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「キッズの質問に答えます」(2)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ新学期を迎えていろいろな出会いがあって、一番ワクワクしてるよね。クラス替えや席替えなどがあったりして、ときめきのシーズンだけれど、みんなどうだろうかねぇ。もしこのサイエンスキッズを紹介してあげたい友だちがいたら、どんどん紹介してね!ということで、今週もみんなからの質問に応えてもらいます。ラボにはたくさんの質問が来ています。お知らせの後、サイコーの登場だよっ。


大村正樹

今週のサイコーも前回に続きまして、科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

よろしくお願いします。今回もキッズから質問が届いています。さいたま市ラジオネーム“ロケットマン”、小学校6年生の男の子から。「宇宙にいる宇宙飛行士とテレビ電話みたいなので会話するシーンをニュースなどで観ますが、どういう仕組みなんですか?将来、宇宙を旅する人と家の電話や携帯電話を使って会話する時代は来ると思いますか?」。これ確かに宇宙の人と、あと映画の世界でもありますね。実際、NASAの映像とか観ると宇宙と交信していますよね。

そうですね。


大村正樹

あれはどういう仕組みなんですか?

基本的には、よくテレビで宇宙ステーションにいる宇宙飛行士とのやり取りを観ることがありますね。


大村正樹

宇宙実験とかもね。

これは衛星の実況中継と同じですね。ですから、例えば外国でやっているオリンピックを観るのと基本的には原理は同じです。衛星等を経由して無線を使って映像がどんどん送られてきているということです。実は国際宇宙ステーションは地上400キロメートルの宇宙にあるんですが、そういった意味では通信的にいうと、そんなに今は外国と変わらないぐらい通信網が発達してるんですね。


大村正樹

そうか。確かに地上400キロだったら、ここからアルゼンチンのほうが遠いですものね。

そうですよね。


大村正樹

そうか(笑)。

そういうふうに考えると、宇宙は遠いように思えるけれど通信ということでは非常に近くて、今はそういったテレビ中継もちゃんとできるし、それからアメリカやロシアでは宇宙船が自分の上を通った時に基地同士で交信するようになっています。ただNASAとかロシアでやってる宇宙飛行士の交信は、われわれはちょっと聴くことはできないですけれど、基本的には中継していますから一般向けに放送されれば、その内容は見たり聞いたりすることができるということなんですね。


大村正樹

なるほど。

それから今のご質問の中で「携帯電話で話ができませんか?」という話がありましたけれど、これも実はもう行われています。


大村正樹

えっ? そうなんですか。

ええ。どういう携帯電話のシステムを使っているかは、僕は詳しくはわからないですけれど、基本的には宇宙飛行士が宇宙で自由時間に携帯電話で家族や友だちと話すことは行われているんですね。


大村正樹

そうなんですか!

それはあまりオープンになってないですけれど、個人のプライベートな時間なので。


大村正樹

じゃあ、若田さんは船長になっても国際宇宙ステーションから奥さんに電話することも可能だということ?

たぶんできるのではないかと思います。今はそれができるシステムになっているし、逆に宇宙飛行士は長期滞在が非常に長いですよね。


大村正樹

はい。

半年とか、以前は3ヵ月とかありましたけれど。そのように滞在期間が長いため、やはり家族や友だちとコミュニケーションを取るということが、宇宙飛行士の心理を安定させる意味で非常に大事なことがわかっています。NASAでも日本でもロシアでもみなそうですが、なるべく自由な時間には宇宙飛行士が家族の人とコミュニケーションを取ったりすることができるようにと、非常によく考えられているんですね。


大村正樹

ふ〜ん。

ですからもう宇宙に行っちゃうとあまり通信もできない、という状態ではないですね。


大村正樹

いわれてみたら、確かに地上400キロだったら“あり”ですよね。

そうですね。それから実はもうひとつ、インターネットが今つながっているんですよ。ですからメールのやり取りも自由にできます。


大村正樹

宇宙から?

そうですね、はい。


大村正樹

そうなんですか。

以前はやはり通信の時間が決まってたのですが。例えば「今日一日宇宙ステーションでこんな仕事をしなさい」とか、故障が起こった時に「こんなふうにして直しなさい」というようなことは以前はファックスを使ったりすることもあったんですが、今は基本的にメールで指示がちゃんといくようになっているんですね。昨年、野口さんが宇宙を飛びましたけれど、ツイッターでずいぶん話題にもなりましたね。


大村正樹

あっ、そうか!

実は野口さんが飛び始めた頃から、インターネットを常時接続、いつでも使えるようになったんですね。


大村正樹

接続料は無料ですね。

そうですね。たぶん宇宙飛行士は無料で使えると思います。


大村正樹

ですよね。

野口さんがツイッターできたのは、インターネットが常時接続できるようになったからです。は宇宙ステーションは遠いようで通信的には近くて、宇宙飛行士はそういった意味で地球をかなり身近に感じながら仕事ができる状態だと思いますね。


大村正樹

なるほど、わかりました。意外に簡単だということですね。続きまして大田区のアスカちゃん、小学校5年生の女の子。「私は嫌なことがあると、いつまでもクヨクヨ考えてしまいます」−わかるよ、その気持ち。「悪い記憶のほうがいい記憶よりいつまでも残るような気がします」−わかる、わかる。「実際はどうなんですか?未来になったら嫌な記憶を消去するような機械は発明されますか?」。前半はきわめて現実的な話です。後半はちょっとドラえもん的な話ですが(笑)、どうでしょう?

よくわかりますね、この気持ち。結論からいうと、「あまりクヨクヨ考えないで大丈夫ですよ」ということです。実は記憶は非常に不思議でまだよくわかっていないところがあるんですけども、よくいわれているのは短期記憶と長期記憶があるんです。


大村正樹

はい。

短期記憶は、今われわれ日常生活でいろんなことをしてますね。いろんな情報が入ってくるんですけれど、そういったものを覚えているのが短期記憶で、ほとんどすぐに忘れてしまう。


大村正樹

へぇ〜。

忘れないと脳がいっぱいになってしまうでしょ。


大村正樹

ええ。

ですから、ささいなことや覚えなくていいことは、だいたい短期記憶に1回メモリが入ってますがすぐに忘れてしまうわけです。ところが勉強などをする時には、いろいろ覚えなくちゃいけませんね。


大村正樹

ええ。

そういった時に、実はずっと長く残るための長期記憶というところに記憶を残さないと覚えていかないことになっているわけです。


大村正樹

それはその人の考え方で振り分けられるんですか?

なかなかできない。それは脳が自分でやっているわけです。


大村正樹

へぇ〜。

つまりどういうことかというと、人間が生きていくために必要な情報は残すけれど、必要ではない情報は忘れないと脳が満杯になってしまうので、そういう仕組みがあるんですね。


大村正樹

じゃあ、嫌なことは短期記憶と思えば消し去ることができる?

基本的には嫌だったことや楽しかったことも、実はそんなに長くは覚えていないんですね。


大村正樹

はぁ〜。

ということなので、たぶん嫌なことがあっても何日か経つとだいたい一般的に忘れてしまうのは、長期記憶の中にそういったものが残らないことになっているわけです。


大村正樹

でもアスカちゃんは「いつまでもクヨクヨ考えちゃう」と相談してきたわけで…。

たぶん、それはしばらく経ったら忘れてしまうから気にしないでいいと思います。


大村正樹

なるほど。

それから、悪い記憶のほうがいい記憶よりも残りやすいというのは、これもたぶんそういうことはないと思います。


大村正樹

そうですか。いいものも悪いものもだいたい均等に時間が忘れさせてくれる。

だいたいそうなっているんですね。


大村正樹

僕は昔から親に「くだらないこと、よく覚えているね」といわれるんです。本当は歴史とか漢字とか英単語も覚えなくてはいけないだろうけど…。寺門さんとの5年間のお付き合いの中で「あの時、寺門さんのネクタイが云々」とかくだらないことを全部覚えているんですよ。それはどういうことですかねぇ?

つまりそこが記憶の難しいところですね。完全に自分の記憶をコントロールできていないんですよ。


大村正樹

あぁ。

たぶんいろんなことを記憶してメモリに入っていても、それが引き出せない記憶もあるはずです。それからいつも引き出しているので、仕事や勉強に使ったりする記憶もある。でも脳の引き出しを全部コントロールできないので、実は大事なことを忘れてしまったり、どうでもいいことをずっと覚えていてすぐに思い出すとか、そういったことがあるのは事実ですね。


大村正樹

脳の構造とか引き出しの出し方とか、そういうことですかねぇ。

ええ。それを将来コントロールできるかというと、やっぱりなかなか難しいと思いますね。


大村正樹

未来になったら嫌な記憶を消すための機械が発明されるかというのは?

たぶん機械はないと思います。ただし、ある程度自分の記憶をうまく使っていくというのはできるようになるので、なるべく楽しいことだけを覚えて嫌なことは忘れてしまうように自分で自分の脳をある程度コントロールする、トレーニングするのは可能になるかもしれませんね。記憶の仕組みがもっとわかってくれば、そういうことができるかもしれません。


大村正樹

わかりました。もう時間です。まだまだキッズの質問が来てるので、今度また寺門さん遊びに来てくださいね。

わかりました。


大村正樹

よろしくお願いします。今週のサイコーは科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも失礼しました。


大村正樹

寺門さんは、嫌な記憶といい記憶が消えていくのはだいたい同じタイミングだとおっしゃってたけれど、僕はアスカちゃんと同じ考えよ。嫌なことはほんと残るものね(笑)。だけれど、ここはサイコーのいっていた通り、科学的には同じだというように思おう!いつまでもクヨクヨしてるといろんな負の連鎖があるから、そこはなるべく前向きに切り替えてやっていきましょう! ということで、とってもよく気持ちがわかりました。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!