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「2011年の科学(2)」
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週も今年大注目の科学、2011年の科学というテーマでお送りします。今年の科学の世界は宇宙以外にもまだまだ興味深いことがあるということなので、お知らせの後、いつものサイコーが登場するよっ。


大村正樹

今週のサイコーも科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんばんは。

こんばんは。よろしくお願いします。


大村正樹

先週は宇宙の話を聞きましたけれど、今年期待されるその他の科学に関して、ズバリ聞いていきます。

僕が期待しているひとつは、電気自動車です。


大村正樹

あっ、いいですねぇ。一部の自動車メーカーも去年から出しましたよね。どんなところが期待ですか?

そうですね。今まで自動車はガソリンで走っていた。ところが地球温暖化の問題などで、だんだんとそうじゃないようにしていこうという考え方がある。ここずっとはハイブリッド車という電気で走るのとガソリンエンジン両方で効率よく走る自動車が非常に人気でしたね。


大村正樹

はい。

いよいよ昨年、そして今年ぐらいから電気だけで走る自動車がかなり本格的に出てくるんじゃないかと僕は考えているんです。


大村正樹

でも、まだまだ値段が高いですよね?

まだ開発したばかりなので、やっぱり値段が高いのはしかたがないですね。あまり大量生産もしてないですし、まだまだガソリンで走る自動車のほうがトータルで考えると経済的にも安い。ただハイブリッド車も出てきた頃は、けっこう高かったですね。


大村正樹

はい。

ですから同じようにこれから何年かするうちにどんどんどんどん市場に入っていって、やがて安い値段で改良になるんじゃないかと思います。


大村正樹

そうですよね。今ラジオを聴いているキッズの世代は、たぶん主流になってきますよね。

だと思います。


大村正樹

エコカーという、しかも電気自動車はたぶん値段も下がってくるでしょうけれど、この電気自動車のメリットはやっぱり温暖化で、それ以外には?

まずは基本的にはCO2、二酸化炭素を出さないので地球温暖化に影響しないこと。それからもうひとつ、やっぱり石油資源の問題がありますよね。


大村正樹

はい。

今ガソリンで走ってますがいずれ石油の量が足りなくなってくるので、ずーっとこのままガソリンで走る自動車が21世紀の間は主流になっているかというと、たぶんそうではない。新しいタイプの自動車に代わっていくしかない。そうなるとやっぱり電気自動車になるでしょうね。


大村正樹

ふ〜ん。問題は電気100パーセントオンリーになってくると、いわゆる発電するスタンドというか充電スタンドをなかなか見かけない。

まだまだ少ないですね。


大村正樹

これはどうすればいいんですか?

これもガソリンスタンドと同じで、車の台数が増えれば増えてくると思うんですね。ただやっぱり今一番問題なのは、数の問題もありますが充電する時間が長かったり、1回充電してから走る距離が短い。そのあたりがガソリン車に比べると、まだかなり開きがあるので、電池の性能やモーターの性能をよくして、これからもどんどん開発が必要だと思いますね。


大村正樹

僕は前から思ってるんですが、今あるスタンドにいわゆるバッテリーパックを置いてフル充電状態で売る。そしてチェーン店でカラになったものを返して、またフル充電状態のものを買う。こういうのはどうですかねぇ?

あり得ると思いますよ。ただ今はそこまでバッテリーがコンパクトでなかったり、軽かったりしないわけですよね。


大村正樹

そうなんですか。大きいんですか?

かなり大きい。


大村正樹

へぇ〜!

だんだん改良されていると思いますが、カートリッジみたいなもので簡単に交換できるようになれば、そういった方法もありですね。


大村正樹

なるほど。エコカーのジャンルで電気自動車は、日本はほかの国を完全にリードしているんですか?

電気自動車は海外のメーカーも研究してますから、そんなに日本だけが独自性があるわけではないと思いますが、僕の考えで今のハイブリッドカーにも使われている例えばバッテリーやモーターといったものを小型化して性能をよくする。だいたい小型化して性能をよくするのは日本が得意です。たぶんそういったところで、これからは日本である程度世界をリードする技術が出てくるんじゃないかと思います。


大村正樹

そうですか。なるほど。

それでその時の決め手が、レアアース。


大村正樹

はい! 去年、話題になりましたよ、中国との関係で。

特にレアアースの元素はほんとに調味料みたいなもので、ちょっと入れるだけで性能がすごくよくなる。


大村正樹

へぇ〜。

そういった性質があって、こういったものを使いわけるのは日本がすごく得意なんです。


大村正樹

はい。

磁石やモーターあるいは電極とかそういったところにレアアースを使って、日本の製品はかなり精度が高いところまでいっている。今は世界中がそういうことを考えてますから、当然ほかの国でもそういった元素を使って性能をよくしようと考えている。今、日本ではその先をいってるんですね。


大村正樹

はい。

今度はレアアースを使わなくても同じ性能が出せるとか、レアアースを使う量をもっと、どんどんどんどん少なくしていってより高い性能を出せる研究も始まっている。


大村正樹

何か調味料の世界みたいですね。マツタケを使わなくてもマツタケの味を出せるとか、日本はそういうのが得意ですよね(笑)。

これは日本の得意分野なので期待できると思います。


大村正樹

なるほど。そのほか、今年期待できることは?

あとはちょっとまた分野が違いますが、私も以前この番組でお話したと思うES細胞。


大村正樹

興味あります。かつて万能細胞と呼ばれた…。

そうですね。ES細胞というのは、いってみれば体の部分のどの細胞にもなれる能力を持った細胞です。この前お話した頃は、そういったものがつくられ実験室でいろいろな実験が始まっている。将来はさまざまな医療に使われるんじゃないかという話だったと思うんですが、今年はそれが実際に人間の患者さんに使われて何らかの成果が出てくるところまでいくんじゃないかと僕は思ってるんです。


大村正樹

いよいよ、ですか?

はい、そうです。


大村正樹

京都大学の山中教授でしたっけ?

はい。


大村正樹

ゆくゆくは、この方はノーベル賞をとるのではないかといわれてますよね。

はい。


大村正樹

それほどやっぱりES細胞は人類にとって大いに期待できる?

再生医療といいますけれど、例えば遺伝的な問題とか病気や怪我で自分の体のある細胞がなくなってしまった場合に、その細胞を復活させないといけない。その復活させるのが再生医療といわれているわけです。その中のひとつの方法がES細胞、それから山中先生のiPS細胞もそうですね。


大村正樹

はい。

こういった体のどの細胞にもなれる細胞を実際の医療に使っていこうということは、これから非常に大きな医学の分野になると思います。iPS細胞に比べてES細胞は開発されたのが少し前なので実験のデータもたまっているし、かなりそういった意味で実験室での研究は進んでいるんですね。


大村正樹

iPS細胞とES細胞は違うんですか?

違います。どういうふうに違うかというと、ES細胞は基本的にお母さんのお腹の中で生命が育っていく一番最初の頃にできる細胞です。


大村正樹

ふ〜ん。

iPS細胞は、例えば皮膚の細胞でも、大人になった人の細胞でもどこの細胞でも原理的にはかまわないんですが、これを取り出すとこの細胞は実はもう皮膚の細胞になってしまってます。これにある刺激を与えると、一番最初の何にでもなれる細胞に戻ってしまうという。リセットといいますが、そのようにつくるものなので、iPS細胞は原理的には人間の体のいろいろな細胞でつくることができる。ただしES細胞のほうは、お母さんのお腹の中の一番最初の生命の最初の段階の細胞から取り出すしかない。そういったつくり方に差があるんです。


大村正樹

そうなのか。じゃあ、ES細胞を取り出すためにはお腹の中から出さなくちゃいけないということですか?

つまりそこのところが一番の問題で、どういうことかというとお母さんの体の中で芽生えた生命を実は取り出してるわけです。


大村正樹

ええ。

そこからES細胞をつくるので倫理的な問題があるんじゃないかとか、宗教的に許されないという立場もあって、なかなか全面的に世界中で研究がすぐに進むということではないわけです。ところがiPS細胞のほうはどこからでも取れるので、倫理的な問題とか宗教上の問題はないわけですね。


大村正樹

でも、両方とも何にでもなれるということですよね。

そうです。


大村正樹

わかりました。また来てください。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも失礼いたしました。


大村正樹

寺門さんには5年続けて1月にご出演いただいてまして、だいたいその年の科学について話をうかがうと年末にはある程度の結論が出てるんだけど、今思い出してみると去年は「あかつき」の失敗だけがねぇ。まぁいろいろと思うのも大事だね。この番組も足かけ6年、しみじみと「やってきたんだな」という感じです。これから寒さがピークになってきますよ。みんな、風邪とか引かないでね。インフルエンザもはやっているみたいだから。ということで、来週も夕方5時半にまた会おうね。じゃあね、バイバイ!