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「SF考証」(1)
コーチャー/鹿野司(シカノツカサ)さん(科学ライター)

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回はちょっと変わったテーマを取り上げます。SF考証という言葉、考証は考えると証言の証、アカシという字だけど、資料を調べて研究するという意味です。キッズたちがふだん観てるSFのアニメとか映画、これは科学に詳しい人がアイデアを出して物語に深みを持たせる、味付けをしてくれてるということです。お知らせの後、SF考証のサイコーが登場しま〜す。


大村正樹

今週のサイコーは、科学ライターの鹿野司さんです。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

鹿野さんは、『サはサイエンスのサ』など科学に関する著書を出されてる科学ライターでもありながら、SF考証をされている方です。

SF考証といったり科学考証といったり、決まった言葉はないんですけれど。


大村正樹

これはわかりやすくいうと、SFを考えて、証言の証だから証言する人(?)ですか?

まぁそうです。SFをテーマにした物語はいろいろありますね。


大村正樹

ある、ある。

映画やアニメの中でもっともらしいウソをつくためにはどういうような話にしたらいいかとか、つじつまを合わせたりアイデアを出したりするわけです。


大村正樹

いわゆる観てる人に「これ、ありえねぇ」といわれないように話を作る人!

まぁそうもいえますけどねぇ(笑)。


大村正樹

ハハハ。よく突っ込んじゃいますよね、「これはないだろう!」とか。いわゆるSFドラマの中で、いかにも現実としてあるんじゃないのと思わせるプロということですか?

もともとありえない話をつくっているわけですから、それをどうやってあるんじゃないかと思わせるような持っていき方をしたい仕事ですよね。


大村正樹

怪獣の映画や宇宙をテーマにした映画とか、いっぱいありますよね。ああいうものも考証の方が付いているということですか?

付くものと付かないものがあるんですが、だいたい空想の物語は自由に発想をすれば何でもできるような気がすると思うんですけれど、意外と人間の想像力は単純で何の制約もないとけっこう同じような話になっちゃうんですよ。


大村正樹

はぁ〜。

そこをちょっと、何でもできるんじゃなくてこういうものを作ったらこういう制約があるよとか、ある意味合理的な条件を付けることによって逆に新しい発想が出てきたりとか、そういうようなことに関係する仕事ですかね。


大村正樹

ともすれば、ヒーロー物などマンネリ化しちゃうものも考証を入れることによってひねられた物ができるとか、パターンがいくつか生まれるとか。よっぽど想像力がたくましくないと成り立たない仕事ですね。

想像力というか、例えば映画やアニメを作る時にアニメしか観てない人がアニメを作ると、やっぱりだんだん縮んでいく。縮小再生産になっていって、おもしろさが限られちゃうと思うんですね。


大村正樹

ええ。

そうじゃなくて、全く別の分野の知識、僕の場合は科学ですが。例えば、昔の歴史ドラマを観て歴史ドラマを作っても、前のドラマを超えるものにはならない。だけれど、本当の歴史考証をちゃんと勉強していると、過去の作品になかった新しいものを盛り込めるじゃないですか。


大村正樹

はい。

ほかの世界から何か持ってくることによって、おもしろいものができると思うんですよね。そういうふうに考える監督さんたちが、僕みたいな人に「ちょっとやってくれませんか?」と頼んでくれるということだと思います。


大村正樹

鹿野さんは科学のプロということですね。

科学のプロというか、科学解説のプロですね。


大村正樹

映画やドラマの業界から「ちょっと考証を入れてください」といわれるということですね。

そういうことですね。


大村正樹

時代劇、『忠臣蔵』とかこれからのシーズン毎年のようにいろいろなパターンが生まれますよね。あと『座頭市』や戦国武将物とか、そういう時代劇も考証のプロがいらっしゃるということですか?

時代考証のプロは、かなりたくさんいらっしゃるんじゃないですか。


大村正樹

なるほど。

歴史考証・時代考証は、今年はNHKさんで坂本龍馬がはやりましたね。ああいうのも昔とは違う新機軸を入れてくるわけで、その当時の人たちがどういう言葉をしゃべっていたとか、どういう服を着ていたとかすべて考証が付いています。


大村正樹

へぇ〜。鹿野さんがSF考証をした映画は、どんなものがありますか?

映画だと『ガメラ2』をやらせていただきました。


大村正樹

カメの怪獣ですね。

まぁそうですね(笑)。実はガメラは、カメがいない世界の話なんですよ。


大村正樹

えっ、何で? あれはカメのオバケじゃないんですか?

僕たちの世界にはカメがいるんですけれど、ガメラの世界にはカメという生き物はいなくて、ガメラという怪獣がいるんです。


大村正樹

それが普通ということなんですね。

そうなんです。


大村正樹

ガメラの世界ではガメラは凶悪な怪獣ではなくて、いわゆる生物のひとりというイメージですか?

だから、「あれはカメのでかいのだ」とガメラの世界の人たちはいえないわけです。カメを見たことがないから。


大村正樹

なるほど、はい。

そういう物語なんですね(笑)。


大村正樹

ということは、全然違うファンタジーの国で僕ら人間は怪獣呼ばわりされるかもしれないという想像力につながってくるわけですね。

そういうこともありますよね。


大村正樹

へぇ〜。『ガメラ2』は何年前の映画ですか?

ちょっとよくわからない(笑)。


大村正樹

とりあえずDVDのレンタルショップに行ったらある?

そうですね。


大村正樹

『ガメラ2』はストーリーがどんなもので、鹿野さんが携わってどういうところに肉付けしていったんですか?

監督さんから依頼された時は、ガメラが宇宙から来た怪獣と戦うんですが、レギオンという名前で…。


大村正樹

レギオン。

レギオンは群れをなしてくるものという、聖書の中にある言葉から取っている名前ですが、群れで襲ってくる怪獣ということ、宇宙から来て植物のようなものも生えてきたりするんだと話していただいたので、「どういう怪獣かな?」と考える時に、1匹の怪獣が来たのではなくて、生態系、ひとつの生物の集団みたいなものが地球に侵入してきたんだと考えるとおもしろいんじゃないかと思ったんです。生態系が地球を乗っ取りに来たという。


大村正樹

はぁ〜。

ハチ
アリ

それでレギオンを一種のハチやアリ−社会性昆虫というんですが、ああいう生き物じゃないかと。それが巣を作って群れになって植物を生やして、その植物がある程度茂ってくると爆発を起こして、レギオンたちの種を宇宙に吹き飛ばして星から星へ移り歩いているような生き物なんだという設定をしたんですね。


大村正樹

すばらしい!(拍手)よかった、この映画観てなくて。観てたら先を追い越していいそうだったけど、今、何かえらい得した気分で。僕は今、お話を聞いたら、『銀河鉄道999』とか『宇宙戦艦ヤマト』が頭の中グでラングランしてるんですよ。ちょっともう時間。このあたり、また来週お話をうかがってよろしいですか?

はい。


大村正樹

何気なくSF物を観てたけど、矛盾がないようにとか、観ながら疑問に思わないようにちゃんとプロの人が考えているんだね。星が出る時間帯だから、空を見上げながら物語のひとつでも考えようかな〜。みんなもアイデアあったら、どんどん番組に教えてよ。 それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。11月ももう終わりだ。来週は師走。バイバイ!