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「話題の飛行機」(2)
コーチャー/秋本俊二さん(航空ジャーナリスト)
大村正樹&秋本俊二

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も今話題の旅客機、ボーイング787を取り上げます。先週お伝えしたんですが、787は写真で見るだけではわかりません。鉄じゃないのね、カーボンでできている。新しい素材で見た目がわからない。でも、これが本当に飛行機の革命的な動きになるということなんですね。そのスゴサに関してお知らせの後、サイコーにたっぷり聞いていきま〜す。

飛行機

大村正樹

今週のサイコーも前回に続きまして、航空ジャーナリストの秋本俊二さんです。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

秋本さんは、サイエンス・アイ新書から『ボーイング787まるごと解説』という本を出してらっしゃいます。写真と図解で非常にわかりやすい。

ありがとうございます。


大村正樹

飛行機のことが何でもわかっちゃう本ですが、本当に羽田空港をボーイング787−新世代の旅客機といわれる飛行機が去年就航して話題になってます。

はい。


大村正樹

とにかく“スグレモノ”である。しかもカーボン素材。「軽量化がはかられていて、より遠くへ長い距離飛べる飛行機ですよ」。さらに「快適ですよ!」という話を先週うかがいました。「航空会社としてもいろいろメリットがありますよ」ということで終わったんですよね。

はい。


大村正樹

全日空が55機、JALもすでに何機か発注してこの春から就航ということです。航空会社としてみると、どういうメリットがあるんですか?

まず、これは長距離が飛べるんですね。「燃費が20パーセントよくなった」といいましたが、より遠くへ飛べるんですよ。


大村正樹

今、遠いのはブラジルあたりですか?

そうです。この飛行機は、長く飛べば飛ぶほどメリットが発揮される飛行機なんですね。


大村正樹

はい。

今まで長距離といっても、例えば東京からパリ、ロンドンとかニューヨークへは直行便が就航できたんですね。でも、それ以外の「ヨーロッパのベルギーに行きたい」とか「松坂選手を見にアメリカのボストンに行きたい」という場合に、どうしても大きな都市で乗り換えなくちゃいけなかった。なぜかというとお客さんはいても、それだけたくさんのお客さんではない。


大村正樹

ええ。

長距離を飛ばすためには、燃料をたくさん積まなくちゃいけない。ジャンボ機みたいな大きな飛行機で、燃料をたくさん積んで飛ばさなくちゃ無理だったんですよ。


大村正樹

つまり飛行機の機材の大きさは、燃料タンクと比例してたわけですね。

そうなんですよ。ジャンボ機は400人乗れるでしょ。


大村正樹

はい。

そうすると、400人常にうまる路線にしか直行便は出せなかったんですね。


大村正樹

ええ。

400人乗れるのに200人しか乗らなかったら、実は燃料代とか変わらないのでマイナス、赤字になるんですよ。


大村正樹

だからここ数年、エコノミークラスが正規料金だけどべら棒に安いんですよね。

そうです。やっぱりうめなくちゃダメなんですね。


大村正樹

なるほど。

でも、この787は運行コストを極端に下げられる飛行機で、例えばANAの新しい国際線をビジネスクラス中心にすると150〜160席で飛ばすんですね。


大村正樹

はい。

でも、そのぐらいの人数でも全然損しないんですよ。


大村正樹

ふ〜ん。

だから、今まで直接行きたかったところにどんどん飛ばし始めるので、乗客にとってもダイレクトに世界中いろんなところに行ける時代が来るんですね。


大村正樹

例えばシカゴとかデトロイトとか需要がある路線は500人いなくても、100人ぐらいからでも787だったら航空会社の利益が十分出るということですね。

そうです。


大村正樹

へぇ〜。

だから楽しいですよ、これから。エアラインビジネスがちょっと変わりますよね。


大村正樹

先週もうかがいました羽田を離発着する787は、岡山線や広島線とか一部の国内線でめぐり合わせによっては出会うことができます。

はい。


大村正樹

航空時刻表には、787とちゃんと書いてありますよね。

書いてあります。


大村正樹

乗りたい人は、ぜひ乗ってみるといいと思います。今、航空会社は事前の割引も充実しているので、結構ひと昔前より安く旅行ができますよね。

そうですね。


大村正樹

この787、「乗ってみるといろんなメリットがありますよ」というお話でした。その中に、耳が痛くなりにくいという。これは本当ですか?

そうなんですよ。すばらしいでしょ。


大村正樹

ええ。

高速エレベーターで高い展望台へ行くと痛くなるじゃないですか。


大村正樹

都庁のエレベーターへ乗ってもなりますよ。

あれはなぜかというと気圧の差が生じるからであって、例えば飛行機の高度1万メートル上空はだいたい外の気圧が0.25ぐらいなんですよ。


大村正樹

はい。

地上が1なんですね。


大村正樹

4分の1ということですか?

ええ。地上の1気圧をわれわれが全然感じないのは、体の内側から体を1気圧で押す力が働いているので均衡がとれてるんですね。だから全然感じない。


大村正樹

はい。

例えば1万メートル上空へ行くと、本当は機内の気圧も1気圧にできればいいんだけど1気圧はものすごい力なので、それをやると飛行機がふくれ上がって破裂しちゃう。構造上それができないので、だいたい高度で言うと2,400メートルぐらい、気圧でいうと0.8気圧ぐらいが限度なんです。限度だったんです。


大村正樹

はい。

その0.2はけっこう大きな差で自分の周りは0.8気圧、でも内側からは1気圧で押す力がかかっているので、体から空気が逃げようとして一番敏感な鼓膜が揺れるんです。


大村正樹

ふんふん。

それで痛くなるんです。それはもうしょうがなかったんですが、このカーボンファイバーの複合材でつくった787はやっぱり強度が鉄より全然強いので、もっと気圧を高められる。


大村正樹

はい。

高度でいうと地上1,800メートルぐらい、そのぶん0.8から0.9ぐらいに上がって、高度1,800メートルに行くと普通の人はあまり気圧差を感じないですむという高度なんです。だから、実際に離陸着陸を経験しましたけれど、ほんと耳が痛くならないんですよ。


大村正樹

ほぉ〜、いいですねぇ。

快適ですね。


大村正樹

あのね、気圧に関して、これから春休みのシーズンになって飛行機に乗る機会があったら、赤ちゃんの泣き方ってやっぱり耳にクルと思うんですよ。

そうなんです、そうなんです。


大村正樹

耳の気圧の変化で赤ちゃんって泣いちゃうじゃないですか。

だって、かわいそうですよね。


大村正樹

そう。

キャビンアテンダントがあやしたりするんですが、あやす問題ではなくて痛いから訴えている。誰も耳抜きとかできないでしょ。誰も助けられないんですよ。


大村正樹

親の立場としても、立場ないんですよ。周りの人に「ごめんなさい」というしか。回りの人も白い目で見るし…。

親もかわいそうですよね。


大村正樹

こういうのが軽減されるのは、かなり画期的な気がします。

それともう一個大きいのは、湿度が保てるんですね。


大村正樹

へぇ〜。

今まで長距離路線に乗ると、機内がカラカラになるんですよ。


大村正樹

そうそう。

必ずのどを痛めたり、もっというと客室乗務員の女の人は肌がカサカサになって化粧のノリが悪くなって大変だったんですね。


大村正樹

はい。

なぜ乾燥してたかというと、鉄でできていたので湿気があると水滴がたまる。それがサビにつながって見えない部分から金属疲労を起こして事故につながるんですね。


大村正樹

はい。

それがこわいので、機内に送り込む空気をわざと水分の除去装置を通してから送ってたんですよ。しょうがなかったんですね。


大村正樹

ええ。

でも、今回はいわばプラスチックでできているので錆びないんですよ。


大村正樹

ほぉ〜。

だから湿度を送れる。


大村正樹

湿気OKということですね。

僕が取材で乗った時に、それを疑った新聞記者が湿度計を持ち込んできた。だいたい普通の飛行機の機内って10パーいかないけれど、もう25〜26パーセントをずっと保ってましたね。


大村正樹

へぇ〜。

のどにもやさしいですし、いいでしょ。聞くだけで乗ってみたいと思うじゃないですか。特に長距離路線がいいですよね。


大村正樹

ひと昔前は国際線だと鼻マスクを貸してくれた。ハニカムマスクというのがありましたしねぇ。じゃあ、そういうのも含めて体にもやさしくて燃費もよければ、ある意味“地球にもやさしい”といえるかもしれませんよねぇ。

そうですね。


大村正樹

僕は今、札幌から通ってるんですが、札幌便には就航しないですか?

「札幌便に就航しましょう」ってANAにここで頼んだらどうですか?(笑)


大村正樹

そうですか(笑)。

札幌線ってやっぱりお客さんが多いんですよ。ドル箱で、大きな飛行機でOKなんですね。


大村正樹

あぁ、なるほど。

そうなんです。だから、なかなか難しいかもしれないですね。


大村正樹

はい。この前、雪祭りの時はジャンボ機が久しぶりにお目見えしてました。

そうですか。ジャンボ機でもいっぱいになりますからね。


大村正樹

混んでました。お時間ですね。今週のサイコーは、航空ジャーナリストの秋本俊二さんでした。また来てください。ありがとうございました。

はい、ぜひ! ありがとうございました。


大村正樹

それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。じゃあね!