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「キッズの質問に答えます」(2)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、夏休みエンジョイしてる? もうすぐ8月でしょ。8月になると夏休みもあと1ヵ月かと思っちゃって。7月の段階では「まだ1ヵ月以上あるよ」って思わない、みんな。大村さんはそう思ってました。今日はみんなからの質問にこたえていきますよ。ラボにはたくさんの科学の疑問が届いてますからね。お知らせの後、サイコーが登場しま〜す。


大村正樹

今週のサイコーも前回に続きまして、科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

よろしくお願いします。今回もキッズから質問が届いてまして、さっそくいきましょう。練馬区のショウタ君、11歳。これ、けっこう深刻な話だなぁ。「お父さんもお母さんも物忘れがひどいです」。−ちょっと待ってショウタ、お父さんいくつよ?「テレビに出ている人の名前が思い出せなくて、二人で『この人、誰だっけ?』と言い合ったりしています。何で年をとると、物忘れをするんですか? そういう時インターネットなどで調べるのはよくなくて、自力で思い出さないと脳細胞が死ぬと聞きました。本当ですか?」。

僕もだんだん物忘れが激しくなってきて、なかなか人の名前を思い出せないことがありますね。


大村正樹

でもショウタ君は小学生だから、小学生のお父さんお母さんの物忘れはどの程度かなぁ? ちょっと心配ですけれど(笑)。たぶん「この俳優さん、誰だっけ?」というレベルだと思うんですけれど、そこは科学的に。年をとると、なぜ物忘れが進行するのか、このあたりをうかがいたいです。

そうですね。物忘れとかすぐに思い出さないのは誰でもあることで、年齢によらないこともずい分あるんじゃないかと思います。


大村正樹

う〜ん。

ただし、確かに年をとってくると、脳細胞の数がどんどん減ってくるとはいわれています。ですから、そういった意味では、脳自体の働きが若い時に比べて少し活発ではなくなってくることもあるとは思うんです。しかし、脳細胞の数と物忘れや記憶は、脳の能力が結びついていて、脳細胞の数が少なくなればだんだん物忘れが激しくなるという研究は、まだなされてないのではないかと思います。


大村正樹

ほぉ〜。

脳の話って非常に複雑なので、よくわかってないことがとても多いですね。


大村正樹

脳細胞は一定の年齢に達すると日々減ってくるんですか?

そうです。赤ちゃんの時はものすごいスピードで増えてますけれど、たぶんもう小学校の頃に脳細胞の数はできてしまっている。そこから後、大学生になってからはもうほとんど増えないので…。


大村正樹

えぇ〜!

基本的には減るだけだといわれています。


大村正樹

大学生ぐらいをピークに日々、脳細胞は右肩下がりに減ってくるんですか? ショック!

普通は考えられているんですが、ただし研究によっては大人になってから脳細胞が増えたという研究もあるので、これがどこまで正しいかも今はわかってないんですね。


大村正樹

ほぉ〜。なるべく脳細胞の減少を最小限に食い止める方法は?

実は、記憶は脳細胞の数だけで決まるわけではないんですね。ある細胞とある細胞が結びついて、その記憶がだんだん強くなる。ネットワーク−脳細胞のつながりの世界ですから、脳細胞のあるつながりがいつも使われていると、つながりが強くなって記憶として残るわけです。


大村正樹

はい。

だけど、われわれ日常生活で起こったことをほとんど後で忘れているのは、そういったつながりがないままに捨てられているわけですね。そこで、人間の脳の中では記憶というものが整理されて、必要なことだけをおぼえていくようになっているわけです。


大村正樹

ふ〜ん。

ですから、脳細胞の数が減ってもネットワーク、つながりが残っていれば記憶は残っているはずです。後になってそのつながりを取り出す時に、実はなかなか取り出せなくてちょっと物忘れが激しくなったり、なかなか思い出せないことが起こるのではないかと。


大村正樹

いったん吸収はするんですけれど、その後のつながりをちょっと自分の中で忘れてしまうと思い出せなくなってしまう…。

そうですね。脳全体の働きの中で、昔の記憶を取り出す部分がたぶん弱くなるのが物忘れであって、細胞が減って脳の働き全体が低下していくこととはちょっと違うのではないかなと。


大村正樹

なるほど。じゃあ、なるべく頭を使っていればいいということですね。

そのように科学者もいっています。では、どうやって使うことになるのかということで、インターネットの話がありましたが、インターネットで調べても僕は問題ないと思います。辞書を見たりインターネットで調べたり、とにかく頭で創造的なことだとか芸術的なことを常にチャレンジしていることが大事ですね。


大村正樹

はい。

それから後はよく睡眠をとったり栄養をとって、脳に常に栄養分を与えてやる。そういったことがたぶん必要になると思います。


大村正樹

なるほど、わかりました。ショウタ君も、お父さんお母さんの脳を刺激するような生活をするといいね。迷惑をかけない程度にね。

あまり物忘れをすることを気にしなくていいのではないでしょうか。


大村正樹

わかりました(笑)。では、次は、千葉県のエリナちゃん、12歳の女の子から。「淡水魚を海水に入れたら死んでしまうと聞いたことがあります」。―たぶんそうだね。「なぜ、同じ魚なのに海水魚と淡水魚がいるんですか?体のつくりなど違いはあるんですか?」。確かに塩水で生きている魚は川では生きられないといいますけれど、でも同じエラ呼吸ですよね。何でですか?

淡水魚

これは、よく疑問に思う質問のひとつですね。同じ魚なのに海と湖で別に住んでいるわけです。どうしてなのかということですが、昔は、生命が生まれた頃は魚は全部海に住んでたんですね。


大村正樹

ええ。

生命はすべて海で生まれて、その中で魚というものが出てきたので、今の魚の先祖はすべて海の中で住んでいたわけです。その一部が、いってみれば新しい世界を求めて川をさかのぼって川で生活したり湖で生活するようになった。


大村正樹

へぇ〜。チャレンジャーの先祖がいたんですね。

そうですね。ですから、その段階で住む世界がわかれちゃった。海水と淡水の違いは何かというと、当然のことですけど塩分です。塩を含んでいるかどうかということ。ですから、塩が自分の体にとってどういう影響を与えるかが、淡水魚と海水魚の違いになってくるわけです。


大村正樹

はい。

ちょっと難しいのですが、浸透圧というのがあります。どういうことかというと、海水がありますね、例えば自分の細胞があるとして細胞の中にも水分があるのですが、細胞の中の水分はちょっと塩分を含んでいるけど海水よりは薄いわけです。


大村正樹

ええ。

濃い海水と薄い海水を合わせると、薄い海水の中の水が塩分の濃い海水のほうに流れていってしまう。


大村正樹

キュウリに塩を振ると、キュウリが汗をかいたようになるのと同じですね。

そうです。ですから海の中で泳いでいる魚は、実は自分の体の中の水が全部海のほうへ出ていってしまう。


大村正樹

ほぉ〜。じゃあ、口から水を飲んでも浸透圧の影響で海にその水分が戻っていくんですね。

そうです。そうなると大変なので、海に住んでいる魚は自分の体の中の水分が出ないように、つまり海水をいくら飲んでもすぐに塩分を出してしまうという機能を発達させているわけですね。


大村正樹

へぇ〜。浸透圧に強い体をつくっているということですか?

浸透圧で水が抜けていかないように、どんどんどんどん塩分を出していく。そういうふうに体をつくっているわけですね。


大村正樹

ははぁ。

例えば腎臓がありますが、魚にも腎臓があって当然その体の中に吸収した海水の中に塩分が含まれていますから、どんどんどんどんオシッコで出してしまう。そして、体の中の塩分を常に少なくしておかないと浸透圧で自分の体の水分がなくなってひからびちゃう。そうならないようにしているわけです。


大村正樹

じゃあ、沼とか湖とか川にいる魚たちが海に放流されたら、浸透圧に弱いからあっという間に水分が抜けてしまって…。

そういうことになるので、実はいかないんですね。


大村正樹

へぇ〜。なるほど、わかりました。ちょっと専門的な話だったけど、エリナちゃん、浸透圧という言葉をインターネットで調べるとたぶん寺門さんがおっしゃってた話がより理解できると思います。もう時間ですね。ほんとに短かった。寺門さん、秋になったらキッズたちの質問がいくつか出てくると思いますので、その時来てくださいね。

わかりました。


大村正樹

今週のサイコーも、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも失礼しました。


大村正樹

何か今年の夏休みの自由研究は、地震の影響で放射能とか海洋汚染とか風向きとか、地震をきっかけにしていろんな研究をテーマにするキッズって多いかもしれないなと思いました。この番組はいろんなものに関心を持ってくれるキッズのヒントになればいいなと思ってずっとやってます。今日どうだったかな、みんな。それでは、来週いよいよ8月だねぇ。8月になってお盆を過ぎるともう暦の上では秋といわれますけれど、まだまだ夏休みはこれからです。キッズのみんなも楽しい週末を。じゃあね!