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2006年09月13日

実名報道  ☆ 宏枝

きのうのQRの朝ワイド番組「吉田たかよし プラス!」をお聞きになりましたか?
私は毎朝、この番組を聴きながら出勤前の慌しい時間を過ごすのですが、
きのうの7時台に登場した「週間朝日」の山口一臣編集長のお話には、
ずいぶんと考えさせられました。

山口さんは火曜日のレギュラーコメンテーターなのですが、きのうはニュースの
当事者として、山口県の徳山工業高等専門学校で起きた女子学生殺害事件の
容疑者少年の実名報道について、コメントされていました。

「週刊朝日」は9/22号で、自殺した少年の実名と写真を掲載、週刊誌では
「週刊新潮」(少年が自殺する前に実名と写真を公表)に次いでの公表となった
のですが、今回、容疑者少年の実名を報道した理由について、山口編集長は
「少年の自殺によって、匿名にする積極的な理由がなくなった」と説明しました。
一方で山口さんは「実名報道するなら、遺体が発見される前、生きている可能性
のあるタイミングでやらねばならなかったと反省しています。(再犯の可能性や
彼自身の自殺を防ぐという)社会的な利益は、朝日は新潮より小さかったかな」と、
とても率直な意見を示されていました。

今回の事件報道では、全国紙の新聞とテレビキー局は、読売新聞と日本テレビ、
テレビ朝日だけが実名と顔写真を公表しました。
ラジオ局は、日テレ、テレ朝系列局(すべてではありませんが)のみ公表していた
と思います。
そして、文化放送報道部は「実名報道はしない」という結論を出しました。
「少年法の理念の尊重」と「少年の自殺後に実名を公表することに積極的な理由が
見つからない」という理由からです。

少年法は少年の保護と更生のために、本人と推測できる記事や写真の掲載を
禁じていますが、死刑が確定した場合や逃亡中で再犯の恐れがある場合は例外とされます。
今回のケースは少年が自殺してしまったため、少年法の趣旨である「保護と更生」という
前提が崩れ、結果、実名報道に踏み切る社と匿名を維持する社とに対応が分かれたのです。

文化放送は後者を選択しました。
各メディアで結論が分かれたように、QR報道部内でも議論がおきました。「少年が死亡
したため、再犯や逃亡の恐れがなくなった」「再犯や逃亡の恐れはなくなったが、
保護と更生という少年法の目的も崩れた」「容疑者として手配はされていたが、
犯人と特定されているわけではない」「少年が死亡した以上、本人から事実を
聞きだすチャンスがなくなり、実名報道により、むしろ虚偽の事実が伝わる恐れ
がある」「少年の家族への報道被害も生じる」「被害者の女子学生は20歳、
容疑者少年は19歳。少年法の年齢規定を厳密に守る必要があるのか」等々。

実は私は最後まで「匿名報道を維持する」結論を出すことには抵抗感がありました。
その理由は、実名報道にふみきった各社と同様「少年の更生のチャンスがなくなった。
19歳という年齢。事件の凶悪性」などですが、もっと心の芯を捉えている理由は、
匿名のままでいけば、この事件は輪郭が見えないまま、事実解明のきっかけもなく
、消え去っていってしまうという無念さです。

事件は、ほとんどの人にとっては遠い世界の出来事。
でもそれは、現実の社会で実際に起こっている出来事なのです。
ヒトゴトではなく、身近に起こりうる可能性を実感し、何故そんなことが起きるのか、
どうしたら起きないようになるのかを考えるためにも、伝える相手になるべく具体的に
事件の内容を伝えるべきだと思います。
事件報道の中で、被害者のプライバシー保護の動きが進む一方、被害者遺族自らが
マスコミを通して、思いを伝える場面も増えています。
それは静かに傷を癒したいという気持ちよりも尚、事実の解明や犯罪者への正当な
処罰を望む気持ちが強いからでしょう。
その意味で今回の、数社による実名と顔写真公開の意味は大きく、「匿名による
少年の保護」と「実名報道による社会的利益」とを較べると、やや後者の方に重みを
感じるのです。

とはいえ、冒頭の山口編集長の言葉同様、私も「実名報道するなら遺体発見の前で
あるべき」で、その時点で、今回の少年報道のあり方について、深く考えることを
しなかった自分への大きな反省材料となり、“ラジオなら”どんな伝え方が相応しい
のかを考えるきっかけともなりました。

投稿者 : 2006年09月13日 23:31