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「『はやぶさ』からの贈り物」(2)
コーチャー/大木博さん(日立ハイテクノロジーズ コーポレート技師長 工学博士)
大村正樹&大木博

大村正樹

キッズのみんな、明けましておめでとうございま〜す!サイエンステラーの大村正樹です。ほんとに今年もよろしくお願いいたします。今年もこの東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボから、毎週土曜日にみんなの役に立つ科学の情報をお伝えしていきたいと思います。さぁ、今年は1月1日から放送ですよ。先週最後に聞いた小惑星イトカワから持ち帰った「はやぶさ」のカプセルの中身、日立ハイテクの電子顕微鏡が見た物質が何なのか?そしてこれがどういう研究に役立っていくのか?お知らせの後、サイコーの登場です。


大村正樹

お正月のサイコーです。去年、前回に続きまして、日立ハイテクノロジーズのコーポレート技師長で工学博士の大木博さんです。大木さん、明けましておめでとうございます。

おめでとうございます。


大村正樹

前回、「はやぶさ」が持ち帰った微粒子をヘラですくい取って日立ハイテクの電子顕微鏡の中に入れた。そして「その中で見えた世界は何なの?」というところで終わったんですが、「はやぶさ」が持ち帰ったイトカワの微粒子の大きさはどれぐらいのものだったのですか?

1ミクロンから10ミクロン。これは1ミリの1000分の1から100分の1ぐらい。


大村正樹

1ミクロンというのは1ミリの1000分の1。メチャメチャ小さいですね。

そうです。


大村正樹

1ミリの1000分の1。肉眼じゃ見えない。

はい。


大村正樹

あるいは1ミリの100分の1。これが10ミクロン。

はい。


大村正樹

はぁ、そういう単位の世界ですね。

それから最近100ミクロン、つまり1ミリの10分の1ぐらいの石も入っているようだということがわかってきました。


大村正樹

100ミクロンは、かろうじて見えそうですね。

髪の毛の太さとだいたい同じぐらいの大きさです。


大村正樹

へぇ〜。それはイトカワのものとして100ミクロンのものもあった?

あった!


大村正樹

へぇ〜!

最近、わかってきました。


大村正樹

そうなんですか。具体的に何があったのかという部分ですが、実は、今ラボにかき出しヘラの電子顕微鏡写真があって、日立ハイテクの電子顕微鏡で拡大された、かんらん石やキセキ−輝く石と書いて輝石。あとシャチョウセキ−「社長」というわけではないですよ、斜めの長い石で斜長石。あと硫化鉄など、こういった物質が拡大された写真があります。人工物とアルミの粒子もけっこう混じっていて、ほとんど大きさが同じ。人工物か宇宙のものかの見分けも大変そうですね。


写真提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

そうですね。


大村正樹

どうやって見分けたんですか?

このラボを計画する時にイトカワから持ってきたものと地球上のもの、あるいは「はやぶさ」の部品の粒子かがはっきり区別できるように考えていました。


大村正樹

なるほど。

このアルミの粒子は入れ物の粉ですね。ですからイトカワではない、とはっきりわかったわけです。


大村正樹

じゃあ、入れ物の粉といいますが、僕らがお茶を飲んでる使い込まれたアルミのコップでも、電子顕微鏡で拡大すると粒子みたいなものがあるということですか?

ヘラでかいたら、きっと取れるかもしれませんね。


大村正樹

えぇ〜、そういう世界なんですね。

はい。


大村正樹

で、実際かんらん石や輝石や斜長石や硫化鉄が採取されたことによって何がわかるんですか?

これがまずイトカワから持ち帰ったものかどうかを決めないといけない。それはこの電子顕微鏡の中でエックス線を使って成分をはかることができまして、その成分をはかってみると地球上にない成分の多さ、かんらん石や輝石の中を調べてみると、地球上にはないことがはっきりわかりました。


大村正樹

かんらん石や輝石は地球にあるけれど、成分を分析したら地球上では考えられなかった。

考えられない成分であったと。それから「はやぶさ」はイトカワの周りをいっぱい回って上空から岩石の成分分析をしてるんですが、その結果と今回電子顕微鏡で比べた結果がまったく同じだということで、これはイトカワから持ち帰った岩石に違いないということがわかったわけです。


大村正樹

「はやぶさ」が上空を回りながらずーっと観察していて、タッチアンドゴーした時にひろってきた物と照らし合わせたら矛盾はなかったから、「これは小惑星のものだ!」とわかったということですね。

そうです。


大村正樹

素晴らしい! そして、それから何がわかってくるんですか?

それからわかるのは、太陽系が46億年前にできたといわれてますが、その誕生の時はいったいどうだったんだろう、ということがだんだんわかってくるのではないかといわれてます。


大村正樹

1ミリの1000分の1とかいうものを発見したことで、46億年も時代をさかのぼることができるんですか?

すべてわかるわけではありませんけれど、相当なところがわかるきっかけになるのではないかといわれてます。


大村正樹

これはたぶんアメリカやヨーロッパや中国など世界中で宇宙に対して関心を持っている国々からすると、日本は一歩リードしているということですか?

そうですね。月以外の惑星から岩石を持ち帰ったことは世界初ですから、すごいことです。


大村正樹

へぇ〜。なぜ46億年も時代がさかのぼれるんでしょうか?

太陽系ができた時にガスとチリで宇宙ができてたといわれてるんですが、太陽があって地球、金星とかだんだんまとまりながらできてきた。残っちゃった小さなものが小惑星といって、イトカワなどはそのひとつです。


大村正樹

固まりきらなかったチリがイトカワとか小惑星?

写真提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

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はい。それで大きくなった地球とか衛星の月も大きいために1回ドロドロにとけてできた時の成分から組成が変わっていることになりまして、太陽系ができた時のままの石は、イトカワのような小さなところにあるというふうに考えられてます。


大村正樹

いわゆる小惑星には、生まれたての46億年前の宇宙があるということですか?

そうです。


大村正樹

へぇ〜。もっともっと詳しく…。

今回持ち帰ったイトカワの微粒子はほんの少しですが、実は世界には隕石という、小惑星から落ちてきて全部融けきれないで地球上に残っている隕石という石があります。


大村正樹

はい。

一度表面はとけたけれど、中はとけていないものなどいろいろなものがありますが、そのおおもとの何も変化してないイトカワの微粒子がちょっとでもあると、もとの物と隕石が比べられるので日本はすごい太陽系の起源を探る研究ができる。


大村正樹

素晴らしい! もうこんな時間。大木さん、この放送枠もうちょっと大きくしてくださいよ。もっと語り合いましょうよ。

はい、ありがとうございます。


大村正樹

いやいや(笑)。向こうで怒ってらっしゃいますよ、日立ハイテクの方が「これぐらいにしておいて」と。ということで、年末年始二度にわたって貴重なお話をありがとうございました。日立ハイテクノロジーズの大木博さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

いや、ほんとだよね。日本という国は国土がちっちゃいから資源は乏しいけれど、こういうことを研究するエネルギーはほかの国に負けないよね。今年も日本の科学が世界に先駆けどんどんリードしてもらいたいなと心から思いました。日立ハイテク様、今年もよろしくお願いします。すごく偉い方だったと思うのですが、最後勝手に盛り上がっちゃったけれど、怒ってないかなぁ。今年も大村さん、頑張ります。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんな、3学期始まるね。バイバ〜イ!