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「キッズの質問に答えます」(1)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ4月に入りました。新しい学年です。新しい生活を始めたキッズも多いと思いますが、実は大村さんもこの4月から大きく生活が変わりました。北海道にお引越しをしました。でも、この番組は続くからね。ラボには週に1回やってきますよ。ということで、この4月からもサイエンスキッズをよろしくお願いしま〜す。今日は大好評のキッズからの質問特集ということで、ラボにはたくさんの質問が届いています。お知らせの後、いつものサイコーの登場だよっ。


大村正樹

今週のサイコーはおなじみ、寺門和夫さんです。よろしくお願いします。

こんにちは。


大村正樹

こんにちは。今年度始めですけれど、キッズからの質問がじゃんじゃん届いてます。寺門さん、いきますよ。

はい。


大村正樹

まず渋谷区の小学校6年生の女の子、ラジオネーム“ミキティ”ちゃんから。これ、いい質問だね。「石油は人工的につくれないのでしょうか?」という話です。

はい。


大村正樹

石油、人工的にできないんですか?

そうですね。これは非常に大事な問題です。石油は化石燃料とよくいうのですが、要するに1億年とか2億年前の植物や微生物が腐って石油になったものなんですね。昔のものなので、ある程度量が限られているわけです。しかし、20世紀に人類はずい分石油を使ってしまいました。そのため21世紀の半ばぐらいになったら、だんだん掘る石油の量が足りなくなってくるんじゃないかといわれてるんですね。


大村正樹

じゃあ、あと40年ぐらいで。

ですから、太陽エネルギーとか風のエネルギーを使った新しいエネルギーを開発しているのは、ひとつはそういった理由なんですね。


大村正樹

そうなんですか。風力発電とか?

そうですね。


それから石油は自動車のエンジンの燃料とか火力発電所の燃料だけではなくて、プラスチックの原料になってますね。私たちの身の回りにプラスチックの製品がいっぱいあります。そういった原料にもなるので人類にとってとても大事ですが、これから資源的には非常に少なくなってしまう。大変な問題が、今あるわけです。


大村正樹

はい。それを人工的につくれないかというのが、ミキティちゃんの質問。

これ実は科学者もまじめに考えて、研究が進んでいるんです。今、実際にどういうふうにしているかというと、やっぱり植物を使って石油をつくってみたり、つまり油をつくってみたらどうかということで、遺伝子組み換えなどの最先端の技術を使って葉っぱにちっちゃな油の粒みたいなものをつくることができるところまではいってるんですね。


大村正樹

植物の油分を抽出して、葉っぱの上に油粒ができるぐらいまで…。

いや、そうではなくて、植物が大気中の二酸化炭素と太陽の光と水を使った、いわゆる光合成ですね。


大村正樹

はい。

光合成の作用で有機物をつくって、そこから油になるという、そういったものをつくる植物を今研究しているわけです。


大村正樹

へぇ〜。それはアブラナではなくて、また違う植物。

そうです。葉っぱに石油の原料とかプラスチックの原料になるような物質をつくる植物を研究しているわけです。


大村正樹

でも、油分は自分からは吸収してないわけですよね?

そうです。


大村正樹

水と光合成で?

そうです。植物が自分でつくっている。


大村正樹

すご〜い!

ですから、昔の石油はそういう形で、植物が自分の体が変質して油になったわけですけれど、同じことを今度は植物自体が自分でやるということですね。


大村正樹

ただ大量生産は難しそうな話ですね。

葉っぱについている粒々ではダメで、将来的にはどういうふうにやるかと考えているんですが、例えばジャガイモとかサツマイモ、畑の中で引っこ抜くと大きいお芋が出てきますね。


大村正樹

はい。

あんな感じの固まりで油がとれないかを実際に考えているわけです。


大村正樹

地中からですか?

将来は、石油を畑からとることになるかもしれない。


大村正樹

なるほど、わかりました。では、続いての質問は、東京都北区、ラジオネーム“ピンポン”君、小学校6年生の男の子から。「地球温暖化で気温が暑くなると、人間はそれに耐えられるように進化しないのですか?二酸化炭素を酸素に変える装置は、100年後でもつくれないのですか?」。2つの質問です。いわゆる順応ですよ。温暖化といわれてます。人間は暑いのが苦手だといわれているけれどだんだん強くなっていかないかということと、二酸化炭素を酸素に変える装置、これは100年後でもつくれないかということ。どうなんでしょうか?

まず最初のほうの質問ですが、確かに人間に限らず生物には環境に適応する能力があるので、例えば暖かいところに住んでいる生物は、暖かいところの環境に適応してるんですね。


大村正樹

はい。

ですから自分が一番健康で動きやすいのに一番適した気温は、ある気温が決まってるんですが、それは寒いところに生きている生物よりもちょっと高めになっている。


大村正樹

ほぉ〜。

だから暑いところに生きている生物は、暑い気温にちゃんと適応している。それから寒いところで生活している生物は、ある程度寒い気温が自分にとってベストな気温になっている。


大村正樹

今月から生活の大半を北海道に移しまして出張で東京に来ているんですが、僕はもともと東京の体を持っているけれど、北海道で生きていけますか?

大丈夫です。ただし、北海道の人と沖縄の人を比べるとしますね。そうすると、一番その人たちにとって適した気温は2度ぐらい違います。


大村正樹

ですよね。

それはどうしてわかるかというと、実は北海道の人が亡くなる統計がとれてるんです。それは「気温が何度の時に亡くなる人が多いですか?」という統計があって、そうするとちょっと難しいですけれど、形がU字型になって一番亡くなる方の少ない気温がある気温というふうに決まってくる。その気温よりも寒くなっても暑くなっても、実は亡くなる方が増える。


大村正樹

へぇ〜。

同じように沖縄でもそれをやりますと、やはり一番亡くなる方の少ない気温は決まってきて、北海道の人と沖縄の人の一番亡くなる人が少なくなる気温は2度ぐらい違っている。


大村正樹

生きるための適正の気温が。

長く沖縄にいる人と長く北海道で暮らしている人の間では、そのくらい環境に適応していることがあるわけですね。


大村正樹

なるほど。それから、二酸化炭素を酸素に変える装置、実は先週来られていたサイコーが地球で人類が暮らすのは二酸化炭素を吸収してくれているからだ、それは海が吸収してくれている、植物だけじゃないという話をうかがったんですけれど、この二酸化炭素を酸素に変える装置は人工的につくれるんですか?

たぶんできると思いますけれれども、装置が非常に大がかりだしお金もかかる。それから、当然そのためのエネルギーもかかってしまう。ということなので、基本的にはやはり地球が自然の状態で二酸化炭素を吸収してくれるということをもっと促進していくほうが早いと思うんですね。


大村正樹

ほぉ〜。

そのために今、われわれが出している二酸化炭素がどのようにして吸収されてるかというと、実は半分ぐらいが海に吸収されている。それから半分ぐらいは陸上で吸収されているんですが、これは基本的には植物が吸収している。


大村正樹

半分が海、半分が植物。

大まかにいうとそういうことなんですね。ですから今、実は問題になっているのは、だんだんアマゾンの森林が伐採されたりして結局、地上の森林の植物が二酸化炭素を吸収して酸素を出してくれるという機能が森林が少なくなると弱ってくるわけです。そうすると、さらに二酸化炭素が大気中に溜まりやすくなってしまう。


その二酸化炭素が増えないようにして、なるべく酸素に変えるためには、やっぱり森林を守って増やしていく。これがひとつ、とても大事なことです。


大村正樹

森林はこれから増えますかねぇ。

ですから、増やすことを考えなくてはいけないんですが、これは非常に時間がかかりますね、これから植林をしていくとなると。だからまず必要なのは今、違法に伐採しているのを止めることですね。


大村正樹

はい。

これがまず第一。長期的には植林をしていく。たぶんこれでも足りないので、人工的な方法でいうと、酸素には変えられないかもしれないけれど大気中の二酸化炭素をつかまえて、例えば海底だとか地中にため込んでしまう。そういった研究は今なされている。


大村正樹

へぇ〜。コストもかかりそうですけれどね。

でも、そのほうがまだ早いということですね。


大村正樹

なるほど、わかりました。まだ質問があるので、来週またうかがってよろしいですか?

はい、わかりました。


大村正樹

今日のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも失礼しました。


大村正樹

ほんと基本的なことだけれど、石油がなくては僕らの生活は成り立たないといわれていて、ラボの中にもいろいろなプラスチック製品があって石油が原料なわけですよ。石油は、寺門さんいわく「化石燃料と呼ばれているんです」という。そう考えると2億年前の植物や微生物の蓄積したものが湧き出して石油になってるという、何か全然イメージが違ったねぇ。ほんと勉強になりました。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい春休みを。バイバイ!