過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「アリの真実」(1)
コーチャー/寺山守さん(サイエンスライター)
大村正樹&寺山守

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁみんな、夏休みの自由研究進んでるかなぁ。今回、自由研究にぴったりのテーマを提案しちゃいますよ。アリです。身近でしょ!?お知らせの後、サイコーの登場です。


大村正樹

今週のサイエンスコーチャー略してサイコーは、サイエンスライターの寺山守さんです。こんにちは。

寺山です。こんにちは。


大村正樹

寺山さんは、文一総合出版から『アリ ハンドブック』というポケットサイズのハンドブックや、ポプラ社から『昆虫のふしぎ』などの本を出されたり、東大で講師もされているということなんですよねぇ。もうアリの専門家ですか?

アリというよりも本当は昆虫の、と言ってほしいんですけれど…。


大村正樹

昆虫全般。

特にアリは大好きなものですから、いろいろとアリを調べたり研究したりしてまいりました。


大村正樹

ということで、アリに関して寺山さんに詳しく聞いていきますが、アリって巣にいますよね。

はい。


大村正樹

アリの巣って、例えば学校のグラウンドの片隅などにもありますが、だいたい深さどれぐらいのところまでいくんですか?

種類によってまちまちですが、深い巣をつくる種類−日本のアリでクロナガアリというものですと4メートルぐらいの巣をつくります。


大村正樹

へぇ〜。

日常的によく見られる、その辺によく歩いている黒いアリ、クロヤマアリとかクロアリがいるんですが、1メートルか2メートルぐらいの巣。あと、30センチぐらいまでの浅い巣をつくる種もまた多く見られて、いろいろな生活の仕方があるということです。


大村正樹

はい。

クロヤマアリの仲間ですと出入りする通路があって、そしてその通路の脇、要所要所に小部屋がたくさんあるわけです。そういう小部屋の中に幼虫が入ってたりサナギが入ってたり卵があったりしまして、だいたい女王アリが巣の一番下のほうにいる場合が多いですね。


大村正樹

女王アリ、聞きます。女王アリがその巣の中に必ず1匹いるんですか?

いえ、アリというと女王アリが1匹いて、働きアリがいっぱいいて、それが1つの巣をつくって生活しているというイメージをされがちだと思うんですが、最近の研究で実はかなりの種類のアリは複数の女王がいて1つの巣が成り立っているということが分かってきてまして、1匹と限らない場合がずい分多い。


大村正樹

ふ〜ん。女王というと、ハチも女王ですよね。ハチの巣の女王は1匹だけですか?

ミツバチなどは1匹しかいない。


大村正樹

でもアリの場合は1つの巣に10匹とか?

クロオオアリのような種類ですと、やっぱり1匹ですね。ところが1つの巣に10匹20匹、クロヤマアリですと1つの巣にそのぐらいの女王が一緒に生活をしていて、その女王がそれぞれ卵を産む。あと、ひどいのになると1つの巣に数百匹の女王がいるというような形で、アリのイメージはずい分変わってきているんじゃないかと思うんですよね。


大村正樹

ちょっと巣のイメージをおさらいすると、1メートルから2メートルぐらいの深さまで。大きさは、例えばたたみ何畳分とか?

やはりアリの種類によってまちまちです。小さいアリですと1つの巣に女王1匹、働きアリが10匹ぐらいのすごく小さな巣しかつくらない。そういう種類ですと、巣はすごく浅いところにしかつくらないんですが、一般的なその辺で見られるクロヤマアリ、クロアリですと先ほど話したように1〜2メートルぐらいの巣をつくり、だいたい数千匹の働きアリがその中で暮らしている。


大村正樹

広さはどれぐらいですか?

広さは1メートル四方から、大きいので数メートルまで行くかなぁというところですね。


大村正樹

なるほど。畳半分ぐらいのところで、大所帯のものは数千匹いて、その中に女王が結構いるということですね。

そうですね。


大村正樹

夏休み、簡単に女王アリを見分けるのはどうすればいいんですか?

働きアリと女王アリ、どっちも実はメスなんですね、解剖学的には。


大村正樹

へぇ〜。女の方が働くんですね。

そうなんです(笑)。普通の巣には男の方はいなくて、女の方ばかりなんです。女王アリはやはり体が大きいので、一生懸命巣を掘って探しているとひと回りあるいはふた回りぐらい大きい個体が出てくる場合があります。その場合は女王アリだと思っていただくとだいたい当たりかなという形ですね。


大村正樹

大きさで区別をつけるんですね。

ええ、大きさが違うし、特に胸の部分が大きく発達している。形も違うということですね。お腹も大きいので卵をいっぱい産むということがあって、全体的に大きいことで女王と働きアリは簡単に区別ができるはずです。


大村正樹

なるほど。アリのオスは何をやっているんですか?

アリの一般的な生活は、女王は卵しか産まないというか、もっぱら卵を産むお仕事をやっている。それ以外の一切の仕事−エサを探してくるとか幼虫のめんどうを見るとか、あるいは巣を広げたりなどのメンテナンスのような仕事は、同じメスだけど働きアリが行なっている。


大村正樹

はい。

ただし、働きアリはメスだけど卵は産めないし、大きさも女王アリと比べて全然小さい。巣がだんだん大きくなってきますと、その巣の中に新しい女王アリが生まれてきます。新しい女王アリが生まれてくる時に、同時にオスのアリもやっと産まれてくる。


大村正樹

産まれたオスは何をやるんですか?

新しい女王アリは最初、羽を持っています。アリは、実はハチの仲間なんですね。


大村正樹

あっ、そうなんですか。

ええ。地面の中で生活するようになったハチを、われわれはアリと呼んでいると思っていただいてかまわないです。


大村正樹

ちょっと待って、飛躍して…。ごめんなさい、オスは何をやっているのか聞いているんですけど。

あぁそうです。すみません(笑)。


大村正樹

だけど、ちょっと今すごいですねぇ。ハチが地面の中にいるアリみたいなものですか?

そうです。


大村正樹

羽こそないけれど、ハチとアリは同類なんですか?

同じ仲間です。


大村正樹

えぇ〜!

地面で生活するわけですから、基本的に羽はいらないわけですよね。ですから、羽は二次的に退化させなくしちゃって、地面の上を集団で生活しているというのがアリなんです。


大村正樹

アリは針がないですよね。

いえ、ある種類もいるんですね。原子的なアリですとハチの仲間ですのでちゃんと針を持っていて、刺されるとスズメバチやアシナガバチに刺されたのと同じぐらいの痛みが走るような種類もいるんです。


大村正樹

いやぁ、ちょっと衝撃ですね。アリとハチは研究者から見たら、科学的には元は一緒なんですか?

同じ仲間です。


大村正樹

同じ仲間! アリはアリ科ですか?

科でいうとアリ科ですね。


大村正樹

ハチはハチ科?

ハチにはいろんなグループがあるんですけど、全体をハチ目というグループにまとめているわけです。そのハチの仲間の中で、地面の中で社会生活を行なうようになったハチを私たちはアリと呼んでいる。


大村正樹

じゃあ、アリはハチ目アリ科ですか?

そうです。


大村正樹

いやぁ、ショック! もう時間になっちゃった。ちょっと「オスは何をやっているのか?」が来週に持ち越し。

ハハハ。


大村正樹

みんなもアリの巣を見ながら、オスを見つけてね。ちなみに、オスの区別はどうやって?

オスのほうも羽を持っています。


大村正樹

オスは羽を持っている?

はい。新女王とオスは羽を持っています。オスは体が非常にきゃしゃで弱々しいので、これはこれで巣の中で見つければすぐ分かるはずです。


大村正樹

いや、分かんなくなってきました。メスは働いていて、オスは小っちゃくて羽を持っている。これがアリの見分け方。オスははたして何をやっているのか? 来週への持越しです。寺山さん、来週また来てもらってよろしいですか?

喜んで(笑)。


大村正樹

はい、ありがとうございました。今週のサイコーは、サイエンスライターの寺山守さんでした。


大村正樹

ハチとアリの関係、そうだったんですか。知らなかったなぁ。みんな、どうだった?ちなみに針を持ったアリもいるそうだけど、「東京にはそういうアリはいないから大丈夫だよ」と寺山さんはおっしゃってました。そろそろお盆だからみんな、おじいちゃんおばあちゃんの家とか行っちゃうのかなぁ。東京に残っているキッズがいたら、ちゃんと来週も聴いてねっ。それでは、キッズもみんなもすてきな夏休みを。じゃあね!