を使わなくても、自分の体が地面に落ちる力を使って次のジャンプを生み出す。バネでビョンビョンとはねているような感じですね。


大村正樹

ちょっとイメージがわかってきました。ダチョウみたいな感じですね。

カンガルーですね。


大村正樹

カンガルーか。

カンガルーがビョンビョンとはねている。どうやらカンガルーのアキレス腱はすごく太くて頑丈らしいです。


大村正樹

ほぉ〜。

カンガルーの体が地面に落ちていく時に伸ばされて、それが縮む時に次のジャンプを生み出すんですね。ですから自分が落ちれば、次のジャンプができる。筋肉でエネルギーを使わなくてもジャンプができていく。だから疲れずに速く走れちゃう。


大村正樹

わかりました。柄川さん、もうこんな時間です。来週はいよいよ開幕してますので、またお話をうかがわせてください。

はい。


大村正樹

今日のサイコーは、ライターの柄川昭彦さんでした。ありがとうございました。

どうもありがとうございました。


大村正樹

いやぁそうですか、マラソンの走り方。カンガルー走り、これがポイントなんですね。欽ちゃん走りで走ってみようかなぁ。疲れちゃうなぁ。でも楽しみですね。1週間後に開会してますけれど、その前にはサッカーの試合も始まってます。ぜひオリンピック、日本、日の丸を背負って戦う人たちをみんなで応援しましょう!それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。来週はみなさん、間違いなく夏休みだねっ、じゃあね!