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2009年01月14日

●2008年後半 7月1日~12月31日に聞いた噺~落語会編

前回に引き続き、放送作家・石井徹也さんが2008年下半期に聴いた落語の佳作ネタをレポートします。今回は「落語会編」です。さらに、08年下半期の落語ベスト10も発表!どうぞお楽しみ下さい。

文中、赤文字が特によかった高座、ナナメ文字がめずらしいネタです。
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■7月
5日 第13回ラジオデイズ寄席
佳作 三遊亭遊雀 堪忍袋:瀧川鯉昇 竃幽霊
7日 第19回浜松町かもめ亭
佳作 立川志の輔 バールのようなもの:立川生志 唐茄子屋政談

10日 月例三三独演
     佳作 柳家三三 真景累ケ淵~宗悦長屋~
11日 きゅりあん寄席
     佳作 柳家喬太郎 竹の水仙 立川談春 らくだ(上) 抜群!

13日 小満んの会
     佳作 柳家小満ん 於富與三郎木更津~赤間源左衛門
17日 大銀座落語会「三三の世界」
     佳作 宝井琴調 寛永三馬術~誉れの春駒
18日 喬太郎伝説
19日 第21回ビクター落語会春風亭正朝 中村仲蔵(雲助師匠型)
三三・菊志んの会
20日 大銀座落語会「大河落語・東の旅」
佳作 笑福亭松枝 三十石(伏見浜から枚方まで)
大銀座落語会「喬太郎と上方落語1」
21日 大銀座落語会「桂雀三郎の『らくだ』を聞く会
大銀座落語会「勧進帳~桂三枝 笑福亭鶴瓶二人会」
佳作 三遊亭金時 紙屑屋
22日 WAZAOGI ろっくおん
23日 桃太郎三番勝負2
     佳作 春風亭昇太 正子
24日 桃太郎三番勝負3
25日 三遊亭圓橘の会
27日 特撰落語会「柳家喬太郎・真夏の夜の怪談噺」
28日 第52回扇辰・喬太郎の会
佳作 柳家喬太郎 諜報員メアリー
29日 夏の正蔵3
佳作 林家正蔵 竃幽霊

■8月
5日 ぎやまん寄席番外編
佳作 柳亭市馬 佃祭&山号寺号
11日 圓朝座
佳作 三遊亭遊雀 怪談牡丹燈籠~栗橋宿お峰殺し
13日 盆の二人会
佳作 立川談春 元帳:柳亭市馬 南瓜屋
15日 遊雀葉月会
佳作 三遊亭遊雀 藪入り
18日 柳家喬太郎落語会「喬太郎アナザサイドVOL.2」
佳作 柳家喬太郎 鬼背参り(夢枕獏原作)
22日 都民劇場 柳家喬太郎独演会
28日 WAZAOGI ろっくおん 通好み
佳作 桃月庵白酒 鰻の幇間
29日 第20回浜松町かもめ亭
佳作 五街道雲助 もう半分
31日 池袋演芸場余一会昼「柳家喬太郎独演会」
佳作 鈴々舎わか馬 孫の顔(正式演題不明)

■9月
4日 月例三三独演長講特集
佳作 柳家三三 御神酒徳利(道中附けあり)
8日 一本柳道中双六
     佳作 三遊亭天どん 英語垂乳根
11日 WAZAOGI ろっくおん「落語生物図鑑」
12日 雀々・喬太郎二人会
佳作 桂雀々 一文笛
13日 第53回扇辰喬太郎の会
17日 オリンパスしんくる寄席
佳作 三遊亭白鳥 初天神
:林家きく麿 パンチラ倶楽部/撤去します(演題不明)
19日 三遊亭圓橘の会
20日 泰23回ビクター落語会昼
佳作 柳亭市馬 高砂や/佃祭:春風亭一朝 幇間腹
泰23回ビクター落語会夜
佳作 桃月庵白酒 松曳き
/山崎屋
21日 国立名人会
佳作 三遊亭金時 唖の釣:柳亭市馬 七段目
23日 第49回三三左龍の会
佳作 柳亭左龍 酢豆腐:柳家三三 牛の子
26日 iwato寄席 市馬の日
佳作 柳亭市馬 道灌~堪忍袋
27日 iwato寄席 吉朝一門会
佳作 桂佐ん吉 道具屋:桂よね吉 蛸芝居
28日 iwato寄席 志ん輔独演会
佳作 古今亭志ん輔 豊竹屋
第40回落語睦会
 佳作 瀧川鯉昇 日和違い
29日 立川流三人の会2
佳作 立川志の輔 岡野金右衛門(演題不知)
30日 第21回浜松町かもめ亭
佳作 古今亭菊六 粗忽長屋:桂文字助 阿武松
古今亭志ん輔:お見立て(爆笑)

■10月
3日 笑福亭鶴瓶落語会
    佳作 笑福亭鶴瓶 オールデイズ
4日 遊雀神無月会
8日 第22回浜松町かもめ亭
10日 市馬・喬太郎 ふたりのビックショー
佳作 柳家喬太郎 双蝶々:千代馬・千代衿 音曲漫才
11日 第13回らくだ亭 
佳作 桃月庵白酒 寝床(抜群):桂平治 お血脈
15日 柳家三三独演会・秋
佳作 柳家三三 豊志賀(但し「年枝の怪談」のアンコ部分)
19日 五代目桂米團治襲名披露公演
佳作 桂春團治 高尾(絶品。こんな佳い春團治師匠は始めて)
:桂米團治 蔵丁稚
25日 正蔵、正蔵を語る
     佳作 林家正蔵 巌流島
泰24回ビクター落語会夜
佳作 古今亭菊之丞 妾馬:橘家圓太郎 甲府ぃ
26日 さん喬・喬太郎親子会
佳作 さん喬・喬太郎 対談
27日 福笑・鯉昇二人会
佳作 笑福亭福笑 代書/釣道入門:瀧川鯉昇 二番煎じ/鰻屋
29日 SWA クリエイティヴツア-ブレンドストーリー
佳作 林家彦いち 掛け声指南:春風亭昇太 空に願いを
30日 落語版源氏物語
佳作 立川談春 柏木/厩火事

■11月
4日 昇太プロデュース「あの頃の噺」
5日 白鳥ジャパン大独演会 白鳥版『札所の霊験』大絵巻~談春兄貴を迎えて~
佳作 三遊亭白鳥 『普段の正拳』(上)/(下)
9日 圓朝座
佳作 鈴々舎馬桜 緑林門松竹~上総屋清三郎:三遊亭圓丈 大晦日文七元結
11日 第23回浜松町かもめ亭
佳作 春風亭百栄 桃太郎DV:三遊亭圓橘 雁風呂:三遊亭兼好 元犬
17日 鯉昇・喬太郎二人会 古典こもり
佳作 柳家喬太郎 禁酒番屋:瀧川鯉昇 宿屋の富
18日 鈴本特選会~市馬落語集
佳作 柳亭市馬 初天神/井戸の茶碗
19日 秋の正蔵3
佳作 林家たこ平 金明竹:林家正蔵 文七元結
22日 泰25回ビクター落語会夜
佳作 柳家さん喬 松竹梅:瀧川鯉昇 ねずみ
24日 第5回柳噺研究会
佳作 五街道雲助 高砂や
27日 第14回らくだ亭「さん喬たっぷり」

■12月
1日 林家正蔵独演会 ど-しても、この噺がしたかった。其の壱
8日 百栄落語プレイバックPART1
佳作 春風亭百栄 リアクシヨンの家元
10日 第24回浜松町かもめ亭
佳作 立川生志 二番煎じ:立川談春 夢金
13日 第15回らくだ亭小三治独演会柳家
佳作 柳家小三治 初天神
第11回特撰落語会 さん喬・雲助二人会その2~廓噺で同窓会
佳作 五街道雲助 町内の若い衆:柳家さん喬 徳ちゃん
15日 三三冬噺三夜第一夜
16日 三三冬噺三夜第二夜
     佳作 桂南光 義眼
17日 立川談春独演会
佳作 立川談春 文七元結
20日 ビクター落語会大感謝祭2008昼の部
佳作 柳亭市馬 松曳き:柳家喜多八 盃の殿様:柳家さん喬 芝浜
遊雀勉強会師走スペシャル
佳作 桂平治 御神酒徳利
21日 三三・菊志んの会
23日 第50回三三・左龍の会
25日 市馬落語集~師走スペシャル
佳作 柳亭市馬 黄金餅/のめる
27日 三人集 昼
佳作 柳亭市馬 三十石(恐れ入り奉る)

三人集 夜
佳作 柳亭市馬 掛取り:立川談春 棒鱈
28日 三三・吉弥の会 夜
佳作 桂吉弥 画割盗人
29日 iwato寄席 志ん輔の会
佳作 古今亭志ん輔 かつぎ屋/二番煎じ/芝浜(大満足)
;柳亭ち太郎 動物園
31日 浜松町かもめ亭大晦日スペシャル
     佳作 林家正蔵 芝浜

●2008年 7月1日~12月31日に聞いた高座ベスト10


■第一位 7月11日 きゅりあん寄席 立川談春師匠『らくだ(上)』
抜群に面白かった。ヤクザ者・斧名目の半次が酒に弱く、「泣き上戸」というキャラクター設定が新たな笑いを生み出した。「らくだがお前に酷い事したのはお前の事が好きだったんだよ!」のセリフには笑った笑った。立川談志家元系の「暗いらくだ」でなく、陽気な酒乱噺として絶妙。『らくだ』でこんなに楽しかったのは、先代金原亭馬生師匠・先代林家小染師匠以来。


■第二位 10月11日 第13回らくだ亭 桃月庵白酒師匠『寝床』 
 「店子が誰も旦那の義太夫を聞きに来ない」ことを、手代の茂蔵が言葉をシンコペーションさせ、旦那を誤魔化そうとする可笑しさは素晴らしく楽しかった。11月25日・上野鈴本演芸場夜席主任の『井戸の茶碗』や『徳ちゃん』等、大小の噺に工夫を凝らし、如何にも落語らしい人間的爆笑を生み出す手腕は中堅・若手真打中で傑出している。古今亭系で久しぶりに現れた大器。


■第三位 10月19日 五代目桂米團治襲名披露公演 桂春團治『高尾』
絶品というほかない。この30年で、こんな佳い春團治師匠を私は初めて聞いた。死んだ女房にもう一度、本当に会いたいから、主人公は反魂香を欲しがっている、その切なさが如実に分かる。それでいて、噺の展開は決して情に流れず、頓珍漢な行動に収支する。「情を語らず情を現わす」ことの典型を聞いた思いがした。78歳でこういう芸が出来るから落語は素晴らしい。


■第四位 7月7日 第19回浜松町かもめ亭 立川生志師匠『唐茄子屋政談』
 「唐茄子屋政談は、若旦那を通じて江戸の街の衆の人情を描く噺だ」という四代目小さん師匠の芸談を完璧に示した名演。登場する人物全てが落語国の人間の顔をしている。特に、田原町の街角で唐茄子を売ってくれる男の“ぶらない江戸っ子らしさ”には大感動した。主人公の若旦那が全く柄にないにも関わらず、終景、因業大家に薬缶を振り上げた形は「二枚目」だった。


■第五位 10月7日 上野鈴本演芸場夜席 桂南喬師匠『長短』 
気の短い方のキャラクター造形が独自。烈々たる、男性的な気の短さが実に魅力的である。気の長い友達相手に、怒るのでなく、焦れまくる様子・表情が無茶苦茶におかしく、どこか可愛らしい。一時の喉不調を脱して、9月15日新宿末廣亭夜席主任の『竃幽霊』など、男性的な面白さが復活している。真打昇進時に見せた『宿屋の仇討』の素晴らしさが復活する日を期待したい。


■第六位 12月29日 iwato寄席 古今亭志ん輔師匠『二番煎じ』
 誰が演っても地味になりやすい前半の夜廻りの件を、「寒い!」という事を徹底的に強調して面白く演じた。その様子が、一時のクサさからアクが抜けて楽しい。後半、晩小屋での酒宴の件も「寒い!」事を軸にして、暇な旦那同士の密やかな酒宴の楽しさがジンワリと伝わる。最後に登場する見回りの侍の人間味も愛しく、志ん朝師匠の『二番煎じ』を凌ぐ程の出来栄えだった。


■第七位 12月25日上野鈴本演芸場「市馬落語集」 柳亭市馬師匠『黄金餅』 
 談志家元譲りだそうだが、家元の『黄金餅』に付きまとう鬱陶しさがなく、志ん生師匠の『黄金餅』に近い陽性で、落語らしい楽しさに溢れていた。それでいて遺骸を頼んだ後、焼き場の壁に寄りかかって朝まで待つ金兵衛の姿に、差し掛かる朝日が見えた。今年後半は『三十石』『佃祭』『井戸の茶碗』『道灌』と絶品の高座が多く、正に中堅第一人者への道を歩んでいる印象。


■第八位 8月18日新宿末廣亭夜席 三遊亭遊雀師匠『堪忍袋』  
 クサイと言えば物凄くクサいけれど、東京では誰が演ってもダレていた前半を、徹底的に馬鹿馬鹿しい夫婦喧嘩に変え(前師匠譲りなのか?上方の演出を取り入れたものか?)大爆笑編に仕立てた。大根・梅干・銭湯といったキーワードで夫婦の秘めたる怨念が次々と露呈する可笑しさに、何処か「夫婦の気持ちの底」が見えてくる。くだくだしい中国故事をカットしたのも英断。


■第九位 10月30日博品館劇場「落語版源氏物語」 立川談春師匠『柏木』
 脚本も非常に優れていたが、一時間余、程よい緊迫感を維持して、柏木が三の宮に寄せる想いの熱さを語りきった。『於富與三郎』等だと表に出せない甘いロマンティシズムが現わされたのに感心。前半、柏木と夕霧の二人が三味線の師・検校の話をする件には、談志家元の芸を語る弟子の心情が色濃く投影されたよように見え、さらに興味を掻き立てられたのも忘れられない。


■第十位 12月20日 遊雀勉強会 桂平治師匠『御神酒徳利』 
 巧いという高座ではない。しかし、如何にもストーリーの変化が巧緻すぎて、演者の側に噺を引き付けにくい『御神酒徳利』を、ひたすら大きな声であくまでも明るく力一杯に演じきった。最初は「でかい声だなァ」と呆れていたのが、次第に大声、天性の芸容の大きさに引き込まれ、気持ちが陽気になったのには驚いた。落語協会や立川流には皆無の怪物的面白さというべきか。


●ベスト10次席4演目
■12月20日ビクター落語会2008大感謝祭昼 柳家さん喬師匠 『芝浜』
 序盤は普通の出来だったが、最後、女房が亭主を騙していた事を告白する件からオチまで、常に「夫婦の会話」になっている点、空前絶後の『芝浜』だった。最近、馬鹿に芝居臭い大ネタばかり演られていたのが嘘のようである。

■7月19日第21回ビクター落語会 春風亭正朝師匠『中村仲蔵』
 演出は雲助師匠型であるが、中村仲蔵が偶然そば屋で出会った旗本の江戸育ちらしさ、遊び人ぶりが水際立っていた。特に「悪」の要素にちょいと市川染五郎丈が感じられたのは偉い。寄席・落語会と貴重な中堅になっている。

■9月27日新宿末広亭夜席 桂米丸師匠『真打昇進の頃』(演題不明)
 興行が八代目春風亭柳橋襲名披露だったこともあるけれど、自らの真打昇進時代、師・先代古今亭今輔師匠の言葉を淡々と語って、単なる漫談ではない味わいがあった。「銭湯の話」など戦後庶民史・芸能史として楽しめる。

■11月5日白鳥ジャパン大独演会 三遊亭白鳥師匠『普段の正拳』(上)(下)
 『札所の霊験』を現代の話に改作。地方移住したヒロインが農業に目覚めて行く件に共感のある噺に仕上げた腕前は凄い。70年代のATG映画を視ているようだった。これまでの落語とは文法は違うが、あくまでも落語である。

以上 妄言多謝
石井徹也(放送作家)

投稿者 落語 : 2009年01月14日 00:24