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「スペースシャトル秘話」(1)
コーチャー/長谷川洋一さん(有人宇宙システム)
大村正樹&長谷川洋一

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、ニュースで知ってるキッズもいると思うんだけれど、2ヶ月前の7月にスペースシャトルの最後の打ち上げが行なわれて、引退しましたね。これ、大きなニュースだったんです。スペースシャトルはどんな乗物だったのか?今日は専門家の方を呼んであらためて見ていきたいと思います。お知らせの後、サイコーの登場です。


大村正樹

今週のサイコーは久しぶりにお越しいただきました、有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。しばらくでございます。

しばらくでございます。


大村正樹

長谷川さんといえば宇宙の専門家でいらっしゃいまして、2ヶ月ぐらい前にアメリカのスペースシャトルがついに退役というか“お役御免”になったニュースは、やっぱりせつなかったですか?

宇宙

もう……。たぶんキッズのみんなが、卒業式が終わって門を出て振り返った時みたいな……。何というか、万感迫るものがありました。


大村正樹

最初の打ち上げから今年で30年。

そうですねぇ。


大村正樹

調べてみたら135回の打ち上げで、日本人宇宙飛行士は7人乗ったことがある。

ええ。


大村正樹

そもそもスペースシャトルって、何でこんなものができたんですか?

これは、元はといえばアメリカと当時のソ連が宇宙開発の二強ということで競争してまして。


大村正樹

競争ね。

ええ。ソ連も同じようなことを考えていたんですが、結局宇宙に人が運ばれていろいろなことをやって、いろいろなことができたものを持って帰ってこれるような、どうしても宇宙に行って実験して帰ってくる宇宙機が欲しかったんです。


大村正樹

はい。

それでアメリカもソ連も結局同じような形に行き着いて、実は当時ソ連もスペースシャトルそっくりのものをつくってたんですよ。


大村正樹

へぇ〜、そうなんですか。スペースシャトルの形状ってアメリカ独自のものだという意識ですけれど、ソ連でもそういうものがあった?

もう全くそっくりのものができていて、とうとう予算やその他いろいろな理由で飛ばなかったんですけれど。


大村正樹

へぇ〜。でもソ連、今のロシアはソユーズというロケット、宇宙船というんですかね、あれを開発して、日本人の宇宙飛行士も今行っている。古川さんですよね?

古川さんです。


大村正樹

ソユーズで行きましたよね。

そうですね。


大村正樹

イメージは、シャトルはアメリカ、ソユーズはロシア、ソ連という。だけど、ロシア、ソ連もそれをまねた時期があったということ?

そうですね。まぁ競争ですからねぇ。


大村正樹

競争ということは、スペースシャトルのほうが優れているということですか?

アメリカのほうが先にやって、この難しいシステムを本当につくって実現しちゃったということで、この競争においてはアメリカが勝ちだったことになりますね。


大村正樹

スペースシャトルのすごいところを簡単にいうと、何がすごいんですか?

やっぱり、まずカッコいいですよね(笑)。


大村正樹

カッコいい! プラモデルにもなるし。

ロケットの形をしてないじゃないですか。新幹線に翼がはえたようなあの姿。−あっ、ちょっといいですか。「サイエンスキッズのみんなは正しく言葉をおぼえましょう!」ということで。


大村正樹

何ですか?

スペースシャトルとオービターというのがあるんですよ。


大村正樹

オービター?

はい。スペースシャトルという時は宇宙飛行機の形をしたオービター。あれがオービターですが、オービターに燃料タンクがついた状態。


大村正樹

オレンジ色のやつ?

そうです。オレンジと白ですね。オレンジ色の大きな燃料タンクが液体燃料のタンクで、その両側にある白い細いロケットのようなものが補助ロケットブースター。固体ロケットですね。これを全部組み合わせてスペースシャトルといいます。


大村正樹

はい。

ですから打ち上げて分離しますと、宇宙ステーションに着いたような状態では、もう宇宙飛行機のような状態ですね。これをオービターといいます。


大村正樹

えぇ〜、何それ!? ちょっと待って。僕らがイメージしてるのは、スペースシャトルといってるのはオービターのことで、打ち上げ前の発射台にあるオレンジの筒とか白い筒をひっくるめてスペースシャトル?

全部まとめてスペースシャトルですね。


大村正樹

戻ってくる時は、オービターだけが戻ってきてる。

はい。


大村正樹

知らなかったよ(笑)。

業界の人もまちがえてシャトル、シャトルといってますから。サイエンスキッズは、正しくオービターと使いましょう。では、シャトルはどこがすごいか。−そのオービターがカッコいいですよね。


大村正樹

カッコいい!

そして、その背中をカーゴベイというんですが。


大村正樹

カーゴベイ?

カーゴって荷物のことですよね。


大村正樹

格納庫がついている、開くところですね。カーゴベイ。

その背中のところがガチャンと開いて、それから『サンダーバード』みたいに荷物が取り出される。


大村正樹

はい。

そして宇宙で人工衛星をつかまえて、その背中に積み込んでガチャンと閉めて帰ってくることができる。これはもう世界でスペースシャトルしかできない芸当ですね。


大村正樹

へぇ〜。そもそもその芸当をやる必要は、ソ連は必要ないと思ったわけでしょ? だけどアメリカは必要があると思ってやった。何のために?

例えば、ハッブル宇宙望遠鏡はみんな知ってますよね。


大村正樹

はい。

あの宇宙望遠鏡が今までずっときれいな画を届けられたのは、修理したからなんですね。


大村正樹

ええ。

修理できなかったら、もう1回つくらなければいけなかった。すごくお金もかかった。でもスペースシャトルがあれば宇宙望遠鏡まで行って、そしていろいろな修理ができたんですね。これによってハッブル宇宙望遠鏡はとっくの昔に終わっていたはずですが、今の今まで動いてくることができました。こういうふうに、やっぱり意味があるんですね。宇宙でいろいろなものをつくったり、続けていくためには意味があったんです。


大村正樹

ふ〜ん。でもシャトルはまだカッコいいしきれいだし、30年とはいえ新しいものをつくっていけばいいわけで、何でやめちゃったんですか?

やっぱり一番大きいのは設計が古くて老朽化もありますけれど、もうひとつ予算がかかり過ぎた。


大村正樹

お金かぁ。

例えば、今現在ですとスペースシャトルを1回打ち上げるのにだいたい1000億から2000億ぐらいかかるといわれている。


大村正樹

想像つかないですよねぇ。

日本だったらちょっと無理ですね。日本の宇宙予算がだいたい2000億ですから。


大村正樹

年間の?

はい。それだけで全部終わっちゃうぐらいの。


大村正樹

2000億あったら何ができるんだろう?

ハッハハハハ。


大村正樹

2000億ってよくわからないですけど、1回飛ばすのにとにかく莫大なお金がかかるということですね。

はい。


大村正樹

1回飛ばすことによってメリットもあるから飛ばし続けたわけですよね?

そうですね。例えば宇宙ステーションをつくったのは、ほとんどスペースシャトルですね。サッカー場ぐらいの巨大な宇宙船を宇宙につくるためには、何十回とスペースシャトルでたくさんの荷物を運んでいった。


大村正樹

ええ。

それから人が行ったり来たり、スペースシャトルは8人まで最大乗れますから、多くの宇宙飛行士が宇宙へ行って、そこでハイタッチ交代してまた帰ってくることができる。ソユーズは3人しか乗れません。


大村正樹

人がいっぱい乗れるんですか?

はい。


大村正樹

ロシアのは3人しか乗れないけど、シャトルは7人?

ええ。しかも乗り心地がいいらしくて。


大村正樹

ほぉ〜。

ロシアが悪いわけではないですが、ロシアのソユーズはいってみればエコノミーシートみたいな狭いところで頑張って3人乗っていく。スペースシャトルはビジネスクラスといわれてます(笑)。


大村正樹

へぇ〜、そうなんですか。

でも、シャトルとソユーズの乗り心地比べというのがありまして、両方乗った宇宙飛行士のNASAのリロイ・チャオ船長の話を聞いたんですけれど、ソユーズのほうが液体ロケット、つまり灯油に火をつけて飛んでいくんですね。ですから、打ち上げの時にあまり揺れないんですって。


大村正樹

灯油に火をつけて飛んでいく?

そうなんです。燃料が灯油なんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

灯油に火をつけて飛んでいくので、ジワーッと打ち上がっていく。ところがスペースシャトルは、液体がメインですが先ほど申しました固体ロケットが2本ついてますね。これはほとんど打ち上げ花火みたいなものですから、火がついた瞬間、バーンと打ち上げる。


大村正樹

やっぱり燃料の爆発力、推進力がシャトルのほうがはるかに上ということ?

そうですね。はるかに大きいです。


大村正樹

でも、よく灯油の燃料で宇宙空間まで飛び出せるものですね。

一般的によく使われてる燃料、ケロシンというものですね。


大村正樹

そもそも燃料代そのものでも、お金のかかり方が違うわけですね。

それはあるかもしれませんね。


大村正樹

ちなみに宇宙飛行士が宇宙に行くためには、1人当たりいくらぐらい経費がかかるんですか?

今のスペースシャトル2000億かかるとしますと、それを7人で割るとそれなりに……ということになりますね(笑)。


大村正樹

そういうことか。1回2000億で7人ということ。あらっ!ということは、1人当たり300億ぐらいかかっちゃうということですか?

単純に計算すると、そういうことになりますね。


大村正樹

えぇえ!! イチロー選手だって生涯300億は無理ですよねぇ。

まぁ、でも宇宙飛行士が行かなければできないような仕事があるからこういったことが続いていて、自動やロボットではできないことをやっているわけです。


大村正樹

だから、ミッションというんですね。

ミッション、使命ですよ。


大村正樹

彼らの仕事ね。はぁ〜。もうこんな時間。長谷川さん、もちろん来週もいいですよね?

はい。


大村正樹

今週のサイコーは、有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

みんな、おぼえてる? 発射台にまっすぐ立っているのがスペースシャトル。じゃあ、飛行機を何というんでしょうか? −正解はオービター。知らないよねぇ。「今さらスペースシャトルのことを知ったよ」という人も多かったと思います。でも本当にあらためて「ご苦労さま!」といいたいです。みんな、どうだったかな?それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。じゃあね!