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2017年07月17日

第157回直木賞直前予想 受賞作は(たぶん)これ!


各候補作をみてまいりましたが、そろそろ最終予想とまいりましょう。

ごく常識的に考えれば、
今回は佐藤正午さんの『月の満ち欠け』(岩波書店)がとるのではないかと思うわけです。

北村薫さんや佐々木譲さんのように、
過去にも「なぜいまごろ?」というタイミングでベテラン作家がエントリーしたことがあって、
いずれも受賞しているという実績もあることですし。

功労賞というのか、「これまでお疲れさまでした」という意味合いもあるのかもしれません。
そう考えると、今回も佐藤正午さんで決まりかなという気がします。

ですが、ここはあえて「ちょっと待った!!」と言いたい。

果たしてそれでいいのか。
直木賞がこれまでのキャリアをねぎらうような賞であってもいいのでしょうか。

本が驚くほど売れない時代です。
であるからこそ直木賞は、ふだん本を読まないような人が手にとって
「なにこれ、めっちゃ面白い!」と夢中になるような作品が受賞して欲しい。

もちろん佐藤さんの『月の満ち欠け』は面白い一冊です。
ただ、先日も書きましたが、最初の瑠璃の恋愛の描かれ方にやや物足りなさを感じるんですよね。

小説初心者が読んだとしても、無条件に面白いと思える作品は、
ぼくは『月の満ち欠け』『よりも、
宮内悠介さんの『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA)だと思います。

この作品に横溢する生き生きとした想像力は、
読む者に「小説ってなんて自由なんだろう」ということを教えてくれるはず。

手に汗握るストーリーの裏には、
移民や宗教対立などシビアな問題も隠れていますが、
そういう深刻なテーマを、面白い物語に見事に溶け込ませた手腕は見事というほかありません。

宮内さんは直木賞だけでなく、芥川賞でも候補になったことがありますが、
それだけの才能と技術の持ち主なのです。

というわけで、第157回直木賞受賞作は、
「こういう作品がとるべき」という主張も込めて、
宮内悠介さんの『あとは野となれ大和撫子』を推します。

最後に芥川賞にもひと言。

今回は今村夏子さんの『星の子』(朝日新聞出版)で決まりではないでしょうか。

宮内さんと同じように、今村さんも高く、遠くへとボールを飛ばせる想像力をお持ちの方です。

さて、どうなるでしょうか。

選考委員会は、7月19日(水)の午後5時から開かれます。

投稿者 yomehon : 2017年07月17日 00:00