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「新幹線のスピード(1)」
コーチャー/井上孝司(いのうえこうじ)さん(乗り物ライター)
大村正樹&井上孝司
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
さあ、夏休みがやってきました。みんなはもう、出かける計画は立てたかな? 夏休みは新幹線に乗る人も結構いるよね。今日のサイコーは新幹線に詳しい人。お知らせの後、登場です。
大村正樹
今週のサイコーは、ライターの井上孝司さんです。こんにちは。
  どうも、こんにちは。
大村正樹
夏休みにふさわしいサイコーですね。新幹線のことを語ってくださるということで、よろしくお願いします。
  よろしくお願いします。
大村正樹
井上さんは、新幹線マニア?
そう言っていいと思います。
大村正樹
新幹線が一番好きなんですか? 他の乗り物は?
  速いものが好きなので、鉄道の中では新幹線に興味があります。他に、自動車や飛行機、船、何でも好きです。
大村正樹
何でも!? 僕は小学校6年生まで、大きくなったら新幹線の運転手さんになるとと決めていたんです。
子どもの頃は、みんなそう言いますよね。新幹線の運転とか、飛行機の操縦とか。
大村正樹
でも、最近そういう子はいないですよね?
夢がなくて悲しいな…。
大村正樹
ですよね。井上さんは、子どもの頃の夢はなんですか?
やっぱり同じで、運転手になりたかったですね。今や本を書いて暮らしていますが(笑)。
大村正樹
新幹線の本を書いてらっしゃるんですか。
  はい。最近、『新幹線が一番わかる』という本を出しました。
大村正樹
では、日本のライターの中で最も新幹線に精通された方なんですね。
「最も」かどうかは分かりませんが。新幹線がどうやって走るかという仕組みに力を入れた本です。
大村正樹
少し難しい話ですね。
そうです。
大村正樹
まずは簡単なところから入りたいと思います。そもそも、何を新幹線と呼ぶのか、その定義はなんですか?
実は法律で決まっているんです。
大村正樹
えっ! 法律で?
はい。全国新幹線鉄道整備法という法律があるんです。
大村正樹
全国新幹線鉄道整備法。
はい。この法律の中で、主に時速200キロ以上で走る鉄道のことを新幹線と呼ぶという決まりがあるんですよ。
大村正樹
へぇ〜。現在、日本の新幹線で一番速いのが、時速300キロですよね? これは、世界一の速さですか?
ヨーロッパで時速320キロを出す乗り物が出てきています。
大村正樹
どの国ですか?
ドイツとフランスです。
大村正樹
フランスは有名ですね、3文字の名前で。
TGV(ティージーヴィ)。
大村正樹
ドイツは?
  ICE(アイシーイー)ですね。
大村正樹
ICEが時速320キロで走るんですか?
はい。
大村正樹
10年ぐらい前に山陽新幹線で時速300キロが出て、ニュースになりましたよね? あの時、世界一だったんじゃないですか?
  また奪い返されたんです。
大村正樹
そうなんですかぁ。そもそも東京と新大阪の新幹線が開通したのはいつでしたっけ?
  昭和39年です。
大村正樹
昭和39年当時は世界一の速さだったんですか?
時速210キロで、世界一速かった。
大村正樹
時速210キロだったんですか! へぇ〜、それで世界一ですか。その後、どこが世界一になったんですか?
  82年ぐらいにフランスのTGVが走り始めて、時速260キロが出ました。
大村正樹
一気に時速50キロオーバー!
その後、新幹線を時速220キロに上げたんですが、全然追いついてない。
大村正樹
40キロも足りない。
日本では92年に東海道新幹線「のぞみ」が走り出して、翌年に時速270キロになりました。
大村正樹
抜いたんですね!
ところが、その後フランスが時速270キロから300キロまで出したりして、日本はなかなか世界一に追いつけなかったんです。
大村正樹
へぇ〜。じゃあ、10年ぐらい前に出た500系というモデルが時速300キロを出した時は、一旦フランスに並んだということですか?
  奪い返しました。
大村正樹
だけど、フランスは今、時速320キロになっちゃったと。
はい。
大村正樹
日本の新幹線も、当然フランスやドイツを抜くことを考えているわけですよね?
頑張ってます。
大村正樹
時速何キロを目指しているんですか?
今、時速320キロを出す計画が進んでいます。
大村正樹
やっと追いつく感じですね。いつ頃達成できそうですか?
あと数年先になります。もう少しすると、東北新幹線が八戸から青森まで延びます。その1〜2年先に時速320キロを出す計画が進んでいて、現在ちょうど車両ができたところです。
大村正樹
東北新幹線で時速320キロという目標があるんですね。何で東北新幹線なんですか?
  線路が丈夫にできているのと、東海道に比べて真っ直ぐなんです。
大村正樹
へぇ〜。東海道新幹線はクネクネしている?
  比較の問題ですけどね。
大村正樹
なるほど。そうすると、時速320キロを出せるのは、日本では東北新幹線しかないということですか?
  そうなります。
大村正樹
山陽新幹線でも難しい?
そういう計画は全然ありません。時速300キロ止まりです。
大村正樹
もし時速320キロ出せたら、今の東京〜八戸間は何分ぐらい短縮されるんですか?
それが、意外と縮まらないんです。
大村正樹
そうなんですか。
  たぶん、5分か10分縮む程度になると思います。
大村正樹
それでも大きいと思いますよ。新幹線の速度を上げるためには、レールも車両も工夫しなくちゃいけませんよね? 最大の障害になっているものは何ですか?
騒音です。
大村正樹
えっ? 何でですか?
  速く走るために、馬力がいるのは分かりますよね。でも、これは技術が進歩したのでそれほど難しくなくなりました。ところがスピードが速くなると、車体の周りを流れる空気が起こす騒音が、すごく大きくなるんです。
大村正樹
沿線住民の騒音に配慮するために、速度の開発が遅れているということですか?
  遅れているというか、出したくても出せないんです。
大村正樹
では、本当は日本の技術力があれば世界一の速さにできるけれど、国土の事情でできないということですね。
  はい。
大村正樹
そうですか。残念ですね。
  新幹線に乗って窓から外を見ると分かりますが、結構近くまで家が並んでますよね。
大村正樹
確かに。
ものすごい騒音を出されたら、住んでる人はたまらないじゃないですか。
大村正樹
ええ。
だから日本には厳しい規制があって、ヨーロッパに比べると音が出せないんです。
大村正樹
へぇ〜、知らなかったぁ。もったいないですねぇ。
ヨーロッパなどは結構何もない田舎の中を電車が真っ直ぐ突っ走ってる。多少音が大きくても困らないですよね。こんなことを言うと、ヨーロッパの人が怒るかも知れないけれど(笑)。
大村正樹
そうなんですね。今、日本の新幹線はN700系が主流ですよね。僕はひとつ前の500系が一番カッコいいと思っていました。
あれは、カッコいいですね!
大村正樹
カラーもちょっとグレーが入っていてカッコいい。僕が子どもの時は0(ゼロ)系で、そこから100系になって、「のぞみ」型の300系ができて、次が500系。
はい。
大村正樹
「500系、何てカッコいいんだろう!」と思ったら、今は700系が主流じゃないですか。500系が天下を取っている時代は短かったですね。
  短かったです。
大村正樹
今、1日何本も「のぞみ」がある中で、500系は何本ぐらいですか?
  山陽新幹線では、まだ結構走っているんです。
大村正樹
へぇ〜。東京駅に乗り入れている500系が少ないのかな?
  少なくなりました。
大村正樹
珍しいですものねぇ。何で500系の時代は短かったんですか?
  500系だけ特別なところがたくさんあったんです。
大村正樹
だってカッコいいですもん!
例えば、先っぽのところが尖ってますから、一番前にドアがないんです。
大村正樹
じゃあ、1号車は1個しかドアがないんですか?
そうです。そうすると、駅での乗り降りに時間がかかっちゃう。
大村正樹
1号車と16号車は時間がかかると。
はい。特に1号車は自由席ですから。
大村正樹
なるほど。
それから、1両ごとに乗れる人の数が違うんですよ。
大村正樹
へぇ〜。
そうすると指定席を売る時とか、故障で車両を変えたりする際に、すごく具合が悪い。
大村正樹
それはJRの事情ですよね。それも重要なんですか?
東海道新幹線は電車の数が多いので、同じ状態に整備することが大事なんです。
大村正樹
なるほど。井上さん、もう時間が来てしまいました。夏休みなので、電車に乗る子も多いと思います。より興味深く乗ってもらうために、また来週来てください。
よろしくお願いします。
大村正樹
今日のサイコーは、ライターの井上孝司さんでした。
ありがとうございました。
大村正樹
本当は、日本の新幹線は世界と肩を並べるぐらいのスピードが出るんだけど、日本の事情があって出せないんだね。
もし新幹線に乗る機会があったら、周りの風景や家を見ながら、「騒音が出ちゃうからしょうがないんだ」と思ってね。勉強になったかな? 僕はすごく鉄道好きなんで、楽しかったです。
新幹線
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ヨーロッパなどは結構何もない田舎の中を電車が真っ直ぐ突っ走ってる
500系
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