過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「スペースシャトル秘話」(2)
コーチャー/長谷川洋一さん(有人宇宙システム)
大村正樹&長谷川洋一

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回もスペースシャトルを取り上げます。7月に30年の歴史に幕をおろしたスペースシャトル。みんなも模型やニュース、図鑑や本などで必ず目にしたことがある、アメリカの宇宙開発に非常に重要な役割を担ったスペースシャトルだけど、先週の復習だよ。スペースシャトルというのは発射台の燃料タンク、オレンジ色のあのタンクも含めてのもので、飛行機の形をした人が乗っている部分はオービターというんです。あれはスペースシャトルじゃないという衝撃の事実が明らかになりまして、お知らせの後、今週もサイコーの登場です。


大村正樹

今週のサイコーも有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

シャトル退役記念ということで先週、長谷川さんから話をうかがいました。オバマ大統領が一昨年ぐらいですか、「これからアメリカの宇宙開発は火星だよ」と。日本の宇宙開発はどこなんですか?

日本はまだまだ予算もたくさんないためできるところから、そして他に負けないような技術をやっていこうとしています。でも、例えば「はやぶさ」なんか負けないですよね。


ですから「はやぶさ2」をやることになってますし、今、「こうのとり」という6トンも宇宙に運べる大きな宇宙輸送船があるんです。ただこれはまだ地球に戻って来れないので、ゆくゆくは予算を何とか取って帰って来れるような宇宙船をつくって、その次は当然、有人宇宙。こういったことに何十年かかけてじっくりやっていきたいというふうになってます。


大村正樹

そんな中でスペースシャトルが残した役割、功績は宇宙開発に非常に大きかったわけですよね。

あまりにも偉大ですね!


大村正樹

偉大。長谷川さんが印象に残っているシャトルのこれまでの歴史の中でいくつかを教えてください。

もう思い入れがたっぷりで、私がかかわったスペースシャトルとしては向井千秋さんが初めて宇宙に行った94年、メダカとか話題になりましたね。実は私はスペースシャトルの発射台のNASAの基地でメダカの水を換えたり、打ち上げ前のメダカさんたちのお世話をちょっと手伝ったことがあります。


大村正樹

現地に行ってですか?

そうです、そうです。


大村正樹

へぇ〜。

もう現地はてんやわんやの状態で、メダカについては素人だったんですが、「ちょっと長谷川君、手伝ってくれ」という話があって、「水換えぐらいでしたらやります」と(笑)。


大村正樹

いいじゃないですか。メダカの水換えのためだけに現地へ行って、日本人初の宇宙飛行士を見送ったという。

ハハハハ。ほかの仕事がちゃんとあったんですよ、もちろん(笑)。


大村正樹

はい(笑)。

ですから打ち上げを見た時に感動、もう涙点々で……。その打ち上げの音ですね。何が感動したか。確かに光と音のページェントという感じですが、一番印象に残ったのは音。−何というんでしょう、一番近い音は和太鼓。ドンドコ♪ドンドコ♪ドンドコ♪ドンドコ♪という感じで不規則なんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

ドンドコ♪ドンドコ♪という音がお腹にズシンズシンと響いてくる感じで、そういうのがスペースシャトルの打ち上げの一番ダイナミックなところですね。


大村正樹

体感した人にしかわからないけれど、すごく伝わりましたよ。いいなぁ!

それと2008年ですね。


大村正樹

3年前。

私どもがやっていた“花伝説”というプロジェクト。


大村正樹

あぁ、はい。

日本中のサクラの種などをスペースシャトルに乗せまして、打ち上げを見守っておりました。


大村正樹

はい。

夜だったんですよ。ちょうど月が上がってきて、シャトルが時間通り打ち上がったんですが、その時、あたりからペリカンが一斉に飛び立ったんですね。


大村正樹

ほぉ〜。

シャトルの音に驚いて、これももう壮大な光景でした。


大村正樹

サクラの種からの苗木は、あれから全国に飛んでったじゃないですか。どうなりましたか?

各地で芽を出して、もうかなり立派なサクラに育ってますよ。


大村正樹

関東の近郊だと、山梨の北杜市。

そうです、そうです。あとは福島の三春。ちょうど今、いろいろと被害を受けてますけれど、そこでも元気に育ってます。


大村正樹

宇宙に行ったサクラの種は、ちゃんと木になりつつあるということですね。

ええ、そうです。


大村正樹

楽しみですねぇ。若田光一さんでしたよね、持って行ってくださったのは。

そうです、若田さんです。


大村正樹

だってラボにもあの種が遊びに来ましたものね。

そうですね。触っちゃいましたかね(笑)。


大村正樹

そうですよ。そうかぁ、あとは?

そういったこともいろいろあったんですが、打ち上げが遅れることがスペースシャトルの有名なところで、また遅れまた遅れ、もうニュースにならないぐらい。今まで一番おかしかった、笑っちゃった打ち上げが遅れた理由が、何とキツツキさんです(笑)。


大村正樹

へぇ〜。

スペースシャトルは発射台にだいたい1ヶ月ぐらい前から立ってるんですが、ちょうどオレンジ色の大きな燃料タンクが実は断熱材で、発泡スチロールみたいなもので囲われていて柔らかいんですよ。


大村正樹

ええ。

そこにキツツキが巣をつくっちゃったことがありまして(笑)。


大村正樹

えぇっ! 断熱材に?

はい。掘りやすかったんでしょうね(笑)。それで打ち上げが延期になったことがありました。


大村正樹

国際ニュースになったんですか?

ちっちゃなニュースになりましたね(笑)。


大村正樹

へぇ〜。ウッドペッカーのしわざだって!?

はい。それ以降、発射台の周りにフクロウの模型が置かれたり(笑)、キツツキよけにいろんなかわいい工夫がなされてるんですよ。


大村正樹

けっこう、原子的なことがなされてたんですね。

ええ。でもあまり効果がなかったみたいで、2009年に若田さんが宇宙に行ったディスカバリーの時ですが、何と燃料タンクにコウモリがしがみついているのが発見されまして。


大村正樹

へぇ〜。

それが時遅し、発射した後に発見されたんですね。それでもうどうしようもなくて、そのコウモリさんにはしょうがないので、一緒に宇宙まで行っていただいたということもありました(笑)。


大村正樹

へぇ〜。コウモリのせいで支障はなかったわけですよね。

発射しちゃいましたから、止めるわけにいきませんから(笑)。きっとコウモリは世界で初めて宇宙を飛んだコウモリに。


大村正樹

いや、そこまで行ってないでしょう。無理ですよ。息絶えているでしょう。

若田さんはそのせいで“バットマン”と呼ばれているそうです(笑)。


大村正樹

そうですか、へぇ〜。宇宙開発というとアメリカとソ連、今のロシア、そして日本ももちろん参加してますよ。あとEU諸国も。最近、中国とかインドが来てるじゃないですか。

そうですねぇ。


大村正樹

だけど、この夏、中国では新幹線事故があったので……。どうですかねぇ、有人飛行は?

やる時はやりますからね、あの国は。


大村正樹

やっぱり宇宙開発的には脅威ですか?

脅威ですね。相当前からロシアに技術の人を派遣して、お金も十分払って輸入してます。ですから、元々はロシアのしっかりした技術ですので、中国はやる時はやると思いますね。


大村正樹

ふ〜ん。中国はすでに宇宙飛行士の方が行ってますものね。

はい。


大村正樹

だけど、まだ日本のほうがレベルは上ですよね?

当然、私はそう思ってます。


大村正樹

ですよね。インドや中国が来ても、まだまだ臆することなくどんどんどんどん日本の宇宙開発をやってほしいと思っているんですけれど。

うかうかしてると負けちゃいますんで。


大村正樹

ほんとですか?

もっともっとキッズのみんなも宇宙を目指して頑張っていただいて。


大村正樹

そのためには、長谷川さんのような宇宙の専門家はどうしていけばいいですか?

もっともっと語って、みんなに宇宙を好きになってもらって、そしていろんな才能を宇宙に集めたいと思います。


大村正樹

そうかぁ。

算数だけでなく、文化やスポーツ、芸術とか、いろんな人が集まってこそ総合力が出るんじゃないでしょうかねぇ。


大村正樹

なるほどねぇ。スペースシャトルは30年の歴史に幕をおろしましたけれど、今後シャトルは本当にゼロになってしまうわけですか?

そうですね、全くなくなります。


大村正樹

アメリカに2ヶ所発射台がありますね。あれはもう“お役御免” ですか?

この後、大きなロケットができれば使うことになります。元々アポロ、サターンンロケットの発射台ですので。


大村正樹

アポロの60年代の宇宙開発時代からずっと使っているわけですね。

ずっと使っているんですね。


大村正樹

じゃあ、かれこれ50年ぐらい?

そうですね。これからもずっと使っていこうという。


大村正樹

今後、アメリカの宇宙開発で近い将来、どういう発射があるんでしょうか?

やはり一番注目できるのは、民間のロケットですね。民間の宇宙ステーション往復機。早ければ今年、来年ぐらいには本格的に飛び出すと思います。


大村正樹

このご時世に誰がそれをやってくれるんですかねぇ。

もうアメリカにはそういう冒険心豊かな人たちがいっぱいいるんですね。


大村正樹

大丈夫ですか?

ええ、大丈夫だと思います。


大村正樹

そうですか。日本の企業で誰か宇宙開発をやってくれる人いますかねぇ。

どうでしょうか。


大村正樹

日立ハイテクさんにも、ぜひともやってもらいたい。

技術は十分だと思いますけれど。


大村正樹

ですよねぇ。宇宙に関する話は尽きないですね。すみません、もうこんな時間だ。また年内にもう1回来てくださいよ、長谷川さん。

はい、お願いします。


大村正樹

今週のサイコーも有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

大村さんの世代は『宇宙戦艦ヤマト』とか『銀河鉄道999』というアニメがあって、もう宇宙に行ける時代がすぐそこまで来てると思っていたけれど、いつの間にかおじさんになっちゃった(笑)。だから今ラジオを聴いているキッズが大人になる頃には、宇宙に気軽に行ける時代が来てもらいたいと切に願っています。それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。じゃあね。オービター!