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2006年10月12日

悲しい贅沢(担当☆石森則和)

耐震強度偽装事件で、建築基準法違反などの罪に問われた
元一級建築士、姉歯秀次被告の裁判の被告人質問が行われ、
姉歯被告は罪状認否以来、久々に法廷で発言しました。 
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(法廷画:BY石森)
丸刈りに白い格子柄のシャツ。
視線は空ろでヒトゴトのように語っている印象がありました。

先月6日の初公判で姉歯被告は起訴事実を大筋で認めています。
ところが、きょうは・・・
「調書をほぼ全面的に認める」といいながら
「あれは検察に言われたままに書いた、
私の言うとおりになんて書いてくれなかった」
・・・どっちなの?

「偽装は全部自分一人でやった単独犯行」と言いながら
メディアへのインタビューで最初に関係者の名前を言わなかったのは
まだ事実を明らかにできなかったから」・・・どっちなのよ?!

「区役所は偽装を見抜いてくれると思っていた。
建築確認が通っておどろいた」
「え?見抜いて欲しかったの?」
「だって本当は偽装なんてしたくないし」
あんた一人の意思でやったんでしょうが!意味わからん!

民事裁判で
今グランドステージ川崎大師の居住者から損害賠償を求められるも
「賠償義務はない」と主張していることについて理由を聞かれると、
「お金がないし」・・・・おい!

「生活費がなくて困っていたというがベンツとBMW、
70万円の時計を買っていたではないか?」といわれると
「ローンがあるから」

ぶっちいいいいいっ!

あらら、裁判長がキレた・・・「そんなの理由になりますか!」
2重ローンを背負わされた居住者が聞いたら
怒りでどうかなっちゃうのではないかと心配だよ、もう。

「偽装したマンション、震度5でも倒れなかったです」となんて
言っちゃってるし、ことの大きさが全くわかっていない!

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(姉歯被告の入廷を待つ取材陣)
さて、実は質問されたのは本人だけではありませんでした。
もうひとりは姉歯被告の23歳になる次男です。
父親の姉歯被告とは対象的に
スーツ姿で、緊張しつつも真摯な態度で臨みました。

姉歯被告がぼけーっと見守る中、
「逮捕されるまで姉歯被告が姿を消していたとき
どのように連絡をとったか?」
「父の姿を見て建築士になりたいと思ったことはあるか?」
「母親の自殺は事件と関係があると思うか?」というような
つらい質問まで丁寧に答えようとしていたのです。

そして。
もし、裁判が終わり父親が帰ってきたらどうするのか?と聞かれ
「兄と話したのですが、父と3人で暮らしていくと決めました」
「お父さんを見捨てないということですか?」
「はい」
そのときだけ、
無表情な姉歯被告が、しきりに唇をなめ回しました。

姉歯被告の家族は
この事件についてどんな思いだったのでしょうか?
姉歯被告は事件当初、
病気がちの妻がいることを動機に匂わせていましたが
実は高級外車や時計を買い、
後に自殺することになる妻が長期入院しているのに、   
愛人に月々15万円の金やネックレスを貢いでいました。
父親のほうを見ないまま、次男は母親の死について
「事件が直接の原因ではないと思います」と
搾り出すように語りました。

国交省により事件が明るみにでて
マスコミが家に押しかけるようになった姉歯被告は
まもなく家を出て、神田周辺のビジネスホテルを転々とします。
結局、逮捕まで家に帰らなかったのですが、
その間、次男は携帯で電話したり
時折、隠遁中のホテルで会ったりしたそうです。
ただ「家族に迷惑をかけて悪かった、と言われたことは
はっきりと記憶にない」ととまどっていました。
・・・・では、このとき妻はどこにいたのか?

入院していることが多かったようです。
姉歯被告は、入院中の妻とだけは
毎日、朝晩2回、
携帯電話で話したといいます。

裁判官にどんな話をしたのか?と聞かれ

「妻はいつも・・会いたいといいました」
と気の抜けた表情で答えました。

彼女は毎日、
会いたい、会いたいと繰り返したといいます。
会えないということ自体に
彼女は傷ついていったように見えたそうです。

支えてくれる身内の存在さえ
欲で見えなくなった姉歯被告は、どこか夢うつつで、
今でも心底責任を感じているのかはうかがい知れません。

裁判長は、たまらず尋ねます。
「あなたはなぜ建築士になったのですか?
ものをつくる人は、
例えば地震でほかの建物が崩れても
自分の建てたものだけは崩れなかった、ということを
誇りにするものなのではないのですか?」と。
そして裁判長が
「これからどんな心構えで生きていくのですか?」と聞くと

姉歯被告は
「これだけ騒がれたら就職もできないし・・」
「あなたの生活設計を聞いているのではないっ!」

この期におよんで自分の生活費の話か!
彼はバブル時の2000万円以上あった年収を維持したくて
この犯行に及んだのです。
だから、今やそんな暮らしを失ったことが
まず口をついてしまうのでしょうか。

でも、彼には、
それでも会いたいといってくれた人がいたのに。

どんなに世界を敵にまわしても
会いたいと言ってくれた人がいたのに。

どんなに贅沢をしようとも
大切な人を失わないでいられることこそが
最も難しく、

贅沢なことなのに。

投稿者 : 2006年10月12日 18:33