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「宇宙ヨット『イカロス』」(2)
コーチャー/森 治(もりおさむ)さん(JAXA)
大村正樹&森 治

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も宇宙ヨット「イカロス」を取り上げます。「イカロス」、みんなホームページで調べてみた? 四角い形でお正月の凧揚げの凧みたいなイメージで、キラキラしてとってもきれいな日本の宇宙ヨットが今、宇宙にあるんです。太陽の光の圧力で動いているということなんですねぇ。この「イカロス」は世界初で、日本発の技術です。この技術は将来どういうことに役立つんでしょうか? お知らせの後、サイコーに聞いてみます。


大村正樹

今週のサイコーもJAXAの宇宙ヨットの開発者、森治さんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。


大村正樹

森さんは、一昨年飛び立って今、宇宙をゆうゆうと泳いでいる宇宙ヨット「イカロス」のプロジェクトリーダーをされてらっしゃいます。かなり興味深い日本製のすごく薄い膜の帆を貼ったヨットが宇宙空間にあるという話ですが、「イカロス」はかれこれ2年近くですよね。

はい。


大村正樹

宇宙で何をしてるんですか?

まず「イカロス」の目的は、世界で初めて宇宙ヨットを実証することでした。



太陽の力で推進する宇宙ヨット「イカロス」
「©JAXA」
大村正樹

ほぉ〜、実証ね。

はい。打ち上げた後、最初に行なったのが帆の展開です。厚さが7.5ミクロン、一辺が14メートルの正方形のセイルをスピンの遠心力を使って宇宙空間で無事広げました。



「イカロス」の全景。セイル膜は本体に巻き付けられている
「©JAXA」
大村正樹

はい。

そのセイルの展開後には、太陽光を受けて理論通り加速することを確認しました。さらにセイルの向きを傾けて進行方向を変え、目標となる軌道を通ること。それを測距によってきちんと評価することといった一連の宇宙ヨットの航行技術を獲得したということで、いずれも世界初の快挙となっています。


大村正樹

先週話してましたが、ほかの国も100年ぐらい前から構想はあったけれどなかなかなし得なかった。それをJAXAがやったということですね。

そうですね。


大村正樹

ほかに何か役に立つことをやっているんでしょうか?

実は「イカロス」のセイルには、薄い膜の太陽電池も貼りつけられているんです。


大村正樹

へぇ〜。

そうすると太陽の光を受けて進むだけではなくて、太陽光発電もできます。


大村正樹

ほぉ〜。

通常の宇宙機は太陽電池パネルを広げて発電するんですが、「イカロス」はせっかく大きなセイルを広げるので、その一部に薄い太陽電池を貼りつけておけば電力も困らず得られるという発想ですね。


大村正樹

えぇ〜?

宇宙ヨット、ソーラーセイルのアイデアは昔からありました。ただし発電も同時に行なうというアイデア、これは日本オリジナルなんです。


大村正樹

その発電は何にいかされているんですか?

宇宙機はすべて電力が必要です。例えばヒーターをたいたりしますし、通信を行ったりコンピュータを動かすのも全部電気が必要ですから、そういった宇宙機を動かすために使われています。


大村正樹

そうか。地球上に様々なデータを送ってくれてるのは太陽光の発電で、太陽電池から発電して来てるという。

そうです。その二つを同時に、太陽の光を使って加速するのと発電の両方をやるということで、われわれは宇宙ヨット−ソーラーセイルというんですが、それだけではなくてソーラー電力セイルと呼んでいるんです。


大村正樹

じゃあ、いわゆる自然エネルギーだけで推進し運航してるということですね。

そうですね。


大村正樹

へぇ〜。日本が初めて成功しているという宇宙ヨットは、将来の惑星の探査計画、宇宙開発にどういう影響を与えそうですか?

遠くに行くことが容易になると考えています。


大村正樹

例えば、どういう「遠く」ですか?

例えば、木星。さらにその先の…。


大村正樹

ジュピターだ。

はい。遠くに行こうとすると二つ問題が出てきます。一つは燃料の問題。


大村正樹

ええ。

もう一つは太陽から離れてくるため発電効率が落ちてしまうので、電力の問題がやってきます。大きな帆を広げて薄い膜の太陽電池で発電すると両方の問題がいっぺんに解決できるということで、われわれの次の計画では10倍のセイルを広げて木星、さらにその先にあるトロヤ群小惑星というところに行きたいと考えています。


大村正樹

トロヤ群小惑星というのは、木星の近くにある?

もっと先にある惑星ですね。


大村正樹

日本の宇宙技術は、まだそこまで到達してないですよね。

世界で誰もトロヤ群小惑星には行ったことがないです。


大村正樹

木星までは?

木星はあります。アメリカやヨーロッパも行ってますが、ただ一番の違いは、アメリカなどは大きなロケットを使って普通のガスジェット、燃料をたくさん使う。あとは大きな太陽電池を広げていくんですね。そうするとお金がかかってしまう。


大村正樹

はい。

でも日本は、ものすごくエコなやり方で効率よく惑星にも行けるというところが一番の売りです。


大村正樹

へぇ〜。

それで木星だけでなくトロヤ群小惑星もまとめて行けるのは、まさにソーラー電力セイルのしかけがあるからこそと思っております。


大村正樹

お話をうかがって、ものすごく薄い髪の毛の4分の1程度の厚さの太陽電池の技術は驚きで、僕らの日常の中で使い道があるような気がするんですけどねぇ。

そうですねぇ。これは軽いので、大量につくる技術が今できてきています。こういったことができるようになりますと、広く普及します。そうすると環境問題や商業利用ができるということでいろんな可能性があると思います。


大村正樹

去年から僕たちは、電力エネルギーの供給に対してものすごく敏感になってるじゃないですか。新しいエネルギーにどういうものがあるかという話の中で、太陽光は大いに期待できますよね。

そうですね。


大村正樹

この太陽電池、例えば傘のような形とか屋根に貼りつけるとか…。

例えば、ランドセルに貼りつけて登校する時に発電ができるかもしれないですね。


大村正樹

学校の校舎の上につけてもいいし、キャンプに行ってテントにつけるとかテントの中のランタン代わりにするとか、いかようにもなりますよねぇ。

そうですねぇ。


大村正樹

いやぁ、夢はふくらみますね。

フフフ。


大村正樹

この「イカロス」を立ち上げて無事に成功されて、2020年木星の先のトロヤ群小惑星まで行くという計画が目標ですよね。

はい、そうです。


大村正樹

壮大な夢がありますけれど、子どもの頃からやっぱり宇宙は好きだったんですか?

宇宙というよりは、自然全般に興味がありました。


大村正樹

へぇ〜。

宇宙の道に進みたいと思ったきっかけは、実は高校の時です。テレビでアメリカの惑星探査機「ボイジャー」を知ったことです。


大村正樹

はい。

ちょうどその頃に「ボイジャー2号」が海王星を通過して太陽系を離れていくということで、関係者が集まってパーティのようなものをやってました。その様子を見て「ボイジャー計画はすごいなぁ!」と思ったのと同時に、こんなに大勢の人が惑星探査ミッションに関わっていることを感動して「自分もその一人になりたいなぁ!」と思ったのがきっかけです。


大村正樹

ふ〜ん。

それ以降、宇宙の仕事につくことを目標にして、たくさんの挫折もありましたけれども最終的にJAXAに入ることができました。実は初めての仕事が、小惑星探査機「はやぶさ」の運用だったんですね。


大村正樹

ええ。

「はやぶさ」に指令を送るために管制室に入ったんですが、とても感動しました。


大村正樹

へぇ〜。ちなみに高校時代に見た「ボイジャー」のパーティの様子と、JAXAに入って宇宙ヨットが帆を広げた画像が入ってきた時とどちらが上でした?

もうそれは宇宙ヨットです!


大村正樹

おめでとうございます(笑)。

実際に自分がやれたからですね。


大村正樹

ですよねぇ! そうかぁ、高校時代の夢が今につながって、そして10年以上先にきっと木星の先まで行くわけですよねぇ。

はい、そうです。


大村正樹

ぜひまたその時に、この番組それまでやってますので来てください。

ありがとうございます。


大村正樹

よろしくお願いします。今週のサイコーは、JAXAの森治さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

最後は自然エネルギーの話になったけど、ほんとに膜のような太陽電池−宇宙ヨットが教えてくれる新しい電池の方式で勉強になりました。ということで、来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!