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「2011年の科学(1)」
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。お正月があけて1週間が経ちました。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週は毎年この時季に来てくださるサイコーがいるんですけれど、今年期待される科学についてお送りします。まず1週目は宇宙です。イトカワですよ。「はやぶさ」ですよ。カプセルですよ。ということで、お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

正月ボケも何のその!あげていかなくちゃいけませんよ。もうすぐ3学期始まるから。さぁ、今週のサイコーはおなじみ科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。明けましておめでとうございます。

おめでとうございます。よろしくお願いします。


大村正樹

寺門さんには、毎回、年始めに今年の科学の展望をうかがっているんですけれど。

そうですね。


大村正樹

かれこれ5回めですよ。ありがとうございます。寺門さん、今年期待される科学について、まず宇宙に関してはどういうことが注目ですか?

やっぱり一番の話題は、昨年地球に帰ってきた「はやぶさ」ですね。


大村正樹

実は年末年始、足かけ2年で日立ハイテクの大木さんに微粒子解析の話をたっぷりうかがったんですけれど、やっぱり「はやぶさ」から持ち帰った物質は大注目ですか?

大注目だと思います。


大村正樹

小惑星イトカワの…。

そうですね。どうしてかというと、小惑星にある物質を地球に持ち帰ったのは、これが最初なんです。ですから、調べることがすべて新しいことばかりなんです。


大村正樹

“人類初”のことばかり。

そうです。


大村正樹

日本がリードするということですね。

そうですね。


大村正樹

例えばイトカワの物質を分析することによって、何がわかってくるんですか?

地球を含めて、地球や火星や太陽を回っている惑星がありますね。太陽系といいますけれど、今から約46億年ぐらい前にできたといわれてるんですね。地球も一緒にできてるんですが、地球の場合は一度生まれてから1回地球全体が融けちゃっている。岩石の固まりだったんですが、それが融けちゃったために、生まれて間もない赤ちゃんの状態の地球の情報は失われてるわけです。


大村正樹

はい。

だから、生まれて直後の太陽系とか地球がどういう状態だったかは、いくら地球の石を調べてもわからない。ところが小惑星は基本的にちっちゃい岩のカケラですが、こういったカケラは誕生してから全部融けてしまうことがないといわれている。ですから、太陽系ができた46億年直後の状態をかなり保っていると考えられています。


大村正樹

何ミクロンという世界で、1ミリの100分の1のちっちゃなカケラからも46億年も前の昔のことって、わかるんですか?

わかります。


大村正樹

分かる!

以前、NASAでは、小惑星ではないんですが彗星、ほうき星のしっぽのほうから細かいチリがいっぱい噴き出していて、それを地球に持ち帰った「スターダスト」というミッションがあり、成功してるんですね。


大村正樹

はい。

その時に彗星のちっちゃな微粒子を持ち帰っている。実は、日本の研究者もNASAの研究者もそうですが、ほんとに何ミクロンとか何十ミクロンの微粒子を調べて、当時彗星ができた頃の太陽系の初期の状態がどんなことだったかを調べた経験があるんです。


大村正樹

では、月以外の物質はイトカワから持ち帰った「はやぶさ」が初めてといわれてますが、流れ星、彗星の物質はもう地球上で解析はされているんですか?

そうです。つまり正確にいうと、地球や火星の岩石型の惑星、それから小惑星もそうですね。そういったものからサンプルを持ち帰ったのは、小惑星から初めてです。人間はその前にアポロで月に行ってますから…。


大村正樹

40年前に。

そうですね。月の石は持って帰ってきてますが、小惑星の石は初めてです。それから地球や小惑星とはちょっと違うタイプの天体ですが、彗星というコメットがありまして、コメットのしっぽから出てくるちっちゃな粒を持ち帰ったのは、以前に一例だけあるんですね。


大村正樹

そこから何かわかったんですか?

太陽系の初期に、例えば微量な粒がいったいどのあたりでできて、どの辺まで移動したかがわかっているわけです。ただこれは一例なので、こういったことをどんどんどんどん積み重ねていくと、太陽系が生まれた直後の歴史がどんな様子だったかがわかってくるわけです。


大村正樹

はい。

今回、イトカワの微粒子もちっちゃいですが、同じように調べるとまた新しい情報が加わって、それと「スターダスト」の知識や月の石とか隕石などの研究と合わせると、だんだんと地球の岩石を調べただけではわからない太陽系の一番最初の姿がわかってくると考えられます。


大村正樹

ロマンですねぇ。ありがとう、「はやぶさ」。よくやってくれた〜!

そうですね。


大村正樹

ということは、太陽は太陽系のコアというので、46億年前から存在していた。

そうです。


大村正樹

太陽に関して、今年注目のできごとはありますか?

ありますね。


大村正樹

ある!

実はここ数年間、太陽が非常におとなしくなっちゃって。


大村正樹

うそ! 温暖化じゃないんですか?

このまま氷河期が来るという話を聞いたことがありませんか?


大村正樹

どんどん暑くなって、逆に温暖化で島がなくなっちゃうとか聞きましたけれど。

そうですね。ただ太陽に関してはそういうことがありまして、黒点はみなさん、ご存じですよね。


大村正樹

はい、黒点。

黒点というのは、太陽の活動が活発な時はたくさん出てくるんです。何個も、何個も。


大村正樹

へぇ〜。

しかも、太陽はご存じのように11年の周期で元気になったり、おとなしくなったりしてるんです。


大村正樹

といいますよね。

そのおとなしくなる時期はせいぜい1年ぐらいですが、今回2年間とか2年以上、かなり黒点がなくなっていた時期があって、非常におだやかな時期がものすごく長く続いたんです。一部の人がもしかして太陽活動はこのままずーっと、おとなしくなってしまうんじゃないかと考えて、であれば、地球温暖化といわれているけれど逆に寒くなってしまうんじゃないかと考えた人もいたんです。


大村正樹

へぇ〜。黒点は、太陽の表面の温度が低いから黒く見えるという定説ですよね。

そうです。


大村正樹

だけど、あればあるほど太陽が元気というのはどういうことですか?

黒点は確かにそこだけ見ると温度が低くなってるんですが、ちょっと難しくなりますけど太陽の内部から磁石みたいなものが飛び出てきてできる穴みたいなものです。


大村正樹

はい。

つまり、そういうものが内部から飛び出てくることは、太陽活動が活発な証拠のひとつなんです。ところが、これが数年間ずーっとなくて、もしかしたら太陽は死んじゃったかもしれないといわれてたわけです。


大村正樹

今年はそれがあるかないかで注目されてるわけですか?

ここ1年みんな注目してたんですが、だいたい1年間ぐらいでだんだん黒点が増えてきました。


大村正樹

じゃあ、活発化しているから大丈夫?

底をついてたのが、だんだん上がり気味ですね。


大村正樹

去年とか無事に年越しましたけれど、「黒点がちょっと見えないぞ」という時期が増えてたら、今年あたり世界中で大騒ぎになってたかもわからない。

そうですね。これからどんどん増えてきまして、今の予想では2013年ぐらいに一番活動が活発になるといわれている。


大村正樹

再来年か。活発になると僕らの暮らしはどうなるんですか?

一番われわれに関係あるのが、たぶんオーロラですね。


大村正樹

えっ、オーロラが見えるということですか?

太陽活動が活発だと、オーロラも活発に現れるわけです。


大村正樹

そうですかぁ。

ですから、北極近くを飛行機で飛んだりすると、窓から夜オーロラが見えたりすることがありますけれど、そういった現象がよく見られたり、もっと強いオーロラが低緯度にまで出てきて、例えば北海道ぐらいでオーロラが見られて太陽活動が活発な時期にあるんですね。


大村正樹

北海道でもオーロラを見ることができるんですか?

時々そういった現象も、今まであります。


大村正樹

そうなんですか。いやいや、ちょっと夢があるなぁ。イトカワの話も46億年前のロマンを感じるし、太陽も僕らの暮らしには密接な関係がありますからね。

そうですね。


大村正樹

オーロラという副産物も。そうですか。もう、こんな時間だ。来週もまたよろしくお願いしますね。

わかりました。


大村正樹

今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。



大村正樹

年末年始と3週にわたって宇宙に関して、日立ハイテクの方も含めてお送りしたんですが、ほんと僕も宇宙に関しては興味があってJAXAのホームページの「きぼう」という実験棟の利用に関してのコメントを寄せているんです。よかったら、僕の宇宙への熱い想いがJAXAのホームページに載っているので見てください。ということで、来週夕方5時半にまた会おうね。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!